小学校で小動物を飼っている理由は何なのか | 特定非営利活動法人C.O.N

特定非営利活動法人C.O.N

地域猫活動、公営住宅とペット、ペット防災、多頭飼育崩壊、高齢者とペット問題など、人と猫にまつわる様々な社会課題に取り組んでいます。高齢者とペットの安心プロジェクトは5年目になりました!人と動物が共に生きる、ワンウェルフェアの実現を目指しています。

平成20年9月議会
仙波幸雄議員

学校飼育動物の管理について伺いをしていきます。
 旧大宮市、現在のさいたま市において、平成9年に教師がウサギを生き埋めにする事件があり、大きくマスコミに報道をされました。生き埋めにしたウサギは、七面鳥につつかれて死にかけていたウサギの赤ちゃんだったという文書を学校は出しましたが、ウサギがふえ過ぎて引き取り手がなかったからなどの話もあったようです。
 この事件をきっかけに学校は飼育動物の管理を専門家である獣医師にお願いすることになり、教師の研修会と教育施設への訪問活動が始まりました。
 尼崎市においては平成12年に、ある小学校から、ウサギがふえ過ぎて困っているので引き取ってほしい、それが無理なら処分してほしいと動物愛護センターに連絡が入り、センターから獣医師会に声がかかったと聞いております。獣医師が学校を訪問したとき見たものは、動物を飼う条件が劣悪だったとのことでした。

 現在、尼崎市では、小学校43校のうち3校を除く40校で小動物を飼っています。最も多いのはウサギで169羽、鶏が58羽、鳥類が114羽、その他カメやハト、インコなどを飼っております。


 まず最初にお聞きしたいのは、小学校で小動物を飼っている理由は何なのか、教育の位置づけはどうなのか、根拠等がありましたらお示しください。

 
 先ほども述べましたように、平成12年に初めて獣医師が学校での小動物の飼育状態を見たときは、劣悪な環境でした。動物がけがをしても病院には連れていかれず、そのまま放置していたり、えさを買う予算もついておらず、動物を飼育する環境が整っていない中で小動物が飼われていました。この現状を見るに見かねて平成12年から尼崎市開業獣医師会は、学校への訪問活動を開始し、動物の飼い方の指導、けがをしたり病気の動物の治療や去勢手術等をするなどの活動を行ってきました。活動はことしで9年目に入り、訪問する学校も9校にふえています。しかし、ボランティアでやっている限りは、他の学校までは手が回らない状況です。その結果、いまだに問題を抱えたまま飼育している学校があります。
 例えばえさの確保については、購入もありますが、給食の残り野菜、スーパーで野菜くずをもらう、給食室から出た野菜くず、家から持ち寄ったくず野菜、八百屋から野菜くずをもらってくる、地域の人からの提供や残りのパンなどで賄っています。
 数をふやさない工夫としては、特にしていない、雄と雌を分けている、雌だけを残している、去勢している、卵を当番が持ち帰ったりしているようです。
 病気やけがの対応は、動物病院へ連れていく、けがをしているときは消毒する、そっとしておく、別室に取り出す、獣医に診てもらうなどとなっております。


 お伺いしますが、えさの確保や病気・けがへの対応など不十分な状態ではないでしょうか。獣医師がボランティアで活動しているものの、学校における小動物の管理状況は、今まで放置されてきたと言えます。この実態をどのように認識しているのか、お聞かせをください。


 平成16年に山口、大分、京都で79年ぶりに鳥インフルエンザの感染が確認されました。東南アジアでは人への感染で死者も多数出ました。日本では、鳥インフルエンザの感染が報道されたとき、学校の鶏やチャボの飼育から子供を外したり、処分をしたり、関係者の混乱は避けられませんでした。鳥インフルエンザは渡り鳥や野鳥から感染することがわかっていますが、いざというときにどのような対応をしたらいいのか、あるいは学校で飼育している小動物が感染しないためにはどうしたらいいのかなど、ふだんの管理をしっかりとしておく必要があります。専門家の話では、学校で飼育している動物は閉鎖的な環境にいるので、鳥インフルエンザに感染する可能性は低いということですが、万が一という場合もあります。万全を期すにこしたことはありません。
 

 鳥インフルエンザと学校飼育動物、子供たちを感染から守るという観点からの管理についての認識をお聞かせください。

 

 平成12年に動物愛護センターから連絡を受けた尼崎市開業獣医師会は、内部に学校飼育動物委員会を設置しました。活動の目的は、尼崎市では小学校で動物が飼育されている。子供たちは動物のしぐさを見ることで動物に興味を持ち、その世話をすることで責任感が生まれてくる。また、動物の生や死を体験することで、命のとうとさ、大切さを学んでいく。しかし、身近に動物がいるにもかかわらず、その接し方や飼い方を知らないと、動物に対する関心が低下し、満足に世話できない状態から飼育小屋の環境が悪くなり、飼育者と動物の両者にとって不幸な事態に陥る。そこで、動物のプロフェッショナルである獣医師が学校飼育動物訪問活動を通じて、飼育方法のアドバイスや触れ合い活動を行い、子供たちによい環境を与えることにより社会に貢献するとしています。
 

