AパイセンからグループLINEでお誘いがあった。
みんなでカレーのテイクアウトを持ち寄って、カレーパーティーしようって。
彼の面談が終わると、Yちゃんとランチに行った。
Yちゃんは一旦会社に戻って、後でパイセンのお店で合流することになった。
カレーをテイクアウトするため、彼と二人でお店を探した。
ちょうどランチタイムが終わった時間。休憩中のお店ばかりで何軒か回ることになった。
開いているお店を見つけ、ケバブとナンドッグのテイクアウトを頼んだ。
「……ごめんね、さっき」
店内に流れるBGMに合わせて、彼はおどけて踊った。
私を笑わせようとしてるの?
「どうしたら、なにも気にしないでいられるようになるんだろう……」
不安になんてなりたくない……
何も心配しないでいられたらいいのに。
いつだって、彼を困らせたいわけじゃない。
傷つくのが怖いだけ。
彼は私の頭にポンッと手を乗せ、力強く、ぐりぐりなで回した。
その手は乱暴で、だけどとても優しくて、私の不安定な感情も、罪悪感も、全て受け止められていると感じた。
手のひらから伝わる温かさに、私の目には涙が溜まっていった。
私は彼を見つめ、彼は私を見つめていた。
テイクアウトの料理はすぐに出てきた。
「私が払うよ」
「いいよいいよ。次の時に」
彼がお会計をしてくれた。
お店を出ると彼の携帯が鳴った。
「Uさんからだ」
そう言って電話に出た。
明日の野球の話をしていた。
その内容から推測するに、Uさんが20時まで仕事になって行けなくなり、そのチケットを譲ってもらったようだった。
ともちゃんのチケットというのは本当らしい。
もう一人のメンバーが誰なのかはわからないけど……
「行って来てもいいですか?って聞いた〜」
そう私の前で話して、安心させようとしている。
今回は嘘じゃなかったかもしれないけど、これからもずっと嘘をつかないかどうかはわからない……
やっぱり私は嫌なやつだ。
それからもう一軒寄って、カレーをテイクアウトした。
「……(疑ってしまって)私のこと嫌いになる?」
「……いいや? イラッとはするけどね(笑)」
「それは……知ってる」
彼は片方の眉を上げて、ニヤッと笑った。
「ごめんね。いつになったら、傷が癒えるんだろうね……」
「何回こんなことを繰り返しても、きっと傷は癒えないんじゃないかな」
「そう……かもね」
「だからさ、モヤモヤしながらでもいいよ」
「ちょっとずつ慣れるしかないのかもしれないね」
「モヤモヤするのは仕方がないんだから、なるべく揉めないで済む方法を考えたらいいと思うよ」
「(浮気を)終わらせたって証拠は、見せられないって言ってたもんね」
「そうね」
「明日は楽しんできて。私は靴下でも買いに行ってこようかなぁ。寒くなってきたし暖かいの買おうと思ってたんだよね」
「いっといでー」
「明日はごはん家で食べないでしょ」
「終わる時間次第かなぁ〜? 遅ければそのまま帰ってくるよ。早く終わればヒデさんのとこに行くかもしれないけど…」
「じゃ、彼くんがいないのをいいことに、一人でのんびり鬼滅観ようっと」
「そうしなー」
「私一人で寂しいけど、一人で泣きながら観るよ」
「寂しくないよ。猫たちもいるでしょ」
「猫たちは別でしょ。猫たちがいたって、私は寂しいの」
彼の腕にギュッとしがみついた。
「………だから、来週は一緒に過ごして」
「うん」
Aパイセンのお店に着いた。