「Kちゃんの顔面神経麻痺、すっかり良くなったらしいよ」

「あーそう、それは良かったね」

「良かったよーほんと。MRI撮ったけど脳が原因ではなかったみたいだね。お薬とサプリで落ち着いたみたい」

「まあ、だいたいがストレスが原因だからねぇ」

「そういえば富山にいる友達も顔面神経麻痺になって、何年か前にこっちの病院で手術受けてたな……入院中お見舞い行ったんだよねぇ」

「そーなん」

「なんか、権威の先生がいるとかで。どこの病院だったかなぁ……慈恵医大だっけ? 忘れちゃったわ」

「フーン」

「もしさぁ、私が顔面神経麻痺とかなったら……どうする?」

「どうするもこうするも……別にどうもしないけど」

「えぇ?」

「治療を頑張るのはあなたなんだから、俺が頑張れ頑張れって言ったところでねぇ?」

「治療は頑張るよ」

「どこの病院が良いとか調べるくらいは出来るけど? で、あんたは治療を一生懸命頑張る」

「そりゃあ、もちろん」




いや、聞きたいのはそうじゃなくてさ……




顔が歪んで崩れたら、もう見たくないとか、別れたいとか、一緒に歩きたくないとか、そういうのを知りたいのよ。




「ほら……顔が半分麻痺するとかって聞くじゃない? 口が閉じれなくてお水が飲めなかったり……だばーってこぼしちゃうとか」

「まあそうなるわな」

「そんで……半分だけ顔が歪むと、こう、崩れたりするじゃん……見た目が」

「大丈夫大丈夫、見ないから(笑)」

「はぁ? 見ろやぁ!! ガン見しとけや」

「見るときはぼんやり見えるようにフィルターかけとく。あ、メガネ外しときゃいいのか(笑)」

「ふざけんなー」




そのあと、○さんとねぇねと合流。




「さっきのあれ、○さんたちにも聞いてみなぁ?」




彼がそういうので、経緯を説明してみた。




「……って言われても、別にどうもしないよね?」

「うん、どうもしない」

「今の話は【あんたが顔面神経麻痺になった】っていう前提の話でしょ?俺じゃなくて」

「まあ……そうね」

「だったら、俺がワタワタしたところでどうしょもないよねってことだよ。そうでしょ? 『大丈夫でちゅかぁー?頑張れよぉー』ってわしゃわしゃしてもらいたいの?」

「やめろー」

「で、なんでそんな話してたの?」

「知り合いが顔面神経麻痺になったって話でさ……もし私の顔が歪んだら嫌になるかなぁと思って」

「関係ない関係ない、どうせ顔なんか見ないから(笑) あんたは黙って治療に専念しなさいよって話だよ」

「ま、要するに、今となんも変わんないってことだね」

「そーゆーことかぁ」

「そーゆーことだね」




遠回しに彼の本心を探ろうとして、そんな話をした。




わりと最近のこと。




少なくとも、見た目が変わったからとかでは、別れを選ぶ理由にはならないのだろうとは思った。









昨年贈ったヘンリーネックの甚平
父に好評だったようだ
今年もヘンリーネックにしよう