動物愛護基金を作るお考えがあるのかないのか? | 特定非営利活動法人C.O.N

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地域猫活動、公営住宅とペット、ペット防災、多頭飼育崩壊、高齢者とペット問題など、人と猫にまつわる様々な社会課題に取り組んでいます。高齢者とペットの安心プロジェクトは5年目になりました!人と動物が共に生きる、ワンウェルフェアの実現を目指しています。

平成22年9月議会
尼崎市議会 福嶋さとり議員
 
 
●福島 議員
 
 動物愛護管理行政についてお伺いいたします。
 まず、動物愛護基金についてですが、会派議員が動物愛護基金の創設について、昨年の2月と9月、そしてことしの2月議会で質問をいたしました。その間行政は、研究・検討しますといった消極的な答弁に終始してきました。1年半の間、一体何をどのように研究・検討してきたのでしょうか。
尼崎ケンネル問題があったとはいえ、議会議員の提案に対して余りにも誠意のない対応ではないでしょうか。 何人かの市民にこの話をしたところ、どうせそうでしょう、職員は余計な仕事をしたくない、リスクを負いたくないと思っているのではないですかとの言葉が返ってきたようです。これが一般市民の正直な意見です。

 現場では市民のボランティアが資金面で行政の肩がわりをしています。
ボランティア団体、ホームレス猫不妊運動ネットワークでは、獣医師の協力も含めて毎年500から600頭の不妊・去勢手術を個人負担で行っています。費用は400万から500万円に上ります。尼崎市内ではほかに個人で避妊手術費用を負担している方がまだまだいますので、個人負担の額はもっと多いはずです。野良猫問題は地域の環境問題でもあります。行政がすべきことを市民ボランティアがやっています。その市民ボランティアの経済的な負担を軽減するために基金の設立を提案しているのです。
 
 学校飼育動物についても病気になった動物を診てもらう予算はわずかしかなく、ほとんど開業獣医師の方々がボランティアでやっています。何を大げさに研究・検討しようとしているのか理解に苦しみます。
 
 動物愛護基金の使途は限定されています。その事業は、1、避妊手術などの野良猫対策事業、2、収容動物譲渡事業、3、学校飼育動物運営事業、だれが考えても基本はこの3点に絞られるのです。 お尋ねいたします。この1年半の検討状況を具体的にお答えください。また、基金をつくるお考えがあるのかないのか、つくるとすればいつつくるのか、あわせてお答えください。
 
 
 次に、職員体制についてお伺いいたします。

 獣医師はさまざまなところで働いています。大問題となった宮崎県の口蹄疫の拡大に対応した畜産関係で働く産業獣医師、競馬場や動物園、水族館、あるいは製薬会社などの実験動物を扱う職場などで働いています。その中で最近は、町なかで見かける動物病院を経営する小動物臨床獣医師がふえています。 反面、公務員獣医師の人気がなく確保するのに苦労しているのが実情です。公務員獣医師は、食品、環境、感染症等、公衆衛生向上、監視などを担う重要な存在です。
 獣医師法では、1、動物の保健衛生、2、畜産業の発展、3、公衆衛生の向上が3つの使命とうたわれています。しかしながら、地方公務員となって動物愛護センターへ配属されると、事務や動物の殺処分という厳しい現実が待っています。殺処分が仕事となるのです。動物を治療して命を救うのではなく命を奪うという仕事に、当初の夢と使命感は打ち砕かれ、獣医師がやめていく理由の一つになっています。

 動物愛護行政が進んだ熊本市の例を聞くと、熊本市では19人の職員がいると言われますが、殺処分ゼロを目指したときは4人からスタートし、全国からの支持を受けた結果、現在の陣容になったと聞いています。お尋ねします。本市における獣医師の人数とセンター職員の体制、職員数の現状はどうでしょうか。また、定数との乖離はあるのか、適正な職員数と考えているのかをお答えください。
 

