$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-shakespeare$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-shakespeare

ミケランジェロが亡くなり、ガリレオが生まれた年、
父リチャードの三人目の息子としてシェイクスピアは生まれた。
父は手袋職人とも食肉商人とも言われるが、
同時にエール(ビール)の検査官でもあった。

この時代の英国ではドレークが姿を現し、
セヴィリアの植物学者モナルデスが万能薬と言った煙草が
ホーキンスによって喫煙の習慣として伝わり始め、
イングランド対岸のネーデルランドでは、独立の為の狼煙が上がっていた…

ビールは次第にホップの量が増えていき、
各国でのペスト流行のせいもあって、巷では蒸留酒、
とみにブランデーや粕取りブランデーが話題の一つになっていた…

間もなくスペインのフェリペIIが
ポルトガル王フェリペIとして即位すると、
マディラ島もスペイン領に組み込まれた…

公認私略船船長から、完全に海賊と化したドレークが発端で、
イングランドとスペイン(大艦隊*1)は激しい交戦を交え、
ドレークはカディスから大艦隊用に用意されていた
シェリーの内2900樽を強奪…
プリマスやブリストル、ロンドンでは略奪されたシェリー酒に湧いた。

*1通常、無敵艦隊と呼ばれるが、これは後についた名前。

戦争によって、スペインは国庫が枯渇し、ペストの流行でも苦しむ一方、
戦争に勝ったイングランドでは略奪とネーデルランドから結果的に獲得した
製糖と砂糖貿易で羽振りが良くなっていた。

当然、景気のイイ都市部、特にロンドンには周辺各国の酒が並び、
この頃盛んになっていた植林や、この戦争や、昨今の製糖で稼いだ人間達が
ステイタスを見せつける為に舶来の酒を毎夜飲み交わしていた…

そんな頃、
年々その評判を挙げていたシェイクスピアは
「ヘンリーVI」、
「ソネット」、
「恋の骨折り損」、
「ロミオとジュリエット」
「真夏の夜の夢」、
「ウィンザーの陽気な女房たち」、
「ヘンリーIV」
と、次々に作品を発表。



$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-フォルスタッフ
(シェリー好きでお馴染みのフォルスタッフ)

それを見て楽しむ王侯貴族や金持ち商人達に
「サック」:シェリー、
「アルケミー」:化学者、
「フィジック」:薬、
「アクアヴィテ」:蒸留酒、
「ポション」:飲み薬、
「バーン・サック」:ホット・シェリー、
「マディラ」:マディラ島ワイン*2を登場させ、
その時事的臨場感を巧みに醸し出していた…




*2:強化は18世紀以降

そんな、シェイクスピアの作品に登場する酒ばかりを集め研究したのは
洋酒界の博学王「アンドレ・シモン」Andre L. Simon(1877-1977)である。

この研究書は1931年に氏が所属する研究クラブにて
199部のみ配られたというもので、
1934年にシェイクスピアの生誕400周年記念で出版された。

以下は北海道は帯広にある大谷短期大学の学長
「多田稔」氏による訳本である。
この書籍が出版後、氏には感想と意見を述べた手紙を送ったのだが、
数週間後に、氏のご意見と、再版時の訂正に関する返信を頂く事が出来た。
実際は再版されたのかも訂正されたのかも確認はしていないが…

シェイクスピアのワイン/Andr´e L. Simon

¥1,050
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と、シェイクスピア作品であれば、
以下「小田島先生」の作品集が読みやすくお勧め。
ただ、酒、特にシェリーに関しては
意訳になっているのはいささか残念である。
それに関しては氏に何度かお会いした時に
告げてはいるのだけれども…

ヘンリー四世 第一部 シェイクスピア全集 〔15〕 白水Uブックス/ウィリアム・シェイクスピア

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何件か問い合わせがありました
作品中にある「ライム」は
明らかに「石灰」です。

この時代に英国に果物のライムは
栽培はおろか輸入もされていないと云われていますし、
日持ち向きの酸っぱいワインや、酸化したワインには、
今で言う中和や還元(結果的/体験的)を期待して
石灰が加えられていました。


!!iPhone用シェリー・カタログ・アプリも是非!!

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