現場の問題を抽出し、尼崎市の動物愛護行政の未来を描く | 特定非営利活動法人C.O.N

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地域猫活動、公営住宅とペット、ペット防災、多頭飼育崩壊、高齢者とペット問題など、人と猫にまつわる様々な社会課題に取り組んでいます。高齢者とペットの安心プロジェクトは5年目になりました!人と動物が共に生きる、ワンウェルフェアの実現を目指しています。

平成28年12月定例会
● 真鍋議員
 続いて、猫の適正飼養について質問させていただきます。
 多頭飼育の届け出制等については本年6月に質問させていただきましたが、その後、多頭飼育による生活崩壊の深刻な実態がわかってきましたので、今回再度質問をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 6月の質問以降、猫の愛護団体から、ぜひ一度多頭飼育によって生活が崩壊してしまった実態を見てほしいとの御連絡があり、団体の方と一緒にある1軒の家を視察調査させていただきました。猫のふんやノミなどもたくさんいてかまれたり汚れるので、そのつもりで来てくださいとの話だったので、8月のお盆明けのとても暑いときでしたが、長袖の雨具と長靴の完全防備で行きました。

 そこの家庭では20匹ほどの猫を飼育されていたようですが、猫の不妊手術はされていませんでした。80歳代の母親が認知症のため施設へ入所することとなり、また、息子さんも住み込みで働きに出ているためそれまで飼っていた猫は飼えなくなり、最後は捨てられたようです。その後に家の中の様子を見に行ったのですが、部屋は畳の上に猫の餌などが散乱し、ふんなどが何カ所かありました。そして、私はよくわかりませんでしたが、愛護団体の方がおっしゃるには、猫の死んだ跡も複数確認できるとのことでした。
 こうした多頭飼育による家庭の崩壊は、団体が確認しているだけでもことし現時点で6件起きています。先ほど紹介した以外に一例で、70歳代夫婦世帯、生活保護を受給、1匹の猫を飼い出して1年半で40匹に。不妊手術はしていませんでした。市営住宅へ転居のため飼育ができなくなったとのことです。現在、こうした多頭飼育によって引き起こされるさまざまな問題が全国的にもふえてきています。

 先日、NHKのクローズアップ現代でも2匹の猫が80匹になったという家庭の実態が報道されていましたが、猫は1年間に3回の出産ができる上、1回の出産で三、四匹を生むため、避妊去勢手術をしっかりしておかないとあっという間にふえてしまいます。そうなってしまいますと鳴き声やふん尿などのにおいもかなりのものとなり、御近所にもさまざまな迷惑がかかってきて、環境問題にもつながってきます。
 そこでお聞きいたします。現在、こうした多頭飼育による苦情や通報が動物愛護センターにあった場合、市ではどのように対処をしておられるのでしょうか、お聞かせください。


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● 医務官 
 多頭飼育による苦情や通報が動物愛護センターにあった場合の市の対応についてといったお尋ねでございます。猫の多頭飼育による苦情や通報に関しましては、正確な状況把握とともに、苦情内容を飼い主に伝えます。そして、終生飼養及び適正飼養の観点から不妊手術の実施や雄、雌を分離した飼育等の指導を行っております。
 多頭飼育崩壊による猫の収容につきましては、飼い主等の依頼による引き取りを行います。
 なお、動物愛護センターでの収容の前に動物愛護団体が引き取って、譲渡等の取り組みを行っているケースもございます。


● 真鍋議員
 次に、動物愛護の件で、動物愛護センターへ相談しても3年前の動物愛護法改正により地方自治体は犬猫の引き取りを一部拒否することができるようになったため、引き取りが断られます。先ほど医務監のほうからは、ボランティアのほうが引き取ってくださっているというケースもあると言いますけれども、ほとんどが今そういうケースになっているかと思います。
 そして、こうして引き取りを断られた犬猫はどうなるかといえば、人知れず公園などに遺棄されるか、衰弱、餓死、共食いなど室内で死に絶えるか、またはボランティアの方のところに持ち込まれるか、いずれかとのことです。
 現在、尼崎市の猫の愛護団体の会員10名の方が保護されている猫の数は300匹以上とのことです。多い方は、1人で60匹も保護されている方がいるそうです。もう限界に来ているとのことです。
 他都市ですが、ことし7月、姫路市において犬猫の保護譲渡を行うNPO法人が、多頭を抱え込み過ぎたために崩壊してしまったとの報道が大きくなされました。ここは姫路市動物管理センターの犬猫を長年引き取ってくれていた団体でしたので、大変残念に思います。今後、行き場を失った犬猫を受け入れてくれているボランティアの二次的破綻はどんどんふえていくだろうと言われています。これが殺処分ゼロを目指す現状であります。
 そして、ボランティア団体の方々は、自分たちが保護、飼育した猫などを新たな飼い主を見つけて譲渡するため、自分たちで場所を探して展示して譲渡活動をされています。
 去る11月27日の日曜日に行われました愛護団体主催による第3回目の猫の譲渡会に見学に行きました。多くの方が見に来られており、また毎日放送の取材も来ていて、社会的な関心の高さが感じられました。そこでは、保護されてきちんと飼育された猫が1匹ずつケージ(かご)に入れられて展示されており、飼育を希望する方は届け出るというものでした。そこには20匹ぐらいの猫がいましたが、会場の広さの関係から連れて来られない猫は写真をファイルにして展示していました。
 団体の方々の御希望としては、こうした会場を借りたりするのも大変であるため、行政として保護譲渡施設を建設して、同じような取り組みをしてほしいとの考えです。
 そこでお聞きいたします。市として保護譲渡施設を整備する考えはないのか、お聞かせください。


