Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(図録表紙)

土曜の雨と暴風からうって変わり、
澄んだ空気と晴れた天気の中、

六本木のサントリー美術館に
【南蛮美術の光と影:泰西王侯騎馬図屏風の謎】展
に行ってきました。

2011/10/26-2011/12/4 : 10:00-18:00 火曜定休

対象となったのは、図録の年表によれば、
1541年ザビエルがリスボンを出港した年から、
鎖国を経た1643年頃まで。

前半に現れたのは見事な屏風!

どこか文明堂のお店の壁で見慣れた気もしますが、
やはり本物は圧巻!

Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(Photo by Web:Suntory)

この一二年で着物を着るようになった自分としては
この時代の着物も気になります。

もちろん、オランダ商人や
プロテスタントと思われる聖職者のマントなどもね。

そういえば、コインブラ大学で買ってきてもらった
マントは部屋の飾りと化して、なかなか出番がないですね…
でも次回マドリに行ったらセセーニャのマントも欲しいな…

ただ、今年みたいな暖かい冬を経験すると、
マントの必要性も考え直すと共に、
屏風内の季節感も気になったり・・・

屏風内に描かれたものとしては、船も気になりましたね…
大砲が多いものの少しのものと、まったく無さそうなもの…
商船とはいえ、全く無いのもまた無いとも思うのですが…
ま、忠実再現されているとは限りませんしね。

と、寄港地からの乗船なんでしょうか、
黒人やアジア人らしく船員も多く乗っており、
牢屋的な部屋まで描かれていたのには驚きました(笑


Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(Photo by Web:地球の歩き方)

他に気になったのは、
独立したてのオランダではユダヤ人を多く受け入れていましたが、
果たしてユダヤ人が来航していたのか?
また含まれていたとしたら、
この様な絵の中でユダヤ人は見て見分けがつくのか?
などと、またまた余計なことを考えてしまいました。。。

個人的には船関連の屏風内に
一つも樽らしきものが無かったのが残念でしたが…


<><><><><>

中盤からはほぼイエズス会関連展示でした。
(私作成の南蛮布教史も参考にどうぞ)

Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(Photo by Web:地球の歩き方)

ここで興味深かったのは
イエズス会の影響で聖画を書くような日本人画家の登場でした。
習った…模写…とはいえ、素晴らしいものが多くあったんですね。

と、以前もブログに貼っておきましたが、
日本の蒔絵のそれはそれは素晴らしいこと!

ただ、どうも気になったのはこれ、

$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(図録より)

スペインで造られ、踏み絵にも用いられたキリスト荊冠像なんですが、
手に持っている笏が、どう見ても砂糖黍なんですね…
ま、勝手な解釈ですが砂糖黍はスペイン語の「カーニャ」、英語の「ケイン」と、
その原型は「カノン」、つまり「模範や基準」になるので、
その意味においてイエスが持っていたのか?
特別な意味はないにせよ、様々な意味で気になります…

次に見た万国絵図屏風も面白かったですね。
この時代の各主要港が網羅され、
個人的にはその中にセビージャが入っていたのが印象的でした(笑


・・・と、そういえば、
この時代に地球儀って日本では知られていたんですかね??

<><><><><>

後半は、キリシタン禁止令以後に聖画を書けなくなった
日本人画家たちの作品が興味深かったですね。。。

ただ、作品の素晴らしさよりも気になったのが、
この「羊」達(笑


$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(図録より)

あきらかに大きさが可笑しい(笑
でも、これはしょうがないと思います。

子羊はキリスト教では罪の無いものの象徴として、
イエスが度々喩えに用いますが、この時代に日本に羊はおらず、
山羊とちがってストレスに弱い羊は、
まだこの時代の航海には耐えられなかったんですね…

故に、イエズス会の宣教師などから聞かさせるのは、
そのイメージで、しかも象徴的なのは子羊でしたから、
実際の大きさというのはあまり考慮されなかったんでしょう(笑

小さく描かれた羊の子羊はさらに小さい!
いずれにせよ可愛いですが(笑

これは、妻がかなり気に行ったようで、
早速葉書サイズに印刷、部屋に飾ってあります(笑


<><><><><>

最後にショッキングだったのは、
モノというより、あるものの説明!


$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-美術展
(図録より)

一見、珍しさも感じないこの縞模様!

今我々が使っている「縞」は、元は「島」と呼ばれていて、
他の「島」から伝わった模様って意味だったんですって!
つまり「縞々」は「島々」ってコト!


いやぁ勉強になりました・・・

以外に身近なものほど知らないことって多いですね…