毎年恒例のIFPI(国際レコード産業連盟)が発表した世界レコード産業の売上実績を取り上げます。
2025年の世界レコード産業の売上は、パッケージ売上で前年比8.0%増となる53億ドル、ストリーミングによる売上は前年比7.7%増となる220億ドル、それにダウンロード売上8憶ドル、権利収入29億ドルと”シンクロ収入6億ドルを加えて、合計317億ドルと前年比6.4%増で依然好調に売上を伸ばしています。
ストリーミングサービスが市場を牽引していることに変わりはありませんが、中でもサブスクリプション型の有料ストリーミングは、世界売上全体の半分以上である52.4%を占めています。
国別で見ると4位にドイツを抜いて中国が浮上。加えてブラジルがカナダを抜いて8位に浮上しています。


世界1位のアメリカは+3.3%の増
世界2位の日本は+8.9%の増
世界3位のイギリスは+4.8%の増
世界4位のドイツは+1.7%の増
世界5位の中国は+20.1%の増
世界6位のフランスは+3.7%の増
世界7位の韓国は数値は見当たらないのですが、いまやK-POPはグッズ売上も含めた場合は従来の業界の常識を覆す規模となっており、産業規模を測定する視点を変えなければならないような事態をもたらしています。
世界8位のカナダは+5.6%増
世界9位のブラジルは+14.1%の増
世界10位のメキシコは+13.3%の増
ということで、いよいよ中国が4位に浮上してきました。
経済全体で観れば退潮ムードに向かう中国ですが、音楽市場は依然プラス成長を続けています。日本もバブルが弾けた後の方がむしろ音楽産業においてはピークを迎えていったわけで、経済全体よりも遅れて成長カーブを描く性質があるのかもしれません。
不動産による景気が後退し、雇用市場において締め出された若い人口が、不満のはけ口として即物的に発散消費する音楽のニーズが高まり、お金が流れ込んでいく、ということでしょうか。
昨年は前年比減となっていた日本はプラスに転じています。
国際的にみてもJ-POPは注目を集め始めており、日本政府もK-POPの事例に倣い、国家戦略の一つとして。世界第2位の市場規模という強みと、コンテンツの独自性を武器に、世界を相手とするビジネスにアップデートしてゆく機運が高まっています。音楽産業はエンタメ産業の中でも特に20代を中心にした若い世代が好むものなので、そうした世代にとって、世界に打って出るマインドが強くなっていくことは、特に円安で海外で成功した方が得なトレンドである現在は日本経済にとって好ましい傾向であると思います。
また、中国にとっても、経済が冷え込む中、中国はすでにGDPでは世界2位なので、音楽産業はまだ伸びしろが十分びある分野とみることができるでしょう。
産業が成熟し人件費が高くなれば、当然”世界の工場”としての位置づけは他の人件費が安い途上国に譲ることになり、別の分野で世界に足場をつくることが必要でしょう。
ただ、ハイテク分野は自動車分野はドイツ・日本には勝てないでしょうし、ハイテク分野は日本・台湾に勝てないでしょう。IT・AI分野は何とか中国が米国と競り合おうとしていますが、これはかつて日本がそうなってしまったように、デファクト・スタンダードを米国がライセンスで握ることで蹴落としてしまうでしょう。
資源分野であるレアアースは放射能汚染問題など継続的に世界の舞台に立ち続けるにはマイナスになる問題も多く、今後は産地で放射能汚染問題が基準値以下のものしかトレードできない、もしくはその基準値を超えない工業製品しか流通できない、という枠組みができて、日本産のものが放射性物質の基準値を満たすフェアトレードとして重宝され、その結果価格の高騰からレアアースの代替品開発も進んでいくという展開になっていくでしょう。
何度か書いた通り、そうなれば中国の輸出品は映画・音楽などのエンタメ・文化も大きな武器になっていくでしょうし、ならなければまずい、ということになるでしょう。
文化の輸出は”憧れ”が必要です。K-POPのように、それがアイドルであったり、日本のアニメように独自の文化であったり、惹かれる部分が必要です。
中国はそういう”真似したい”と思われる国家になっていくことが必要で、ほんの少し前まで”権威主義”に世界の指導者や経営者が憧れたように、4000年の歴史を有し、幾多の文学の最高傑作を生み、世界があこがれる絵画・工芸品を作り続け、美食家たちの胃袋を満たし続ける料理がある中国の豊かな文化をもっと自信をもってアピールし、世界の人々が中国を憧れと尊敬で見る国に変えていかなければなりません。
かつて日本がそうであったように、安くてたくさん何でも作れる中国からは脱却して、世界の冠たる文化大国に移行しながら、次世代の人類を牽引するような産業分野を創造し、宇宙から見える唯一の建造物である万里の長城や世紀の大工事の大運河事業のような前代未聞の大事業を21世紀によみがえらせ、のちの1000年先まで人類を導くような事業を成し遂げることが中国に求められている世界からの期待であると思います。
隣国の中国に話が偏りましたが、日本もこれからが正念場で中国が減速を始めた中、東アジアの経済発展を中国に任せておけば大丈夫という時代はおわってしまいました。なんだかんだ言ってもここ20年は中国が近くにあるので中国人さえターゲットにしていれば勝手に右肩成長になるという甘い時代ではなくなったわけで、日本、中国、韓国、台湾あたりのメンツでグルグル回し続ける四打ち麻雀のような閉じたものではなく、ベトナム、インドネシア、マレーシア、あとは石油が出るサハリンを含む極東ロシア辺りまでも含めた汎東アジアあたりの顔役でまわす新しい経済圏の構築が必要です。日本はかつて国家成立の時に、突出した豪族による一極集中支配を避けるために、穏健な大和政権を閉鎖された奈良盆地に作ったように、その経済圏の支配者としての盟主たらんとする勢力を抑制して、欧州連合のようななるだけフラットな枠組みを形成する必要があるでしょう。
急激にブロック化が進む現在は、仲良くするにも喧嘩するにも地理的な隣人の存在がとても重要な時代。
対等を条件により開かれた東アジア圏を主導権争いによる潰し合い無く創出する役割は、江戸末期の幕末の志士たちのような活躍をする若い世代に託されています。