$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-solera

先日、ワイン学校に通っているという友人が、
オジャリア銀座店に来た際に、
ソレラの質問をされました。

友人:ソレラ・システムって…よく解らない…
あの図だと、
注ぎ足しの量の計算が合わない気がする…

私:あぁそれね…w


***

まぁこの質問、問題は昔っからあるもので、
拙著にて図入り解説してから
以前よりは減った定番的な質問ではあるんですが、

如何せん、未だに何処のシェリーの解説書や解説Webでも、
いえ、公式と呼ばれる内外の案内でさえ、
上記に挙げたようなピラミッド型、山型の図を使うもんですから、
解り易く画いたつもりが、余計な誤解を生んでいるという、
誠に厄介な図なんです。

一瞬でも真面目にこの図を見た方は、
その量の計算が合わないのは一目瞭然です。

それに気付いた貴方!
正解です!貴方は正しい!!

つまり結論から言うならば、
もしこのピラミッド型、山型の図を用いるならば、
逆さにして使うべき図なんです。

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例えば、こんな風に…

ただ、ソレラの本質は、
樽を山型に積むことにはなくて、
注いだら足す
というのを半永久的に行うことなので…

極論、樽の位置は最重要な要素ではない
ということです。


上から下にというのは、
決して間違っていませんが、
これは教科書的基礎説明に過ぎず、
実際、現場をみると例外だらけなのに気付くはずです。

因みに、これは現段階では僕の仮説に過ぎませんが、
ソレラ的方法論は紀元前から存在したものの、
キリスト教社会では一度、衰退・消滅し、
18世紀頃にシェリーの発達を気に再び脚光をあびた方法…
のようです。

その後、スペイン領のラム酒を中心に
ソレラ・システムは広く用いられるようになります。

ただ、樽を立てて置くこともあるラムのソレラなどは、
当然ながら上記の図の様に積むことはありません。
もちろん、リフト(機械)が使えるようになってからは
鉄骨で骨組みされた状態で上に積まれることはありますが…

例えば、グァテマラのラム
「ロン・ボトラン」のソレラ
は、以下の図のような感じになっています。

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蒸留液をバーボン樽等の樽で寝かせたものを
別の樽で馴染ませてから、
次にリチャー(樽内を焦がした)バーボン樽等で寝かせ、
さらに別の樽で馴染ませてから、
シェリーやポートの空樽で熟成させ、
最終的にブレンドされたものが瓶詰めされる…

と、そんな感じ。
別に上から下でも、山型でもないですよネ。

***

他にも数年前に話題になって久しい
「グレンフィディック」のソレラ・ヴァージョン
は、以下の図のようになっています。

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これは図の様に、
それぞれ
アメリカン・オーク*
スパニッシュ・オーク**
アメリカン・オーク(新樽)
で熟成した物を
さらに大樽で馴染ませ熟成させてから
瓶詰めされるというものです。

*この場合は概してバーボン樽の謂で樽材ではない。
**この場合が概してシェリー樽の謂で樽材ではない。


この両者の例でもお分かりのように、
ソレラ・システムとは言っても、
山型に積む必要は全くないのがお解り頂けるでしょう。

***

蛇足ではありますが、
長期熟成タイプのバルサミコ酢も
同じソレラ的熟成を経ます。

また、日本の鰻や焼鶏のタレ、クサヤの付け汁、
それに今は半ば消滅した万年酢も
考え的には同じと言えるでしょう。

まぁそんな訳で、
図は一例として見て下さい。

話や説明を解り易くするのに「喩え」があるように、
「図」も解り易くするためのツールの一つに過ぎませんからw