さて、景品引き換え会場に着き(しょぼい)キーホルダーをもらった。
「ま、良いんじゃなーい(苦笑)」
「これのために二時間頑張りましたよ…^^;」
「いいんだよ、景品が目的じゃないんだから」
「歴史の勉強にもなったもんね」
「ちゃんと勉強出来たのかよ〜」
「出来たよー。あんまり覚えてないけど、東海道五十三次の道とか?」
彼はこういったスタンプラリーが大好きで、コロナ前はJRの駅を回ってスタンプを集めるラリーに毎年参加していて、私も一緒に着いて回った。
多分、集める行為そのものだったり、そこに至るまでの過程が好きなんだろうなと思った。
「さて、どうしようか」
「どうしようねー。夕食はどうする?家でカレー食べる?(昨日の残りの)」
「なんでもいーよー」
「じゃあ、その辺の商店街でトッピング買って帰ろうか。とんかつとか」
「お、いいね。そうするかー」
商店街目指してブラブラ歩き、途中見つけたお肉屋さんを覗いた。
「とんかつないねー」
「終わっちゃってんのかね」
「生(の肉)しかないねー」
「生だけだね」
「ハンバーグがあるよ」
「ハンバーグ?」
「生だけど」
「生だねー。あ、貼り紙してある。揚げ物は17時までだってよ」
「あら残念。ちょっと遅かったか。ハンバーグ焼いて乗せるのも手だけどどうする?」
「うーん。もうちょっと探すか」
少し歩いて商店街に出た。
ブラブラ店先を眺めながらゆっくり歩き、途中ペットショップで子猫を眺めたりした。
「みんなかわいい〜どの子連れて帰る?」
「じゃあー、あの奥の右の子」
「はぁー?」
「あの奥の子がいいなぁ俺は」
「はぁ? 人間じゃねーかふざけんな💢」
「ははは」
「まーあれだ。お店で猫買うくらいなら私は捨てられてる子を拾いたいわ」
「いらないいらない」
「全ての捨てられてる子を救いたいわ」
「いやぁ…いらないいらない」
「ンもぉ…わかってるよぉー」
彼がパン屋さんに吸い寄せられて、パンををいくつか買った。
「どれがいーの?」
「クリームパンとつぶあん」
「クリームパンとー、つぶあんと、ピスタチオと…こしあんください」
「あ、もう一個いい?」
「どれ?」
「りんご」
「りんご?ってどれよ」
「これー」
「すんませーん。あと、このりんごとぉ…クルミください」
「袋どうしますかぁ」
「袋あんの?」
「あったかなぁ……あ、あったあった。袋ありますー」
パン屋さんの後ろにさぼてんがあった。
「さぼてんでとんかつ買う?」
「どれー。うーん……なかなかだね」
「単品でもなかなかだね…」
「お弁当の方が割安かもね」
「いっそお弁当買ってカレーかけるのもアリ…」
「うーん…もうちょい探してみよう」
駅の方まで行くと、彼の好きなオシャレな輸入冷凍食品のお店があった。
彼は迷わず入って行き、冷凍庫を覗き込む。
「うーん。基本フレンチなんだよなー」
「だねー」
「乗っけられそうなものは見当たらないねー」
「カレーに乗せるようなものではないね。これだけで料理が完成されてる」
「そうなんだよ」
「あえて言うなら、このチキンカツレツくらいかな…」
「うーん…いや、違うね、カレーではない」
「しょうがないなー。じゃああのソフトクリーム食べてから帰ろうか」
「なんでだよ」
「おなかすいてんの。糖を欲してんのよ体が」
「乗せられそうなものはなかったってことで帰るよ〜残念でした」
「ちぇー」
「あ、そうだ。○○まで行ったらどうせ乗り換えで降りるからそこで買い物するかぁ」
そんな感じで乗り換え駅のイトーヨーカドーで買い物した。
スーパーのお惣菜など買ったことがなかったけど、30%引のメンチカツと牛肉コロッケ、それとコールスローサラダを買った。
一緒に買い物しても彼は出来合いのものは決して選択肢に入れなかったし、カット野菜や【○○の素】みたいなものも避けていた。(添加物とかを気にしていた)
料理に手を抜くのを嫌い、キチンと調味料を調合して味付けしないと受けつけない人なのだと思っていた。
だから私は調味料を色々と取り揃えた。
そういう彼の姿勢は、もしかしたら私の前で気を抜かない手を抜かないという姿勢の現れだったのかもしれない。
一緒に暮らして5年が過ぎた。
私の前でようやくある種の緊張を解いてきたと感じた。
見切り品の安いお惣菜を一緒に買い物して、また同じ家に帰る。
飾らないカッコつけない、そんな関係になれたのかな。