$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-sherry

19世紀の文化研究、特に英国や英国初のものを調べていると、
必ずお目にかかるのが「ザ・イラストレイテッド・ロンドン・ニュース」(1842-)
いわゆるイラストがメインとも言うべき新聞です。

19世紀、写真(機)は既に誕生はしていたものの
1890年を過ぎるくらいまでは気軽に取材で撮るという代物ではなく、
世の中の最新情報を伝えるのは、写真家ではなく
イラストレーター達でした。

そんな最中の1876年、
「ザ・イラストレイテッド・ロンドン・ニュース」の社員であった
ヘンリー・ヴィゼテリー(1820-1894)が、イラストレーターW.P.を連れ
ヘレスJerezの収穫の時期を見計らって、シェリー全体の取材を敢行。
間、周辺のセヴィリアやモンティージャなどにも足をのばしました。

帰国後彼は
10/14「ザ・イラストレイテッド・ロンドン・ニュース」に
シェリーとヘレスについて掲載。(写真上:額装して居間に飾ってます)
「サンルーカルのマンサニージャの認知度の高さ」や、
「昼から皆シェリーを飲んでいる」事などを報道。

そして、新聞とは別にこの年まとめたのが
$Sherry Museum館長[中瀬航也]のオフィシャル・ブログ-factsaboutsherry

「シェリーの真実」 "Facts about Sherry"です。

この中には土壌の良し悪し、クラス分け、ヴィノ・デ・コロール、
ソレラやヴィンテージ・シェリー、モンティージャなどに関して言及。

上記の添付写真は1876年の本物で、
僕が買った本の中で一番高い本ですが
今は2010年版のリプリントが簡単に手に入ります(複雑…
でも英語が読める方には当時を知る貴重な資料ですので、
シェリー研究者ならずとも洋酒の研究をされている方は必読本です!

*彼は同様にシャンパンやポート、マディラについても書いており、
"Facts about Champagne and Other Sparkling Wines":1873,1878(所蔵)
"Facts about port and madeira":1880(リプリント版所蔵)
いずれも今はリプリント、
シャンパンに関してはiPad用電子書籍
でも買えます。

Facts about Sherry/Henry Vizetelly

¥1,692
Amazon.co.jp

ちなみに、また何処かで触れると思いますが、
この古い本にも、シェリー樽の樽材はアメリカから輸入とありますので、
日本のとあるメーカーさんが最近やっとその歴史的使用の否定を
するようになったスパニッシュ・オークなるものが
当時から使われていなかったとする証拠の一つになるでしょう…


余談:1876年と言えば、
・日本では福沢諭吉が「学問ノススメ」を著した他、
 横浜のグランド・ホテルに「初のフランス料理店が開業」。
・スペインでは「宗教の自由が規定」され、
・アメリカではハインツ社によって「トマト・ケチャップが誕生」…