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 次に、このような譲渡会活動などの殺処分を減らす取り組み、いわゆる出口を閉める取り組みを強化しても、入り口である、いわゆる適正な飼育を啓発していかない限り、ペットの多頭飼育、またそこから派生する遺棄などの実態が減りません。そのためには、以前にも要望しましたが、多頭飼育の届け出制度の創設が必要だと改めて訴えたいと思います。
 多頭飼育の届け出制度とは、前にも御説明させていただきましたが、他都市を例にしますと、生後91日以上の犬猫合わせた飼育の数が10に達した日から30日以内に、飼養施設の所在地ごとに氏名、住所、法人にあっては代表者の氏名、飼養施設の所在地、犬及び猫の数、飼養の方法などを届けさせるというものです。
 また、条例では、自治体は多頭飼育者の飼養する犬及び猫の健康と安全を保持し、または周辺の生活環境の保全を図るために、必要な限度において、多頭飼育者に対して犬及び猫の飼養施設の構造及び飼養の方法について必要な助言または指導を行うことができるとしています。これによって行政側も早い段階から多頭飼育の状況を把握できるので、崩壊に至るケースを減らしていくことができるのと、ペットの遺棄、衰弱、餓死などもなくしていくことにもなるのです。
 そこでお聞きいたします。兵庫県は前向きに検討を開始するというふうに仄聞しております。保健所設置市として、本市も多頭飼育の届け出制度を創設するべきだと思いますが、改めて当局の見解をお聞かせください。


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 次に、動物愛護基金への寄附を団体が行政と一緒になって呼びかける、オフィシャルサポーター制度の創設についてお尋ねいたします。
 今年度、愛護基金から野良猫の不妊手術助成金へ100万円が増額され、300万円となりましたが、7カ月で使い切りになりました。一般財源からの予算増額も厳しい状況でありますので、動物愛護基金の拡充を図って財源を確保していかなければなりません。愛護団体の方々もそのように痛感されており、私も行ったことがありますが、愛護基金への寄附呼びかけをみずから駅前などで行っておられます。
 しかし、団体の方々は、自分たちはどこまでも私的な団体であり、寄附の呼びかけもボランティア活動の一環ということなので募金をしてくださる方も限られていると悩んでおられます。そうした中で団体の方々が望んでいるのは、企業や著名人の応援を得てより有効なPRをするためには、尼崎市や動物愛護センターの公認、いわゆるオフィシャルであることが重要になると考えておられ、オフィシャルサポーター制度の創設を望んでおられます。愛護団体の方は、こうした市の認定を受けて、さらに強力に基金の呼びかけをしていきたいということです。
 そこでお尋ねいたします。このオフィシャルサポーター制度の創設について、動物愛護センターを所管しておられる医務監にそのお考えをお聞きしたいと思います。御答弁のほどよろしくお願いします。


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● 医務官
 続きまして、市として保護譲渡施設を整備する考えはないのかといった御質問でございます。多頭飼育崩壊の場合に飼い主が新しい譲渡先を見つけられなかった場合には、動物愛護センターが引き取りを行います。収容した猫については可能な限り譲渡の取り組みを進めており、飼い主からの引き取りのための保護譲渡施設を新たに設置することは考えておりません。
 続きまして、保健所設置市として多頭飼育の届け出制度を創設するべきだと思うが市の見解はどうかといった御質問でございます。
 多頭飼育の把握につきましては、飼育に関する相談等を早い段階で受けるために、介護職など家庭訪問に従事する方から情報を提供してもらうための取り組みを現在検討しております。情報の事前把握のほうがより効果的であると考えておりますので、現在のところ多頭飼育の届け出制を創設することは考えておりません。この制度につきましては、国・県の動向を見守ってまいりたいと考えております。
 最後に、オフィシャルサポーター制度の創設についての考えはどうかといった御質問でございます。動物愛護基金につきましては、ふるさと納税を含めて寄附をしていただく7つの基金のうちの一つであり、動物愛護基金に特化したオフィシャルサポーター制度を創設することは考えておりませんが、ボランティアが企業や団体を訪問し、基金の趣旨を説明する場合には、その求めに応じて職員が同行することによって対応してまいりたいと考えております。




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