平成18年9月議会
仙波幸雄議員
◆社会問題としての野良猫対策についてお伺いしたいと思います。
地域の野良猫対策として活動しているボランティア団体、なないろポピーの会が誕生して1年がたちます。この会は、地域から野良猫をなくし、地域環境の改善をしようという目的で活動をしています。具体的には、地域で野良猫を保護し、不妊や去勢手術を施し、地域に返してやり、1代限りの命を全うさせる、また、地域に返した後、定点、定時でのえさやりや定点でのふんの後始末、里親探し、無責任なえさやりをしている人への説明や指導、公園の美化のための清掃、防犯のために公園周辺のパトロールなどもしています。最近は理解者もふえて、猫の世話や公園の清掃をしているこのボランティアグループの姿を見て、自分も何かできないかと公園の清掃を始めた壮年の方の記事が一般紙で紹介をされていました。一時はえさをやるから野良猫がふえるんだと言って反感を持つ人や悪態をつく人、あるいは暴力を振るわれそうになったメンバーもいますが、地道な対話と機会あるごとの説明で、少しずつではありますが、誤解が溶けていっております。
また、別のボランティアグループである尼崎犬猫ネットワークも、さまざまな活動を行ってきました。猪名川河川敷に住んでいるホームレスが所有していた十数匹の犬の不妊や去勢手術、あるいは里親探しで地域に安心をもたらしました。また、藻川河川敷での捨て猫の実態調査を4カ月間にわたって行い、それらの野良猫に不妊や去勢手術を施し、里親を探して、ほとんどの猫がすみかを見つけることができました。さらには、兵庫県警察本部と動物の遺棄防止対策についての懇談を行い、猫を捨てれば検挙します、動物を捨てることは犯罪です、といった警察署名の入った遺棄違反ポスターの設置も実現しました。ことし7月には、尼崎犬猫ネットワークやなないろポピーの会のメンバーを初め、ボランティア活動をしている関係者が一堂に会し、情報交換と今後の打ち合わせが行われました。今までは各地域でそれぞれが行っていた活動が、点から線になろうとしています。この尼崎飼い主のいない猫不妊手術実施ボランティアワークのもとに、小さいものでは1グループ2人、大きいもので20人のグループ、計44グループ、およそ150人のボランティアが掌握され、今後同じ目的に向かい、行動をともにしていくことになりました。
東京や横浜から始まった野良猫対策も、関西各地で行政とボランティア団体が協力して、具体的な活動をするようになってきました。行政の協力を得られず、ボランティアグループ単独で活動する場合、一番大変なのが、不妊や去勢をする手術代の捻出です。4種混合ワクチンや5種不活化ワクチンなどを含めると、1匹1万7,000円から2万円かかります。野良猫の不妊、去勢に理解ある動物病院の協力で、今のところ半額で済んでいます。メンバーはバザーをやり、その収益金を充てていますが、ふえ続ける子猫の手術代を賄い切れません。結局、自費で手術の資金を捻出しているのが現状です。地域環境保全のため、行政にかわって野良猫をなくすための活動の意味を理解のない人々から非難を浴びながらも訴え続け、活動しているボランティアに対し、行政が応援するのは当然のことと思います。
そこでお尋ねしますが、地域で野良猫を保護し、不妊、去勢手術を行っているボランティアグループに、野良猫の不妊、去勢に係る手術代金の一部を補助すべきと思いますが、お考えをお聞かせください。
大阪府内では、吹田、茨木、富田林、豊中市などが野良猫の不妊、去勢手術に補助制度を導入しています。兵庫県では、昨年から神戸市が地域猫モデル事業として補助に踏み切りました。神戸市の場合、導入の背景には、野良猫によるトラブルが近年深刻化し、社会問題となっている一方、猫問題解決の有効な方法として、地域猫事業が東京や横浜で取り組まれ、結果が出ているということを踏まえて、野良猫問題を地域問題としてとらえ、住民や市が協働して問題解決に取り組むことになったとのことです。本市においても全く同じ状況ではないでしょうか。同じことが当てはまるのではないでしょうか。
環境省は、捨て犬や捨て猫の数を避妊や去勢の徹底で減らし、自治体による引き取りを2017年度までに半減させる目標を折り込んだ、仮称動物愛護管理基本指針の素案を本年7月にまとめました。自治体に届けられた捨て犬や猫の94%が処分されている現状、不妊、去勢手術を徹底したり、里親制度で新しい飼い主を探すことによって、自治体での引き取り、処分の数を減らすのが目的です。国もいよいよ野良猫対策に乗り出しますが、動物愛護管理基本指針を受けて、各県では推進計画を策定することになっています。
そこでお尋ねいたしますが、本市においても動物愛護管理基本指針や県の推進計画で野良猫の不妊、去勢手術の事業を行うこととなりますが、地域環境問題に取り組んでいるボランティア活動が活発になりつつある現在、野良猫をなくしていくための事業のガイドラインをつくるべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
環境省は、捨て犬や捨て猫の数を避妊や去勢の徹底で減らし、自治体による引き取りを2017年度までに半減させる目標を折り込んだ、仮称動物愛護管理基本指針の素案を本年7月にまとめました。自治体に届けられた捨て犬や猫の94%が処分されている現状、不妊、去勢手術を徹底したり、里親制度で新しい飼い主を探すことによって、自治体での引き取り、処分の数を減らすのが目的です。国もいよいよ野良猫対策に乗り出しますが、動物愛護管理基本指針を受けて、各県では推進計画を策定することになっています。
そこでお尋ねいたしますが、本市においても動物愛護管理基本指針や県の推進計画で野良猫の不妊、去勢手術の事業を行うこととなりますが、地域環境問題に取り組んでいるボランティア活動が活発になりつつある現在、野良猫をなくしていくための事業のガイドラインをつくるべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