 活動内容は、1つは、生徒への訪問指導です。ウサギやカメの寿命は何年ぐらいか。病気のときの見分け方とか、事前にもらった質問に答えた後、飼育小屋へ行き、ウサギの抱き方を教えて、実際に子供たちにウサギを抱いてもらい、ウサギの心音、鶏の心音、また自分の心音と比較したりして、心音の速さなどについての説明をしています。

 2つ目は、教職員に対する学校飼育動物の飼い方講習会の実施です。学校飼育動物訪問活動の趣旨を説明した後、意見交換をし、その中では、動物の世話をきちんとするのは当然のことであり専門家の助けが必要だ。専門家のアドバイスはありがたいなどの意見が学校側から出されています。
 川崎市や千葉市を初め、神戸市、新潟市、松山市など全国で飼育支援のために、自治体と地元の獣医師会が連携している都市があります。さいたま市においては、市立小学校、幼稚園、特別支援学校、計103校を対象に年1回、学校飼育動物担当者会議を開催し、飼育担当者の飼育に関する力量の向上を図るために、専門家による講演会、グループ別飼育相談を実施しています。また、獣医師と指導主事がチームを組んで学校を巡回し、アドバイスや治療を行っています。さらに、学校が獣医師に日常的に相談を行い、無料で診療、治療を行っているようです。

 そこでお伺いしますが、学校における動物の飼育については、教育面からの位置づけが明確である中で、その管理に関しては、動物愛護センターを通じて学校から相談を受けた獣医師会がボランティアで学校訪問をして管理をしていることに甘えている状況です。この際、

 獣医師会としっかり連携をとり、きちんとした管理をしていく必要があると考えますがいかがでしょうか、お答えください。


◎教育長(保田薫君) 学校飼育動物の管理についての御質問にお答えいたします。
 まず、小学校で小動物を飼う理由と教育的位置づけはどうなのかという御質問でございます。
 児童を取り巻く自然環境や社会環境の変化によって、日常生活の中で自然や命と触れ合い、かかわり合う機会が乏しくなってきております。このような現状を踏まえ、生物への親しみを持ち、命のつながりや命のとうとさを実感するために継続的な飼育を行うことは、大変大きな意義があるというふうに考えております。

 教育的位置づけといたしましては、平成15年4月には、文部科学省から「学校における望ましい動物飼育のあり方」という冊子が発行されまして、平成20年3月に学習指導要領の告示がございました。これらを受けまして、市内の小学校では現在小動物の飼育を行っております。
 次に、えさの確保や病気・けがへの対応などの現状をどのように認識しているのかというお尋ねでございます。

 小動物の飼育につきましては、高病原性鳥インフルエンザに関する正しい知識や、学校・園の池等におけるコイヘルペスウイルス病発生への対応についてなど飼育に関しての注意事項等について、機会あるごとに教育委員会から各学校に周知をしてまいりました。
 実際の飼育は、学校ごとにえさの確保や数をふやさない飼育の仕方、けがをしにくい飼育環境等を創意工夫しております。その一方で、幾つかの学校では、専門家である獣医師の指導を受け、飼育小屋の管理や運営についても地域の人々の参画も含めて、多くのヒントや改善方法をアドバイスしていただく中で行ってまいりました。今後もこの認識を踏まえ、適切な飼育を進めてまいります。
 次に、鳥インフルエンザと学校飼育動物、子供たちを感染から守るという観点からの管理についての認識についてはどうかという御質問でございます。

 高病原性鳥インフルエンザや学校飼育動物の防疫対策の徹底につきましては、平成18年度に文部科学省から、死んだ野鳥への対応や飼育動物に関する対策等についてという通知がございまして、その内容を周知することで、各学校等で対応しているところでございます。その内容といたしましては、子供たちを感染から守るという観点といたしまして、1つ、野鳥にはなるべく近づかないこと。また、近づいた場合には、手をきちんと洗い、うがいをすること。さらに、死んだ野鳥を発見した場合には、手で触れず、学校や教育委員会または保健所等に連絡するといったようなことでございます。
 また、飼育動物の適切な管理といたしまして、鳥や動物を飼育している場合には、それが野鳥と接触しないようにすることが重要でありまして、そのため、放し飼いは行わないようにするとともに、野鳥の侵入やふん尿の落下などを防止するため、飼育施設に屋根を設ける等、適切な処置を講じることといったものでございます。こうした取り組みを実施するとともに、今後は飼育動物の衛生管理や子供たちが安心・安全に学校生活を過ごすことができる環境づくりのため、獣医師会と協議の場を持ってまいりたいと考えております。

 次に、動物飼育について獣医師会と連携をとり、きちんとした管理をしていく必要があると考えるがどうかというお尋ねでございます。
 学校において動物を飼育することは豊かな人間性の育成に資する一方、不適切な飼育が行われた場合、教育的な効果や児童の安全の確保、さらには動物愛護の観点からも問題が生じる可能性がございます。そこで、これまでも獣医師の方々には、動物の飼い方の指導やけがの治療、あるいは教員への研修など、さまざまな形で御協力をいただいてまいりました。今後、飼育動物の適正な飼育や管理を行うには、学校はもとより、保護者や地域の協力を得ながら、効果的で適切な動物の飼育に努めてまいりたいと考えております。特に、飼育動物の衛生管理や疾病などの対応につきましては、それぞれの学校が獣医師会の指導や協力を得られるような体制づくりを進めてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。

