【作品紹介】

蒸し暑い晩、私はD坂にある喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいた。

することもなく真向いの古本屋を眺めていたが、

いつもはいる美しい奥さんが店番をしていないのが、気になった。

 

しばらくすると、この喫茶店で知り合った明智小五郎という男がやってきて、私の隣の席に座った。

しばらく犯罪や探偵のことを話したりしていたが、互いに古本屋に店番がいないことを気にしていて、

とうとう二人で見に行くとになった。

私は内心、犯罪事件が起きていれば面白いなどと、不謹慎な気持をもっていた。

 

店に行き、声をかけたが出てこない。

仕方がないので二人して上がり込み電気をつけると、私たちは同時に「アッ」と声をあげる。

部屋の片隅に、女の〇体が横たわっていたからだ。

 

明智が警察にしらせに行き、すぐに警官がやってきて捜査が始まった。

私たちは第一発見者だということでその場に残され、捜査や証言の一部始終を見たり聞いたりした。

しかし、その日は何の成果も無く、私たちは帰された。

 

あれから十日の月日がたったが、私は独自に事件を調べ、ある結論に至った。

すべての物的証拠や証言が、ある一人の人物が犯人であることを示していた。

私は確信を持って言える、犯人は明智小五郎だと。

【感想】

これは大正14年に発表され、後の名探偵となる明智小五郎の初登場の作品です。

語り手の私は、指紋や目撃証言、状況証拠など物質的側面から推理するのに対して、

明智小五郎は心理的側面から推理し、その結果、二人ともまったく違う結論に至ります。

探偵役の明智小五郎が犯人と指摘されるのが、面白いところです。