彼が帰ってきたのは2時過ぎだった。
「ただいま」
お気に入りのアロハを着ている。
「おかえり、どこ行ってたの?」
「どこにも」
「え?」
「会社」
「なんで?」
「修理」
「祭りは?」
「明日だよ」
「病院のあと祭り行くって言ってたじゃん、昨日(…というか当日の午前3時に)」
「病院終わってからだと間に合わないって言うから、じゃあ日曜日ってなったの」
「途中からじゃダメなんだ」
「ルートがあるでしょ、お神輿の」
「フーン。なるほどね」
ということは、祭りの参加は日曜日ということは、元から決まっていたんだろうね。
病院の予約は一ヶ月前から決まっていたし、先週タケさんから直接法被を借りている。
朝10時過ぎに家を出たときには、ハナからその法被を持たずに出かけていた。
病院のあと祭りに行くなど、元々予定じゃなかったんだろう。
なのに昨日(というか今朝3時)、病院のあと祭りに行くと、嘘を言った。
一体なんのために、そんな嘘をいう必要があるのか。
もともと小さいことから嘘つくことは多いし、私の目の前で友達に話しているときなども「それ嘘つく必要ある?」と疑問に思うような無意味な嘘もある。
なにかをごまかすため、というのは間違いない。
「こないだ届いた仕事してたの?」
「違うよ、仕事じゃないよ。雨どいにゴミが詰まって水がポタポタ垂れるから、その修理だよ」
「そう……大変だね」
こんな夜中までか?
そう思ったけど言わずにおいた。
「今日は楽しかった?」
今度は彼が聞いてきた。
私のことに一切関心を持たない(自分から聞いてくることはない)彼が、自分の方から話を振ってくるなんて、これもまた珍しいこと。
だから、今日の話をあれこれ楽しく語った。
「よかったネー」
リビングに下りてからも、うめに向かって「楽しかったんだって、よかったネー」なんて言っていた。
そしてふと違和感を感じた。
雨どいにゴミが詰まって……って、前にも全く同じ話を聞いた記憶がある。
もちろん、掃除してもまた枯葉などが溜まって詰まることもあるだろう。
全てが嘘とは言えないけど、いろいろとモヤモヤが残る。
だけどなんとなく、悪いことして嘘ついてるというよりは、もっと違う種類の嘘な気がするけど。