 次に、殺処分ゼロを目指してお伺いいたします。

 今、動物管理行政で、全国の注目を集めているのが熊本市です。平成14年に動物愛護推進協議会を設立して、行政と地域が協力して殺処分ゼロを目指す取り組みがスタートいたしました。その取り組みは、まず、持ち込まれる犬や猫の数を減らすことから始まりました。最後まで責任を持って飼うように説得をしますが、時には処分する施設なんだから黙って引き取れと言われたこともあるそうです。
 その次にすることは、保護した動物の飼い主を探して返すことです。そして、新しい飼い主を探す譲渡事業が取り組みの骨子になっています。14年間動物園で働いた後、熊本市動物愛護センターの所長となった松崎正吉氏は、動物を守る仕事から処分しなければいけない職場へ異動。覚悟していたとはいえ毎日の処分に心が痛みましたと述べています。何とか動物に生涯を全うさせてあげたいとの気持ちが、殺処分ゼロを目指す動機となったそうです。毎年およそ28万匹の犬、猫が日本で処分されています。熊本市は、殺処分ゼロとはいきませんが、処分数は平成20年度より激減し、返還率と譲渡率が大幅にふえています。熊本市では、猫の殺処分数は平成14年度以降の記録しかありませんが、平成14年度では782頭の拾得、不要引き取りの数のうち譲渡が94頭で、610頭が殺処分されていました。ところが、平成20年度になると引き取り数318頭のうち譲渡が205頭で殺処分が70頭に激減しています。21年度に至っては、引き取り数268頭で、譲渡が220頭、殺処分はわずか6頭になりました。生存率は82.09%です。犬の捕獲、保護、引き取り数は、平成14年度で697頭、そのうち返還が109頭、譲渡が169頭、処分が393頭でした。これが20年度では捕獲、保護、引き取り数は552頭、返還が215頭、譲渡が205頭となり、平成21年度においては捕獲、保護、引き取り数453頭のうち返還が189頭、譲渡が222頭、処分はたったの1頭となっています。活動の成果が出ているようです。しかし、市町合併で持ち込み数がふえるなど、油断するともとに戻ってしまうことになります。時間のかかる事業です。
 さて、本市の場合はどうでしょうか。お伺いいたします。犬、猫の最新の拾得、不要引き取り数、返還数、譲渡数、そして処分数をお答えください。
 
 
● 医務監
動物愛護基金の創設に合わせ、インターネットによる寄附ができる環境づくりについて、他都市における先行事例を参考に研究してまいりたいとの答弁があったが、研究の進捗はどうかという御質問でございます。
 インターネットによる寄附についての他都市における先行事例では、軽自動車税、市県民税やふるさと寄附金などがございます。そのメリットとしては24時間の対応が可能であるなどである一方、導入費用や月額利用料のほか、一例で申し上げますと利用料の1%の手数料や件数による定額の手数料を必要とするため、現在の納付書による寄附と比べその収納手数料の取り扱いなどの課題もあることから、動物愛護基金についての検討を引き続き進めていく中で、実施の際の広報の方法とあわせて、インターネットによる寄附といった手法については、さらに研究してまいりたいと考えております。
 次に、尼崎市も熊本市と同様に、動物愛護推進協議会あるいは推進委員会をもう少し広い構成メンバーで常設すべきと考えるがどうかという御質問でございます。
 現在、尼崎市における動物愛護行政のあり方検討会議において、御指摘の協議会の常設等につきましても議論をお願いしているところでございますので、検討会議の提言をもとに今後検討してまいりたいと考えております。

 続きまして、職員のやる気や、意見・要望を採用する職場環境、またホームページによる情報発信等の方法についての現状認識について、また殺処分ゼロを目指して動物愛護行政を進める意思があるのかというお尋ねでございます。

 昨年の動物取扱業者からの犬の引き取り問題以降、市民の皆様からもさまざまな御意見をいただき、現状を少しでも改善していくために動物愛護センターや生活衛生課でも話し合いを重ねながら業務に取り組んできております。また、ホームページ上での収容動物の情報につきましては、現在、写真の添付を検討しているところでございます。
 殺処分数ゼロにつきましては、尼崎市における動物愛護行政のあり方検討会議で議論いただいており、その提言をもとに、殺処分となる犬・猫が1頭でも少なくなるような動物愛護管理行政を推進してまいりたいと考えております。

 
●福島 議員
次に、動物愛護管理行政についてお伺いいたします。動物愛護基金について、ことしの8月4日に和歌山県貴志川線の貴志駅がリニュアルオープンしてセレモニーが行われました。老朽化した駅舎を建てかえたのですが、駅名はたまミュージアム貴志駅です。三毛猫駅長のたまの顔を外観に表現し、耳や目などをステンドグラスの窓にして、外観は猫のイメージとなっています。公費は1億円でした。
 昨年は車体にたまのイラストを描いた、たま電車をつくりました。寄附を募ったところ1,300万円が集まったとのことです。関西大学大学院の宮本勝吉教授は、平成19年にたまが駅長に就任してからの経済効果を約11億円と試算しています。
 行政も四角四面の仕事ではなく、ユーモアのセンスを持って取り組んでいただきたいと思います。そういった観点から、一日も早く動物愛護基金を創設し工夫をして寄附を募れば、賛同者は多くいると思います。創意工夫と情報発信です。
インターネットによる寄附ができるような環境づくりをすべきと提案しましたが、他都市における先行事例を参考に研究してまいりたいとの答弁をいただいています。お尋ねします。その後の研究はどこまで進んでいますか。研究の成果をお答えください。

