書店で見かけたそのタイトルに目が釘付けになった私。
それは、伊集院静氏の新著「なぎさホテル」。
表紙を見ただけで購入を決めたのは、遠い記憶の彼方の
フラッシュバックのように甦ったから。
近年、年に一度は逗子へ出掛ける機会があるけれど、何故か
なぎさホテルのことはすっかり忘れていた。
思い起こせば少女の頃、海水浴で訪れた逗子の海辺で見た
なぎさホテルに密かな憧れを抱いていた気がする。
短大の頃かな、両親へのアリバイを必死で考えて予約したものの
直前にボーイフレンドと喧嘩をしてキャンセル。
18からの3年近いお付き合いも終わった。それが私の初めての
本物の失恋だった。
それから間も無く閉館し、結局なぎさホテルに宿泊することはなかった。
この本は、作家・伊集院静の原点を書いたものだが、私たちが
知りたかった夏目雅子さんとのことにも触れられている。
彼女がひとりで自宅の庭で婚約発表したTV映像を、私は今でも
鮮明に覚えている。
はにかみながら、でも嬉しそうに喜びを語る姿を見て、母と私は
「可愛い綺麗な人ね」と語り合ったものだ。
登場人物の大半はこの世にはいないし、そこにホテルがあった
ことすら忘れ去られようとしているのかもしれない。
けれども、今となっては、まるで夢の中の出来事だったかのような
時間がそこには確かに流れていたのだろうと思う。
ちょっぴりせつなく、でも人生は悲嘆することばかりではないと
思わせてくれる、今オススメの一冊。
