美容院が終わって一旦帰宅すると彼がいた。
ちょうど家を出るタイミングで身支度中のようだった。
「あ、おかえり」
「ただいま」
「……」
彼は一瞬目を見開き、驚いたような顔をしたが何も言わない。
「ほらほらー。なんか違うって気づくでしょ?」
「何が?」
「見てほら。切ったの」
「あぁ、そう」
「ほら、なくなったでしょ」
刈り上げた襟足を見せつけるも、なんも反応なし。
「切った髪持ってきたんだよ。寄付するの」
「ふーん」
「ほらコレ。NPOに送るんだよ」
「へー」
はぁ……全くつまらない。
それ以上喋る気にもならない。
「じゃあねー行ってくるよ」
「……いってらっしゃい」
どうせそんな反応だろうとわかってた。
わかってたけど、本当につまらない。
その後、Mさんと映画&食事デート。
Mさんは待ち合わせ場所で私を見つけられなかったと言い、かなりの短さに驚いていた。
「うそ、いつの間に切ったの? 全くイメージ違うじゃん!! イヤでも悪い意味じゃなくて、うん、似合ってるよ」
映画が終わって食事中も、今までとイメージ違いすぎる!! なんか変な感じする!!……と何度も言っていた。
普通はこうでしょ。
なのにあの男は……
まるで、いついかなる時も平静を保つのが美学とでも思っているかのよう。
似合うのひとことまでは期待してない。
けど、「髪切ったんだね」のひとことくらいはあってもいいのではないかと思う。
持ち帰った髪の重さを計ってみた。
意外と軽かった……
健康診断前日にカットしても
全く体重が変わらないのも納得。