先日、ワイン学校に通っているという友人が、
オジャリア銀座店に来た際に、
ソレラの質問をされました。
友人:ソレラ・システムって…よく解らない…
あの図だと、
注ぎ足しの量の計算が合わない気がする…
私:あぁそれね…w
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まぁこの質問、問題は昔っからあるもので、
拙著にて図入り解説してから
以前よりは減った定番的な質問ではあるんですが、
如何せん、未だに何処のシェリーの解説書や解説Webでも、
いえ、公式と呼ばれる内外の案内でさえ、
上記に挙げたようなピラミッド型、山型の図を使うもんですから、
解り易く画いたつもりが、余計な誤解を生んでいるという、
誠に厄介な図なんです。
一瞬でも真面目にこの図を見た方は、
その量の計算が合わないのは一目瞭然です。
それに気付いた貴方!
正解です!貴方は正しい!!
つまり結論から言うならば、
もしこのピラミッド型、山型の図を用いるならば、
逆さにして使うべき図なんです。
例えば、こんな風に…
ただ、ソレラの本質は、
樽を山型に積むことにはなくて、
注いだら足す
というのを半永久的に行うことなので…
極論、樽の位置は最重要な要素ではない
ということです。
上から下にというのは、
決して間違っていませんが、
これは教科書的基礎説明に過ぎず、
実際、現場をみると例外だらけなのに気付くはずです。
因みに、これは現段階では僕の仮説に過ぎませんが、
ソレラ的方法論は紀元前から存在したものの、
キリスト教社会では一度、衰退・消滅し、
18世紀頃にシェリーの発達を気に再び脚光をあびた方法…
のようです。
その後、スペイン領のラム酒を中心に
ソレラ・システムは広く用いられるようになります。
ただ、樽を立てて置くこともあるラムのソレラなどは、
当然ながら上記の図の様に積むことはありません。
もちろん、リフト(機械)が使えるようになってからは
鉄骨で骨組みされた状態で上に積まれることはありますが…
例えば、グァテマラのラム
「ロン・ボトラン」のソレラ
は、以下の図のような感じになっています。
蒸留液をバーボン樽等の樽で寝かせたものを
別の樽で馴染ませてから、
次にリチャー(樽内を焦がした)バーボン樽等で寝かせ、
さらに別の樽で馴染ませてから、
シェリーやポートの空樽で熟成させ、
最終的にブレンドされたものが瓶詰めされる…
と、そんな感じ。
別に上から下でも、山型でもないですよネ。
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他にも数年前に話題になって久しい
「グレンフィディック」のソレラ・ヴァージョン
は、以下の図のようになっています。
これは図の様に、
それぞれ
アメリカン・オーク*
スパニッシュ・オーク**
アメリカン・オーク(新樽)
で熟成した物を
さらに大樽で馴染ませ熟成させてから
瓶詰めされるというものです。
*この場合は概してバーボン樽の謂で樽材ではない。
**この場合が概してシェリー樽の謂で樽材ではない。
この両者の例でもお分かりのように、
ソレラ・システムとは言っても、
山型に積む必要は全くないのがお解り頂けるでしょう。
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蛇足ではありますが、
長期熟成タイプのバルサミコ酢も
同じソレラ的熟成を経ます。
また、日本の鰻や焼鶏のタレ、クサヤの付け汁、
それに今は半ば消滅した万年酢も
考え的には同じと言えるでしょう。
まぁそんな訳で、
図は一例として見て下さい。
話や説明を解り易くするのに「喩え」があるように、
「図」も解り易くするためのツールの一つに過ぎませんからw