 次に、動物愛護管理行政のあり方検討会議についてお伺いします。8月27日に第1回の動物愛護管理行政のあり方検討会が開催されました。出席者は、庁内の関係課長を初め、学識経験者、兵庫県の動物愛護センター所長、関係団体代表、市民公募の皆さんです。検討会議は年間4回で終了となりますので、動物愛護管理行政の方向性を示すにとどまるのではないかと考えます。
 動物の愛護及び管理に関する法律第39条では、都道府県知事等、動物の愛護を目的とする公益法人、獣医師の団体その他の動物の愛護と適切な動物の愛護について普及啓発を行っている団体等は、当該都道府県等における動物愛護推進員の委嘱の推進、動物愛護推進員の活動に関し必要な協議を行うための協議会を組織することができるとあります。また、平成22年3月末現在、関係自治体や地域の獣医師会、関係団体、市町村等から成る動物愛護推進協議会は全国で41あり、政令市、中核市では11市で設置されています。尼崎市は、兵庫県が設置している協議会に参加していますが、中核市として独自で協議会を置く必要があると考えます。本市のあり方検討会議は、限られた構成メンバーと限られた期間で検討しようとしています。
 熊本市においては動物愛護推進協議会を増設し、官民の協力体制をつくり、地域に根差した活動で成果を上げています。お尋ねします。尼崎市も熊本市と同様に、動物愛護推進協議会あるいは推進委員会をもう少し幅広い構成メンバーで常設すべきと考えますが、お考えがあればお聞かせください。

 次に、殺処分ゼロを目指してについてお伺いいたします。
 第1問では、熊本市の実態を示し本市の状況をお答えいただきました。熊本市と尼崎市の違いは、最新の数字で比較してみると、犬については返還数と譲渡数が尼崎市は熊本市の10分の1以下になっていることです。その結果、処分数は以前と比べて少なくなったこととはいえ、昨年度は熊本市1頭に対して、本市は97頭になっています。猫についてもほぼ同じことが言えます。平成21年度の熊本市の譲渡数は220頭ですが、尼崎市はわずか11頭です。
 
 その結果、処分数は熊本市が6頭に激減したのに比べ、尼崎市では575頭という多くの処分がいまだ行われています。センターに収容された猫の生存率は実に1.9%です。こんなにも数字の違う理由の一つはやる気の問題です。本市は余計なことはしない、例外をつくらないという大変消極的な職場環境にあるのではないでしょうか。市職員となって、自分が配属された場所で何かをやり遂げたいという気持ちはだれにでもあると思いますが、いつの間にか環境になれ、最初の気持ちが薄れてきて、日常業務に追われる日々になるのではないでしょうか。
 職員にも言い分があるでしょうが、数字が物語っています。平成18年7月に策定された動物愛護管理基本指針を受けて県の推進計画、そして本市はガイドライをつくることになっています。
 2011年までに動物の収容数、つまり処分数を半減させることになっていますが、本市の進捗状況はどうでしょうか。先ほど紹介した返還、譲渡、殺処分の数字が、本市の動物愛護管理行政の現状を映し出しているのではないでしょうか。

 2つ目の理由は、方法です。インターネットも当たり前の社会となり、情報収集はインターネットで検索することが一番の方法です。熊本市役所のホームページでは「迷い犬を保護しています」の項目をトップページに掲載しています。新着情報としてすぐに見ることができます。開いてみると、1頭の犬を保護しましたとあり、さらに開くと保護期限、保護場所や特徴を写真つきで詳細に紹介しています。一方、尼崎市のホームページを開くと、トップページを見ても迷い犬や猫の情報はどこを見ればいいのかわかりません。一つ一つ開いていくうちに、暮らしの便利帳から健康、衛生、ペットのページをめくり、やっと迷い犬・猫情報のページにたどり着きました。ペットの写真はありません。

 3つ目の理由は、尼崎市では譲渡事業にボランティアを全く参加させていないということです。国は、譲渡事業において行政は民間と連携を図るように示しています。お隣の西宮市、大阪市、神戸市等は、行政と民間ボランティアが協力して譲渡事業を行っています。本市でも譲渡事業にかかわる意思を持ったボランティアがいますが、愛護センターは、今のところ、そのルールがないという理由で受け入れていません。早急に動物の譲渡に関する規則等の改正をすべきと考えます。ボランティアに一時的に預かってもらうことを検討しているならば、丸投げをしないでしっかりと責任を持って行政がかかわるようお願いをいたします。お尋ねします。熊本市と本市の違いを述べましたが、職員のやる気や意見要望を採用する職場環境、またホームページによる情報発信等のやり方について現状をどのように認識しているのか、また殺処分ゼロを目指して動物愛護行政を進める意思があるのか、お聞かせください。
 

