年が明けて、例年の初詣に出かけた。
「今年はふたりだけだから自転車でチャチャッと回るか」
彼がそう提案した。
彼の中でも当たり前のように、ふたり一緒にお参りに行くと思っているんだと嬉しくなった。
毎年の流れで、近場の神社を3つ回った。
一軒めは比較的空いていて、10分ほど並んで参拝できた。
お神酒とおしるこの振る舞いをいただいて、お腹いっぱいになった。
二軒めはあまりに行列が長いのでもう一軒を先に行くことにした。
こちらもかなり混んでいて一時間ほど並んだ。
参拝を終えたころには午前二時を回っていて、この時間になるとさすがにだいぶ冷えてきた。
彼が無言で手袋を差し出してきた。
いつだったか、彼へのプレゼントに選んだ、イタリアレザーとカシミヤの手袋。
「使ってくれてるんだ」
「大して使ってないよ、キレイなもんよ」
そうは言いつつも、柔らかく馴染んだ革はそれなりの使用感があった。
手袋は暖かかった。
「いいな、私も革の手袋欲しいなぁ」
「それ使えば」
「ダメだよ、これはあなたのじゃないの」
彼の手袋は、走る自転車で正面から受ける冷たい風から、優しくじんわりと守ってくれた。
心もじんわりあたたかくなった。
先ほど諦めた二軒めに再びたどり着いたのは、既に午前三時。
この時間になるとさすがに空いていた。
ここが氏神様になるため、彼はここで破魔矢を買い、私はおみくじを引いた。
帰宅後は、邪魔だから早く寝ろ寝ろと急かしながら、鍋にチョコレートを溶かしてホットチョコレートを作ってくれた。
そしてようやく、今年もよろしくねと言い合った。
なんだかいつもより優しい彼と、穏やかな2024年の始まり。