彼が帰ってきた。
言ってた通り、11時過ぎに帰ってきた。
「おー、ただいま」
「おかえりー」
「はー疲れた」
「楽しかった?」
「いやぁ…疲れたよ」
「負けたの?」
「勝ったよ」
「勝ったなら楽しいじゃん」
「今日ビジターだから」
「あぁ……だと喜べないかぁ」
好きな野球に行ったのに、珍しく疲れた疲れたと言った。
友達とはいえ今日は巨人ファンに囲まれて気を遣ったのかな。
本音がポロリと出たのかもしれない。
「おみやはー?」
「ねーよ。出るときないって言ったじゃん」
「ちぇー。期待してたのにぃ」
「ありません〜」
「終わってから飲みに行かなかったんだね」
「(合流が)早かったから。試合も長かったし、明日は月曜日だしね」
「そっか。今日さぁ、ヘルペス出ちゃったんだ。最近体調良くなかったけど抵抗力落ちてるみたい」
「あら、風邪かね?」
「そうかも。お薬塗り塗りしてるよ」
「うん」
「なんか食べたの? お腹空いてる?」
「んー。食べてない…」
「あら…なんもないよ」
「大丈夫、いっぱい飲んだから」
「そう? じゃあこれでも食べて、ポテチ」
ハイッとポテトの筒を渡す。
「入ってねーじゃねーか」
「少し入ってるよ、2~3枚(笑) ポテトとひまわり食べてね」
これ、ココナツ味で意外と美味しい。
「ヘルペス出てるし私はもう寝るけど……」
「おー、早く寝な」
「なにか食べなよ」
「うん、おなか空いたらね」
今日はなんだかいつもと違う感じがした。
言い回しが柔らかいというか。
今日のメンバーだと気を抜けなくて、やっと帰宅してホッと力が抜けたのかもしれない。
友人として付き合っていても、誰にでも心底気を許せるというわけではないんだろうな。
今度の土曜日、出かけること黙っていようかと考えたけど、やっぱり伝えておくことにした。
出かける予定を知らされずに、何時に帰るかもわからずに、モヤモヤすればいいと思ったけど。
どうせ彼のことだから、たとえ心配しても連絡してこないだろうし何も言わないだろう。
でも、不安にさせるかもしれないと思うとさすがに良心が咎めた。