献身的なボランティアの活動により、地域によっては、21匹いた野良猫が、手術をして里親に出したことにより、4匹に減ったところもあります。また、もらい手のない年老いた猫は、手術後はおとなしくなり、けんかもしないで、異臭も少なくなります。地域猫として子供やお年寄りにかわいがられている存在になっています。活動が進み、猫の掌握が行われると、一時はその数はふえますが、早く手術をすることにより、猫の数は着実に減っていきます。おくれると、猫は年間3回出産するので、大変な数になります。地域猫活動をしている人たちは、狂信的な猫好きと思われがちですが、決して猫が好きで活動に参加している人ばかりではありません。人間によって捨てられた猫が虐待を受けたり、殺傷されたり、また、子供がそれを見てまねをする場面に出くわしたとき、問題意識を持って活動を始めた人もいます。動物愛護管理基本指針の定義、目的には、生命尊重の情操の涵養に資することとあります。命のとうとさを再認識する活動でもあります。地域社会のコミュニティーを形成していく上でも、たかが猫ではなく、コミュニティーづくりの一つの課題として取り上げていくべきと思います。
そこでお伺いしますが、誤解や偏見をなくしていくためには、行政の協力が必要不可欠です。市民への協力の周知や動物病院など民間団体の協力体制、担当部署の強化やボランティア組織へのアドバイスやまとめなど、行政としてするべき時に来ていると思いますが、お考えをお聞かせください。
◎医務監(高岡道雄君) 野良猫対策に関する一連の御質問にお答えをいたします。
まず、野良猫への不妊、去勢手術費用の一部補助についてのお尋ねです。
本年7月に国が示しました動物愛護管理基本指針の素案の中に、具体的に構ずべき施策として、みだりな繁殖を防止するための不妊、去勢措置を推進し、行政における犬、猫の引き取り数を10年後には半減させることという目標設定がなされております。これは、主に関東で広く取り組まれている先進的対策の実績を踏まえ、野良猫の不妊、去勢手術によって子猫が生まれなければ、猫の引き取り数を半減させるという目標の実現も可能との判断があるからと推測されます。
尼崎市においても、ボランティアグループによる野良猫の不妊手術実施が功を奏して、ある地域では、20匹近くいた猫がだんだんと減り、最近では数匹になったという事例も確認をしております。こうした活動のさらなる広がりは行政としても期待するところでございますが、不妊手術に要する費用は高額であり、ボランティアグループはバザー収益や自費負担で行っていることから、その活動の拡大には限界があると考えられます。このため、不幸な命の再生産を防ぐとともに、一代限りの命を全うさせるという目的をもって活動されているボランティアグループを支援し、さらなる活動の拡大を図っていくために、不妊、去勢手術費用も含めて支援策について検討してまいります。
次に、野良猫をなくしていくためのガイドラインづくりについてのお尋ねでございます。
動物愛護管理基本指針の素案に示された動物による危害や迷惑問題の防止に当たって講ずべき施策としましては、動物の愛護と管理の両立を目指し得るガイドラインを作成することとなっております。猫につきましても、地域における環境特性の違いを踏まえながら、適正管理の方法の検討を進め、尼崎版ガイドラインを作成してまいりたいと考えております。
なお、ガイドラインの作成につきましては、兵庫県が今後定める動物愛護管理の推進計画に沿う必要があることから、この推進計画の策定状況を確認しながら進めてまいりたいと考えております。
次に、地域猫活動に対し、行政も積極的に関与すべき時に来ているのではないかということについてのお尋ねでございます。
地域猫活動は、さきに申し上げました動物愛護管理基本指針の素案の基本的な考え方に沿ったものであり、さらには、地域コミュニティーの活性化にも資するものと考えております。このような観点から、引き続き現在活動しておられるボランティアグループの方々と協議を進めながら、新たに活動に参加する方や問題を抱える地域住民との調整を図るとともに、獣医師会の協力を要請するなど、活動全体のコーディネート等に積極的にかかわってまいりたいと考えております。
以上でございます。
◆37番(仙波幸雄君) ただいまの高岡医務監の前向きな答弁に対しては評価をします。ぜひ避妊、去勢手術の予算の獲得をお願いしたいと思います。
本市においては、かつては至るところにいた野良犬は、飼い主の意識の向上や手術の啓蒙、拡大などの対策を20年から30年をかけて行った結果、小犬が野良になるケースは少なくなりました。今では動物愛護センターでの野良犬の引き取りは、年間1匹かゼロであると聞いています。他方、センターに収容される野良猫は、年間500匹から600匹に上ります。早急な対策が必要です。神戸市では、過去5年間ぐらいにわたって年間1,000匹から2,000匹の野良猫に不妊、去勢手術を行っています。これは、野良猫を減らすための有効な手段が不妊、去勢手術であるということと、その活動が理解されていること、また、安く手術できることで多数の手術が可能になったようです。尼崎市全域で個人的に行ってきた野良猫の対策も、今、ネットワークができつつあること、活動が活発になってきていること、国が基本指針を示したこと、社会問題としてとらえる下地ができたことなどの点を考えると、今こそ行政としてもボランティアグループとともに本腰を入れて地域の野良猫対策事業をスタートさせる機が熟していると確信します。
どうかボランティアグループのまとめ役、調整役となって、事業が成功するように進めていただきますようお願いをして、私の質問を終わります。