いつもの通勤路に桜が咲きました。
曇り空だというのにみんな足を止めて見上げます。
「きれいだね。」
ついこないだまで誰もここで足を止めたりしなかったのに。
ここに木があることさえ気づきはしなかったのに。
きっと人間にだって同じなんです。
みんないつだって美しい花が好きなんです。
だからわたしは花を咲かせようと必死になってしまうのかもしれません。
足を止めて欲しくて。
少しでも見ていて欲しくて。
「きれいだね」と言って欲しくて。
それでも無情にも季節は巡り、花はいつしか風に朽ちていってしまいます。
そしてみんな花が咲いていたことさえ忘れていくのです。
だけど、
だからこそ、
見ていて欲しかったんです。
枯れたからだで震える日も。
雨に蕾を濡らす日も。
腐った枝を落とす日も。
見ていて欲しかったんです。
たとえ世界中が忘れても。
キミだけには。
