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2009年5月1日
あるNEWSが騒がせた。
【キャロル・アン・ダフィー】
Carol Ann Duffy(1955-)
が、
英国王室の桂冠詩人*になったのだ。
*桂冠(けいかん)詩人。Poet Laureate of the United Kingdom
政府公認の詩人称号で、ローマ時代の詩人コンテストで
月桂冠をかぶったことに由来する。
このNEWSで話題になったのは、
彼女が初の桂冠詩人だということだけでなく、
初の同性愛者で、
初のスコットランド人だったことだった。
ただ恥ずかしながら、
現時点で彼女の詩を読んだことにない私には、
これ以上、彼女のことを書く資格はないw
では何が私にとってNEWSであったのか?
それは任命の副賞が
「年金とシェリー」
だったからなのだ!
因みに年金は£5750x10年だそうだが、
それはおいておいて…
そのシェリーだが…
その数、何と720本!
実は英国という国は、これまでも
桂冠詩人に限らず、何かの報奨・副賞として
シェリーを授与してきた。
細かくはまたの機会にするが…
何故720本なにかと言うと…
実はその数というのが、
伝統的に1樽分のシェリーが
目安だったからなのだ。
因みに、この記事の経緯で気付いた
ちょっとマニアックな話をしたいと思う。
実はこの報道、
多くの報道が当初授与は600本のオロロソとしていた。
ところが後の報道で720本に改められたのだ。
それは何故か?
実際そうなのかは、確認はしていないので、
あくまでも中瀬仮説として読んでいただきたいが、
恐らくこれは伝統的に授与されてきたのが
オロロソだったからであろうと思われるのだ。
実は伝統的に評価の高いオロロソと言えばヘレスのもので、
それに使われる樽は通常500Lを用いる。
とすると600本x750mlだと450Lになるので、
丁度1樽分になるのだ・・・
因みに補足しておくと500Lの樽でも
シェリーの場合は熟成上の理由で500L分目一杯は入れず、
樽のMax量の約90%がその実際の量となる。
ところが、いざ彼女がそれをリアルに受け取る際、
彼女がオーダーしたのは
「フィノ Fino」と
「マンサニージャ Manzanilla」だったのだ。
それが、どうなのか?
実は彼女がオーダーしたタイプは、
長いシェリーの歴史の中ではモダンなタイプで、
しかもその熟成に用いるのは600L*の樽を用いる。
*全てではないが…
とすると、1樽分という意味の解釈に
伝統的かモダンかで、その量に差が生まれるだ。
そうなると、600Lの90%は540L。
540L÷720ml=720本となるのだ。
彼女は今後10年シェリーの授与を受ける権利があり、
インターヴューで彼女は
毎回、違うシェリーを詰めて欲しいというものだったので、
今後、アモンティリャードやオロロソを詰めて欲しいとなったら、
また計算は変化していくのだが…
さて、今後どうなるのか?
まぁケチ臭いことは言わず、
720本分あげればイイと思うのだが・・・
**********
<追記>
2011年11月、彼女はヘレスを訪れ、
これを記念してC.R.D.O.Jerez認定の
キャロル・アン・ダフィーによる
桂冠詩人チョイスの
"Laureate's Choice Manzanilla"
"Laureate's Choice Fino"
が瓶詰めされた。
また彼女はそれを記念して詩を書いた。
以下は、本文と、私なりの翻訳。
Who wouldn't feel favoured,
at the end of a week's labour,
To receive as part-wages a pale wine
that puts the mouth in mind of the sea…
and not gladly be kissed
by gentle William Shakespeare's lips,
the dark, raisiny taste of his song;
bequeathed to his thousand daughters and sons,
the stolen wines of the Spanish sun…
or walk the cool bodegas' aisles
where flor and oxygen grow talented
in fragrances and flavours-
to sniff, sip, spit, swallow, savour…
疲れた週末に選ばない人がいるだろうか、
その澄んだワインを報酬として
心の海の入口に運ぶことを
ただ紳士的なシェイクスピアの唇に
容易にキスされてもいけない
それは謎めいて、
彼の歌を思わせる干し葡萄のような味わいがする
スペインの太陽から盗まれたそのワインは、
彼の千もの娘と息子に与えられ続けてきたのだ
香りと味わい、
そして優秀なフロール(酵母)と酸素に満ちた
ヒンヤリとした蔵の中を歩くといい
それをよく嗅いで、啜って、
余計なものを吐き出してから飲んで味わうんだ
参考:Solera News
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