【PITY ある不幸な男】という映画を観た。





妻が事故で昏睡状態になり、嘆き悲しむとある弁護士。





周囲の人々は、同情から皆親切にしてくれるようになる。





そして嘆き悲しむ不幸な自分に「幸せ」を見出してしまった彼は、妻の意識が戻ったことで壊れていく。





ストーリーは淡々と流れ、淡々とした中に主人公の異常性が滲み出てくる。





どうすれば泣けるのか、催涙ガスを使って波を流してみたり。





自分を悲しませるために、だんだんとエスカレートしていく。





最後のシーンで主人公は、ようやく彼の望み通り、一人号泣していた。





「よかったねー」





彼がつぶやいた。





「え。泣けてよかったってこと?」


「そう」


「この人は自分が泣くために色々してきたってこと?」


「そうだよ、だから最後に泣けてよかったんじゃない」





でもその「よかった」には皮肉がたっぷりと込められている。





確かに主人公の望みは叶ったのかもしれない。





だけど救いのないラストシーンだから。





人には決して弱みを見せない、涙も見せない彼。





彼が泣いたところを見たことがないし、今後なにかあっても、私には決して見せないだろう。





だけど彼にも「泣きたい」と思う瞬間があるのかもしれない。





もし彼が泣くことがあるとしたら、どんなときなんだろう。





「私が死んだら泣く?」


「うん」





えっ?





「え、泣くの?」


「あっ……うーんどうかなあー。泣く……と思うよー」





急にニヤニヤした。





うっかり「うん」って言っちゃったもんだから、ごまかそうとしている。





「ちょっとぉ、そんなに嬉しそうにしないでくれる」





そのごまかしに合わせて、私も頬をふくらませて、わざと怒るフリをした。