カッサフォルテ犬猫コラム -135ページ目

慢性腎臓病10

ここまで慢性腎臓病の診断についてお話ししてきました。
では、慢性腎臓病と診断されたらどのような治療をするのでしょう?

前にもお話ししましたが、腎臓は壊れてしまうと治らない臓器です。
ですから、腎臓を「治す」治療ではなく、これ以上悪くなるのを遅らせたり、
腎臓の機能が落ちることによって起こる不具合を正したりといった治療です。
特効薬のようなものはありません。
これまでにお話ししたいろいろな検査項目を参考にして腎臓病の進行度をステージ分けし、
そのステージに応じた治療をしていきます。
例えば、血圧が高いようなら血圧を下げる治療を、
貧血があるなら貧血を改善するような治療を、といった具合です。

その中で推奨されている治療に療法食を与えることがあります。
腎臓病用の療法食は、腎臓にかかる負担を軽くするためにタンパク質や塩分を控えてあるため、
どうしても普通のフードに比べると美味しくないようですが、
ネコちゃんの場合、なんと余命が3~5倍に延びたというデータもあります。
何となく治療というイメージを持ちにくいかもしれませんが、
とても大事な治療の柱なんです。

病気が進行すると、脱水を防ぐために点滴が必要になったりもします。
薄いおしっこをたくさんして出て行く水分の方が多くなると脱水が起こります。
脱水があると腎臓にまたダメージを与えてしまうので防ぐ必要があるのです。

慢性腎臓病9

実は、腎臓病をもっと早期に診断できる検査が先月から日本でも利用できるようになりました。
SDMAという物質を測定する方法で、
腎臓の機能を示す指標であるGFRをかなり正確に反映するそうです。
特に難しい処置が必要なわけではなく、
採血して検査所に送って測定してもらうだけです。
もちろん、この検査だけで確定するわけではありませんが、
かなり早い段階の腎臓病を診断できます。
SDMAが上がり始めるのは腎臓の機能が40%低下した時点だそうです。
つまり、まだ腎臓の機能が60%残っている時点で診断可能ということですね。
尿比重が下がるよりも前に診断できるということです。
平均するとネコちゃんでクレアチニンが上がる17ヶ月前に、
ワンちゃんでは平均9.5ヶ月前にSDMAの上昇が見られるそうです。
ワンちゃんの方が短いのは、ワンちゃんの方が進行が速いせいです。

前にお話ししたように、腎臓は壊れてしまうと治りません。
壊れてしまうと悪くなる一方で進行を止めることはできません。
でも、早く気付いて手を打てば進行を遅くすることはできます。
もしかしたら、残り1年だった余命を3年、5年にすることができるかもしれません。
このSDMAはそのための強い武器と言えます。
慢性腎臓病が発症する年齢の平均はだいたい7歳ぐらいなので、
7歳を過ぎたワンちゃん、ネコちゃんはSDMAの測定をお勧めします。

慢性腎臓病8

腎臓が悪くなると尿タンパクが見られるようになることがあります。
本来ならばおしっこを作る過程でタンパクは再吸収されるので、
おしっこの中には出てきません。
腎臓が悪くなるとタンパクが吸収できなくなり、
おしっこの中にタンパクが出てしまうのです。
ですから、尿タンパクが出ていれば腎臓病を疑うきっかけになります。
しかし、膀胱炎があったりする場合にもタンパクが出るので、
尿タンパクが出たら腎臓病、だとは言えません。
また、尿タンパクはおしっこの濃さによっても数値が大きく変わってしまいます。
腎臓病で見られるような薄いおしっこをたくさんする状態では、
実際よりも尿タンパクが低く出てしまいます。
ですから、腎臓の機能を評価するためにはおしっこの濃縮度も考慮しなければなりません。
前に書いたようにおしっこの中にはクレアチニンという物質が排泄されます。
おしっこが薄ければおしっこの中のクレアチニンの数値も低くなります。
ですから、このクレアチニンと尿タンパクとの比を出すことでより正確に評価できます。
これをUPC(尿タンパククレアチニン比)といい、
腎臓の機能が落ちてくると、この数値が上がってきます。
特にワンちゃんの場合は今後の経過の見通しに大きく影響すると言われています。
ただ、上に書いたように膀胱炎があったり、
去勢していない男の子で精液が混じったりすると評価ができません。
これが難点ですね。