「自分の人生は自分で決めるんだ」と初めて真剣に決意した話(中編)
接客カウンセラーおくです、
ぼくはよく、こんなことを聞かれます。
「おくさんは、10年以上も勤めたホテルをどうして辞めたんですか?」
「やっぱり夢や理想を追い求めて?」
「すごい勇気ですよね。私には一歩が怖くて・・・」
10年以上の経験をつんだホテルをどんな想いで「去る」ことにしたのか。
知りたいですか?
それは、もちろん、
・自分をさらに成長させるため
・夢をかなえていくため
・より高みをめざすため
、、、、、と、言いたいところですが、実はこれまでほとんど語ったことがなかった、ある「超、かっちょわるい理由」があります。
「自分の人生は自分で決めるんだ」と初めて真剣に決意した話(前編)の続きです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ラウンジ&バーに異動して、ぼくは失敗をくりかえしながら、ようやく一員になれてきました。
ひとって、変われるんだね。
なんてことも、ちょっぴり思っていました。
仕事ってこんなに楽しかったんだ。
接客業ってけっこういいんじゃないかな。
チームでがんばるっていいな。
そんなことに気づきはじめていたある日。
ぼくはラウンジのソファに深く腰かけて、「ふぅ~~~・・・」と、ため息とも深呼吸ともとれない深い息をつきました。
(そういや最近、自分のことちゃんとゆっくり考えてなかったな・・・)
脳裏にあの言葉がよぎります。
「ばかやろう!!!」
「ずっとそうしてぬるま湯か?」
バーでお客さまから言っていただいた言葉。
もうあの出来事から数ヶ月が経ったというのに、なぜ、頭から離れないんだろう。
ムカついたから??
反論したかった?
言われたくなかった?
触れてほしくなかった?
同期たちは、どんどんアシスタントマネージャーに昇進して、ぼくは置いていかれている気がしてた。
同期たちは、どんどん他のホテルに移って活躍していて、ぼくは差をつけられている気がしてた。
同期たちは、将来のビジョンをもってがんばっていて、ぼくはそれが見えくて焦っていた。
(なにやってんだろう・・・このままでいいのかな?)
このホテルに入社してもうすぐ10年。
この先、どうするのか、相変わらず、見つからずにいた。
ぼくはこのときから、自分の「人生」について深く考えはじめましたが、
答えが出ない。将来どうしたいの?
だから・・・
まずは「ある結論」から、先に決めることにしました。
それは、
(10年を区切りにしよう)
それだけでした。
これはもう、お客さまからのバカヤロウが悔しくて仕方なかったんです。
けれど、じゃあ何をしたいのか?
ちっとも見えてはこない。
夢がないって、なんて情けないんだろう・・・
そう考えているうちにだんだんと、ぼくの中の“あくま”と“てんし”がささやき始めました。
これはぼくも、予想外でした。
「おいおい、ちょっと待て。お前さ、結構がんばってきたじゃん?同期のあいつだけでなく、後輩のあいつもこの前、アシスタントマネージャーに昇進したよね。悔しくない?なんか納得できなくない?」
「いや、でも他人は他人でしょ。気にしなくていいって」
「でももしかしたら、ちゃんと評価されてないんじゃない?なんでお前はいつまで経っても、バトラーやっても、昇進できないの?なんだかんだ言って気になってるんじゃない?」
「だからさ、そういうこと言ってたって仕方ないじゃんか!そういう問題じゃない。なに急に言ってるんだよ。昇進とかどうでもいい」
「ほんとに?納得できんの?」
「するしかないでしょ」
「なにそれ。妥協?」
「ちがうよ!無い無い言ってても仕方ないってこと。評価され“ない”じゃなくて、こんなに素晴らしい環境と仲間と舞台が“ある”じゃないか。だいたいさ、評価されないんじゃなく、努力が足りないんだよ。」
「ふーん。でも、評価されて“ない”って思ってるでしょ」
「・・・・・・そんなこと・・・」
「今までほんとは、周りとの比較、してたでしょ。だんだん、気になってきてたでしょ。最初は自分に自信がなかったけど、それなりにがんばってきて、そろそろ今度は評価してもらいたいな、ってさ。」
「・・・くだらない。自分は自分だよ・・・」
こうして、あらためて今まで自分がやってきたことやこれからのことを考えているうちに、予想外な自分の思いに気づき始めてきました。
恵まれた環境で働かせてもらって、ありがたいチャンスもたくさんもらえて、
「感謝×100!!!」
って思ってた。
のに・・・・・・
(もっと評価されたい)
(もっと認められたい)
そんな願望が、ふつふつと、ぼくの心のなかでくすぶっていたことに、気づきはじめてしまった。
もう、こうなると、「ない」にどんどんきもちが傾きます。
アタマではわかってたんです。
「そんなに無いことに不満言ってても仕方ない」
「評価されないのは努力が足りないからだ」
でも、どうしても、ぞうふくしていくこのきもちを抑えられなくなっていきました。
こうなると、まいにち、葛藤がおこります。
他人の手柄をうらやむ気持ちになったり、妬むきもちがぶわーって広がったり、足りないものへの不平不満がわいてきたり・・・
なさけない・・・
自己嫌悪です。
かっこわるすぎます。
器がちいさすぎるし
ダサすぎて醜いです。
ハチャメチャです。
せっかくここまでがんばってきたのに
せっかくここまでやってきたのに
せっかくこんなに恵まれているのに
あれがない
これがない
あっちのほうがいいかも
「隣の芝生は青い」
なんていうけれど、もうこのときぼくは、完全にこの状態になったんです。
あとから思うと、これは夢が見つからない自分から逃げていたのかもしれません。
なんでもいいから何か行動するための理由を無意識に見つけたかったのかもしれません。
あくまとてんしがぼくの心の中で毎日毎日、討論していました。
あのお客様の「バカヤロウ」はこういう意味じゃないってこと、心の奥ではわかってた。
でも、このときのぼくはまだ、言葉の本質をちゃんと理解しきれていなかったんです。
そしてそんな状態でもまだ次の一歩を動けない自分に情けなくなりながら
ごまかして
ごまかして
ごまかして
毎日働いていたんだけど・・・
決断とも覚悟とも言えない、なんとも表現のしようのない、そんな答えがぼくのなかに芽生えてきたのです。
その後のぼくの人生が大きく変わっていく、ほんとにほんとに大きな思いが・・・
(もう。辞めよう・・・)
つづく
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━