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エン・ラマ・シェリーと消費期限
 
先日ご来店いただいたプロの方に聞かれたのが
『エン・ラマ・シェリー』
についてでした。
 
いわゆる無濾過シェリーと言われるものです。
 
その感想の中に
「無濾過というので、もっとフレッシュな感じかと思いましたが、
注いでみると少し色が出ていて状態が悪かったんでしょうか?」
というものがありました。
 
もちろんカウンターでお話させていただきましたが、
ブログでも少し解説することにしましょう。
 
まず、無濾過ですが、
「無濾過が最高で、濾過が劣る…」
そういった考えは間違いですね。
 
無濾過が最高なら全て無濾過にしたらいいと思いますw
 
では、何が違うのか?
 
それは味わいや深み、全体のボディ感でしょう。
 
では無濾過はいいことづくめか?
 
そうとも言えません。
 
それが、「思ったほどフレッシュ感がない」
という趣旨の感想になったのだと思います。
 
ではフレッシュ感とは何か?
 
フレッシュには実は色々な意味がありますが、
今回は脱線はなし、で書きますと、
シェリーで感じるフレッシュ感は実は濾過されたものの方が感じます。
 
もちろんフレッシュの意味の定義によっては
変わるかもしれませんが、いわゆるワインのフレッシュ感とは
酸化されておらず、状態が良く、
キレや適度な芳香を感じるものと言えるでしょう。
 
この違いをイメージで例えるなら
通常の濾過商品が透明感がある黄金色のリンゴ・ジュースなら
無濾過商品は果肉が入った乳白色のリンゴ・ジュースのようなもの
と考えてみるといいのかもしれません。
 
つまりどちらがいい、という趣旨の問題ではないということです。
 
他に喩えるなら
濾過商品はダシの効いたお吸い物で
無濾過商品は味噌汁みたいなものという感じでしょうか。
 
さて、イメージの喩えはさておき、
エン・ラマの良さとは何なのでしょうか?
 
先ほど上げた深みなどの要因の他、
実はよりシェリーらしく感じさせるものをあまり感じさせずに
スティル・ワインの方々に受け入れられるような味わい
になっているということがあります。
 
これは20年以上シェリーを飲んできた私見も入りますが、
エン・ラマはある意味往年のシェリー・ファンには受けず
スティル・ワイン・ファンに受け入れられる味わいになっていると思います。
 
それは、シェリーというワインが、
スティル・ワイン・ファンに大きく受け入れられるきっかけとも言えるので、
著名ワイン評論家に
 

「モンラッシェの価格で素晴らしいフィノを5回も楽しめるのだ。」

ヒュー・ジョンソン (1939-)

 
と言わしめたことは、
シェリー業界としては高く歓迎されるべきものなのです。
 
では、濾過、無濾過だけで
商品の味わいの差が大きく出るのでしょうか?
 
これには蔵によって差があるので一概には言えませんが、
例えばティオ・ペペのエン・ラマなどの場合、
確かにティオ・ペペを名乗るソレラ(群)の中から瓶詰されますが、
その中からさらに樽単位でエン・ラマ用が選ばれています。
 
ですから、銘柄が同じとは言っても、
濾過、無濾過だけの違いではないとも思ってください。
 
さて次に色に関してですが、
エン・ラマは当然、濾過された際に感じなくなる成分を多く含むので、
当然、通常販売される濾過商品とは色が異なり、
その多くが若干麦わら色がかった色をしています。
 
さて、次にシェリーを扱いなれていない方々の不安は、
それが、そういうものなのか、状態が悪いものなのかの判断でしょう。
 
これに関しては、入手経路や保管環境によってまちまちなので、
色や言語化しづらい感想だけでは僕とて判断がしかねます。
 
ただし、メーカーが言っている三ヶ月以内に消費してほしい
という文言の真意がどこにあるか?
はちょっと考えてみて欲しいですね。
 
この文言で誤解しないでいただきたいのは、
三ヶ月以上経ったらダメなのではなく、
それ以降は少しづつ見た目にも分かるよう変化し始めるので、
それを踏まえて扱ってほしいということが真意なのです。
 
別の角度から結論を言いますと、
エン・ラマは瓶熟が可能ですが、
通常商品は瓶熟はあまりないということなのです。
 
これはスティル・ワインを扱いなれた方々なら、
ご自身の経験と官能で日付などに惑わされず、
判断できることかと思いますが、
 
スティル・ワインもシェリーも扱い慣れていない方々には、
もしかしたら、慣れが必要なのかもしれません。
 
因みに僕自身は、あえて過去のエン・ラマを数本キープしており、
その熟成を待って飲むのを楽しみにしております。
 
この辺は日本酒の古酒の領域にヒントが沢山あると思います。
 
さて、まだまだ書き足りない部分はありますが、
長くても消化しきれませんので、
また澱をみて書きたいと思います。
 
ではでは、皆さま
美味しいシェリー・ライフを!!