$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-alcohol

以前からあるものではありますが、
アクセス検索のキーワードに最近特に多いのが
【シェリー 度数】

シェリーを初めて飲む方が増えたせいでしょうか?
シェリーが飲みやすいと思ったら結構酔いを感じるからでしょうか?


シェリーを供していると必ず聞かれるのがその度数です。
でも、度数で何かを説明しようとしている貴方!
それは、何をどう根拠にですか??

多くの方々が
お酒の強い弱いの指標にすぐアルコール度数を用いますが、
この方法は必ずしも正しいとは言えません。


もちろん度数というのは、アルコールの含有量でもあるので、
当然多ければ、その酸化・分解にエネルギーや時間を要するのは
言うまでもないですが、

アルコール度数以外の他の部分に、
その大きな違いがあるのをご存知ですか?


身体に大きな影響を与えるファクターには
3つの大きな要素があります。

***

1:醸造酒か、蒸留酒か、ということ。
2:炭酸を含んでいるか、いないかということ。
3:熟成しているか、していないかということです。


特に1は大きな違いと言えるでしょう。

醸造酒とは、糖を含む材料(液体)を酵母によって発酵して得られるもので、
ビール、ワイン、日本酒などがこれにあたります。

それに対し蒸留酒とは、醸造酒を一度気化させて再冷却して得た液体です。
これにはウイスキー、ブランデー、焼酎などがこれにあたります。

難しい話はさておき、
醸造酒というのは、位置的には我々の食べ物に近く、
胃の中で消化・酸化・分解が必要な液体になりますから、
極端に言えば、胃に負担をかけます。

但し、例えば、
肉にも生で食べる場合と焼いて食べる場合があるように、
米なら硬く炊いた時と、おかゆで違うように、

いずれも後者に近い状態の方が
胃の負担度は低いということになります。
醸造酒も同じです。

それに対し、蒸留酒というものは、
醸造酒を一種火にかけて加工した加工品なので、
結果的度数は高くなるものの、
蒸留酒が強いる胃の中ですべき負担度は
格段に低くなります。

なので、
醸造酒と蒸留酒の違いを
度数の強弱を抜きに話せば、
実は蒸留酒の方が身体に優しいのです。


***

2,3に関してはまたいずれ触れるとして、
本題の「シェリーの度数」ですが、

シェリーの最低度数は【15%】です。

15%以下は法律で存在しないのと、
強化ワインという日持ち系ワインはこの度数以下では
劣化が早くなるので、それ以下にすることは基本ありません。

因みにシェリーの最高度数は【22%】です。
実際は流通品で24%のものもありますが…

上限の話しはさておき、
15%以上ないし、別の理由で18%以上に強化することで、
長期に飲料可能な白ワインにしたのがシェリーです。

***

で、詳しくは書きませんが、
シェリーが他のお酒より酔うように感じるのは、
シェリーは、ある意味スポーツドリンクの様に、
体内への吸収が他のワインより早い為に、
短時間で強い酔いを感じることがあります。

これはフィノ系に関しては酸化すべきものが少ないため、
オロロソ系に関しては酸化すべきものが既に酸化しているため、
結果的に胃の中で行うべき作業が少ないので、
結果吸収が早くなるのです。

これは結果的に胃/身体の負担度が低い
ということの現れですから、
その酔った状態が長く続き、
朝まで残るということにはなりません。

(もちろん、何の酒でも過ぎたれば及ばざるごとしですが)

***

つまりシェリーは
生米ではなくお粥状態なのであり、
ユッケではなくハンバーグ状態なのです。


シェリーの度数がビールやワインより強いから
酔いを強く感じるのではないのです。

つまり度数が問題なのではなく、
お酒の状態や質に
大きな差が存在しているのです。


その証拠に、
シェリーで悪酔いや二日酔いは滅多に聞かない話しですし、
なにより歴史的には500年近く愛飲されてきたものですし、
医薬品の材料として用いられてきた歴史もありますから、
むしろ身体に優しいと言えるのです。

***

度数はある種のバロメーターになることは否定しませんが、
それで全てを語ろうとする試みには疑問を感じて下さい。

きっと自分にあったお酒、自分に合わないお酒があるのには、
度数だけでは説明がつかない別の理由があるということにも
興味を示して欲しいですね。