2011年10月10日に
新橋ボワ・ヴェールにて開催の
第二回「中世の宴」にあわせて出す
「ヒッポクラス」の仕込みをご提案頂いたので、
今回は僕が造らせて頂くことにいたしました。


$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-hippocras

【ヒッポクラスHippocras】
とは、
中世から飲まれていたコーディアル*の一つ。

*予め混ぜるカクテル的なもので
身近なものにはサングリアなどがある。

ヒッポクラスとは、そもそも「医薬の父」として称えられる

$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-hippocras
(British Museum)
「ヒポクラテスHippocrates」(BC460-BC357)
にあやかったもので、


ワインをベースに
シナモンを中心としたスパイスを入れて漬け込み、

$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-hippocras
(Hippocrates' Sleeves)
「ヒポクラテスの袖 Hippocrates' Sleeves」
と呼ばれる布で濾過したものを指します。


注)写真下の白い山は当時の砂糖の塊。
これに関してもいずれの機会に…

スペルには、
かのタイユヴァンのレシピにもあるという"Hypocras"の他、
"Ippocras"や"Yprocras"とも綴ります。


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ヒッポクラスは、俗にヴェルモットの前身だとも云われますが、
ヴェルモット的なものは既にヒポクラテス自身が言及しているので、
アロマタイズド・ワインの一つと言えるでしょう。

むしろ、ヒッポクラスには同化消滅してしまったと考えられる
「パイメンPyment」(スペル多数)という前身がありました。

さて、当のヒッポクラスが現れるのは
1375年にタイユヴァンTaillevent(1310-1395)によって書かれた
「ル・ヴィアンディエ Le viandier」(食物譜)のが有名*ですが、

*15世紀のリプリント版に登場?とも。

ある資料によれば、それより以前の14世紀初頭の詩に、
かつてヘレス(シェリー酒の産地)でも多く造られていた
ルムニーやマルムジーと共に
「ヒッポクラスHippocras」が登場します。

個人的には1529年にカスティージャで書かれた
料理書の記述とレシピも気になりますが、

今回は手持ちの英国系の資料が、
使われているものだけではなく、その分量がある程度書かれていたので、
それを参考にしました。

それによれば、
1467年にイングランド北部のヨークのカトリック大司教の就任祭に
1樽(pipe)のHypocrasが振る舞われた他、

1488年頃から16世紀後半にかけて定期的に
フランスからイングランドのケンブリッジやノーウィッチに
Hippocrasの輸出が行われていたようです。


ちなみに個人的に興味深いのは、
シェリー酒の台頭*によってヒッポクラスに関する記述が
あまり出てこなくこっていったように見えることですね。
一種の選手交代といったところでしょうか…
*シェイクスピア時代はサックSackの名で。

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さて、講釈はこれぐらいにして、
仕込みますか…


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