自宅で大事にチビチビ飲んでいた
Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherrycask
このウイスキーが、もう残りが少なくなった先日
これを紹介してくれた紳士を、ふと思い出しました…


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2001年頃だったでしょうか…
東京、有楽町にあるウイスキー専門店
「キャンベルタウン・ロッホ」で飲んでいる時でした。

パイプを吹かしウイスキーを飲みながら、
中村マスターと話をしている老紳士がいらっしゃいました。

話の流れから、中村マスターが、この老紳士をご紹介して下さいました。
氏の名は「マシュー・D・フォレスト」
聞けば、少量のウイスキーを所有、瓶詰め・販売しているとの事でした。

当時から周りではシェリー酒の専門家として紹介される事が多かったので、
この時も、そのように紹介されました。

氏もシェリー酒はお好きとの事で、
当然、話はシェリー酒と樽の話に及んだのですが、
その中でもその時、氏が瓶詰めしたという

【サンデマン社のクリーム・シェリー樽で熟成】
Matured in Sandeman Cream Sherry Butt した、
【1966年蒸留の35年熟成 タムナブーリン】
Tamunavulin aged 35 years, distilled in 1966 の話になりました。

氏とは、その後、キャンベルタウン・ロッホで何度かお会いし、
氏からの幾つかの疑問*も、自分が解っている限りお話させて頂きました。

今となっては懐かしい思い出です…


*一つは原産地呼称に関する話で、
興味深いので、いずれまたこのBlogで…

Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherrycask
1966年蒸留/樽番号3807/Cream Sherry Butt
52.6%/世界に427本

シェリー樽の話をしていると、よく、
「シェリー酒の熟成はソレラなので、輸送用の樽が別にあり、
それがスパニッシュ・オークだった…」
などと実しやかに言われることがありますが、

このタムナブーリンの色と味わいが示しているように、
輸送に新樽や別樽がわざわざ造られたとしても、
1970年代から意図的に生まれたスパニッシュ・オーク樽でも、
このようなリッチなシェリー酒を感じさせる味わいは出ない
のではないでしょうか…

その辺はまた、その手のプロの方々が、
その舌と経験で実感されていることと思いますが…

さて…


まぁ、シェリー樽に関しては、
僕自身で調べたこと、知っていることがありますが、
一方で分からないことだらけでもあり…

と、ご興味が強い有志の方々には、
お会いした時にでもじっくり
樽談議をしましょう(笑


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【サンデマン社略史 Sandeman】
1790年:創業。
1790年代:J.Duff社のエージェントに(-1805)。
1823年:Pemartin社の輸入を開始。
1879年:Jerez参入。Pemartin社のSoleraを購入。
1880年:自社瓶詰め開始。
1928年:自社マーク使用開始。
1934年:自社マークのラベル使用開始。

***

【1966年当時のSherry事情】

1960年代:スペインの好景気。
1961年:米国での甘口シェリー酒大流行。
1965年:英国へのシェリー酒輸入は250万kℓ。
1965年:シェリー酒業界の醸造技術大革新開始…
1966年:英国でシェリー酒ブーム再来(-1972)。
1966年:輸出されたシェリー酒の92.1%が樽。

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$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherrycask
インバーゴードン蒸留所 1966年蒸留
サンデマン社クリーム樽
(写真:マシュー・D・フォレスト氏提供)

Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherrycask
タムナブーリン蒸留所 1966年蒸留
サンデマン社オロロソ樽
(写真:マシュー・D・フォレスト氏提供)

Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherrycask
タムナブーリン蒸留所 1967年蒸留
サンデマン社?樽
(写真:マシュー・D・フォレスト氏提供)

このウイスキーを日本に紹介してくれたフォレスト氏は
その後、何年かして亡くなられました。

今はきっと天国でお好きなパイプをふかしながら
ウイスキーを愉しんでおられるでしょう。

美味しかったコレクションと共に、改めて氏に感謝したいと思います。