第2問目
 学校飼育動物の管理について、引き続き質問をしていきます。
 活動している9校については、獣医師の皆さんがボランティア活動をして、全額無償で治療や去勢などを行っております。その他の学校については、初診料を無料にするとか、あるいは全額無料にするとか、地元の獣医師の判断に任せています。しかし、学校の先生が自腹で治療費を払うということになると、結局は見るに見かねて無料にしている場合が多いと聞いています。しかし、獣医師がボランティアで活動をしている9校以外では、動物たちが人知れず死んでいるのです。予算もない、何もない現場で先生たちが苦労をしてやっております。教育長は本当にこの現場の実態を御存じなんでしょうか。お答えください。
 

 学校で飼われている動物は、文房具のような道具ではありません。生き物です。生き物として扱うためには、えさの購入や治療や手術の費用などをきちんと確保すべきです。

 

 平成14年に環境省は、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準を告示しました。その中で、学校、福祉施設等における飼養及び保管では、管理者は、動物の飼養及び保管が獣医師等、十分な知識と飼養経験を有する者の指導のもとに行われるように努め云々とあり、努力義務が加わったことで、全国的にも教育委員会と獣医師会とが委託契約をして学校飼育動物の管理をしていく方向になっています。
 西宮市では、市と獣医師会が契約して、教育委員会がバックアップしています。明石市においては、2年間のボランティア活動の後、3年目に予算をつけて獣医師会に動物の管理を委託し、しっかりとした管理を行っています。

 本市も学校飼育動物の管理については、必要な予算をとり専門家に委託して、動物を飼ったり、植物を育てたりして、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関心を持ち、また、それらは生命を持っていることや成長していることに気づき、生き物への親しみを持ち、大切にすることができるようにするという小学校学習指導要領に沿った教育をしていくのが努めであると思いますが、いかがでしょうか。

 全国学校飼育動物研究会の中川美穂子氏は、5歳児が初めて抱いたウサギのスイッチを探したとか、小学校6年生の子供がウサギは卵で生まれるのかと質問したり、佐世保で起きた小学生による殺人事件で、加害者が被害者に会ったら謝りたいと話したことに生命感の未熟さに驚かされたと報告しています。また、車の中に子供を置き去りにしてパチンコに興じていて熱中症で死なせたり、オートバイの座席の中に1歳の子を入れて窒息死させたり、生命を軽視したさまざまな事件に対応するための生命感や、相手を大事にする愛情や愛着度の感性を養う教育努力は行われたものの、言葉ではだめで、体験が必要であると述べています。

 現代社会では、毎日のように殺人事件が報じられる一方、木の上に取り残された猫を、あるいは下水道に入り込んだ犬を救出するために、警察官や消防署員など多くの人々が出動して救出をするニュースも報じられます。救出した瞬間に大きな拍手や歓声が上がります。犬や猫の命を救ったという行為ですが、それは私たち人間の生命に対する尊厳の表現ではないかと思います。人間も動物です。小さいときから動物に接し、生き物のぬくもりや鼓動に触れることにより、生命の大切さを自身の生命に吹き込んでおく教育が不可欠です。そのための環境をしっかりと整えるのが大人の役割です。そして、その大人の役割を担っているのが学校であり、教師であり、それをバックアップするのが教育委員会であります。やるべきことをやる、なすべきことをなす、そのような対応を望みます。

◎教育長(保田薫君) 学校現場での動物飼育の実態を教育長は知っているのかというお尋ねでございます。
 学校現場での動物飼育につきましては、えさの確保の方法、数がふえない工夫、病気やけがの対応、飼育小屋の掃除等についてアンケート調査を実施し、実態把握に努めております。
 調査の結果からほとんどの学校・園において、何らかの動物を飼育していること、えさは購入したり、地域の人々の協力や給食の残り野菜で確保していること、病気やけがの対応については、動物病院を利用したり獣医師にお世話になっていることなどが明らかになっております。このような実態から、今後の対応について検討してまいりたいと考えております。
 次に、学習飼育動物の管理について、小学校学習指導要領に沿った教育をしていくのが努めと思うがどうかという御質問でございます。
 新学習指導要領では、特に継続的な飼育を行うことを強調しております。これは、自然事象に接する機会が乏しくなっていることや、生命のとうとさを実感する体験が非常に少なくなっているという現状を踏まえたものでございます。このような動物の飼育に当たっては、管理や繁殖、施設や環境などについて配慮する必要があり、その際には、獣医師や専門的な知識を持った地域の人々などと連携して、よりよい体験を与える環境を整える必要があると考えております。
 教育委員会といたしましても、今後ともこの学習指導要領に沿った教育実践に努力を傾けてまいりたいと考えております。
 以上でございます。