 映画「犬と猫と人間と」の監督である飯田基晴氏は、センターに毎日入ってくる犬や猫の数が多いため、しばらく待てば新たな飼い主に譲渡されそうな犬・猫までも殺処分されていると、自治体の動物管理センターを取材して語っています。また、犬・猫の殺処分に対して政治はこれまで前向きに取り組んでこなかったと、政治の場で問題を取り上げるよう期待を述べています。
 もともと人間の勝手でペットを飼い、人間の都合で捨てた犬や猫たちです。ペットを飼うからには責任を持って最後まで面倒を見ることがペットを飼う者の義務です。
 そういった意味でペットにマイクロチップを埋め込んで、飼い主の名前やペットの情報を追跡・確認する方法が普及しています。マイクロチップの埋め込みは、太さ2mm、長さ11mmのチップを注射を打つ要領で埋め込みます。一瞬で終わるのでペットに影響はありません。
 平成17年6月1日施行の特定外来生物被害防止法において、37種類の外来ペットにチップの埋め込みが義務化されました。狂犬病予防法では、すべての輸入された犬に埋め込みがされるようになっています。
 平成18年6月1日施行の改正動物愛護法では、蛇やトカゲなど危険な動物にチップが義務化されています。日本はこの点でおくれていましたが、今後はすべてのペットにチップの埋め込みを義務づけて、返還率をふやし、殺処分を減少させることが急務です。お尋ねしますが、国が動くのを待つのではなく、中核市として先駆的にマイクロチップの導入を積極的に行うような地方自治体になるべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
 
 
● 医務監 
動物愛護基金の創設に合わせ、インターネットによる寄附ができる環境づくりについて、他都市における先行事例を参考に研究してまいりたいとの答弁があったが、研究の進捗はどうかという御質問でございます。
 インターネットによる寄附についての他都市における先行事例では、軽自動車税、市県民税やふるさと寄附金などがございます。そのメリットとしては24時間の対応が可能であるなどである一方、導入費用や月額利用料のほか、一例で申し上げますと利用料の1%の手数料や件数による定額の手数料を必要とするため、現在の納付書による寄附と比べその収納手数料の取り扱いなどの課題もあることから、動物愛護基金についての検討を引き続き進めていく中で、実施の際の広報の方法とあわせて、インターネットによる寄附といった手法については、さらに研究してまいりたいと考えております。

 次に、尼崎市も熊本市と同様に、動物愛護推進協議会あるいは推進委員会をもう少し広い構成メンバーで常設すべきと考えるがどうかという御質問でございます。
 現在、尼崎市における動物愛護行政のあり方検討会議において、御指摘の協議会の常設等につきましても議論をお願いしているところでございますので、検討会議の提言をもとに今後検討してまいりたいと考えております。

 続きまして、職員のやる気や、意見・要望を採用する職場環境、またホームページによる情報発信等の方法についての現状認識について、また殺処分ゼロを目指して動物愛護行政を進める意思があるのかというお尋ねでございます。
 昨年の動物取扱業者からの犬の引き取り問題以降、市民の皆様からもさまざまな御意見をいただき、現状を少しでも改善していくために動物愛護センターや生活衛生課でも話し合いを重ねながら業務に取り組んできております。また、ホームページ上での収容動物の情報につきましては、現在、写真の添付を検討しているところでございます。
 殺処分数ゼロにつきましては、尼崎市における動物愛護行政のあり方検討会議で議論いただいており、その提言をもとに、殺処分となる犬・猫が1頭でも少なくなるような動物愛護管理行政を推進してまいりたいと考えております。

 続きまして、国が動くのを待つのではなく、中核市として先駆的にマイクロチップの導入を積極的に行うような自治体となるべきと考えることについての御質問でございます。
 犬・猫の個体識別措置の一つであるマイクロチップにつきましては、平成18年の環境省告示で、補完的な装置として可能な限りマイクロチップ等の識別装置を装着することとされており、マイクロチップの有用性については承知いたしております。しかしながら、飼い主の費用負担等の問題もあり、なかなか普及していないのが現状であります。市といたしましては、現時点では観察や迷子札の装着率の向上のための意識啓発を優先して取り組んでいきたいと考えております。以上でございます。