監督 クリストファー・ノーラン
ジャンル ドラマ 伝記
出演 キリアン・マーフィ エミリー・ブラント ロバート・ダウニー・Jr オールデン・エアエンライク スコット・グライムズ ジャック・クエイド フローレンス・ピュー ゲイリー・オールドマン トム・コンティ マット・デイモン
鑑賞方法 映画館(IMAXレーザー/GTテクノロジー)
さすがに客席はぎっしり。科学者の伝記映画をIMAX/GTテクノロジーの映画館で観るなんて、どうもリッチな体験過ぎると思いながら鑑賞したわけですが、そこはロスアラモスの荒野の情景などで元は取れましたね。
上映時間3時間もほんとにあっという間で飽きさせない作りになっていました。
映画のテーマは”後悔”そして”因果応報”。
作品はモチーフが原子爆弾という大量破壊兵器だけにそちらに目がいきますが、語られるのは①ビジネス上のジャッジを下す人間の罪と後悔②自分に都合の悪い影響力を持つ人間を排除する人間の罪深さと報い。
これを前者①をオッペンハイマー主軸のカラー映像、後者②をストローズ大佐主軸のモノクロ映像で撮影して語っていきます。
私自身、いくつかのビジネス上のターニングポイントに立ち会って、その決定が及ぼす悪影響がわかっているのにそれを阻止できなかったり、矛盾を感じながらも実行をした経験がある一介のビジネスパーソンなので、決してオッペンハイマーのことを他人事として断罪して見ることはできませんでした。映画を観終わった直後の観客の感想に、「アインシュタインは最初からこの計画に反対して最後まで参加しなかったけど、オッペンハイマーは反対したり推進したりまた反対したりとわけわからん一貫性がない奴やったなぁ、よくわからんかった」という声が聴こえてきましたが、その声すら自分には強く刺さりました。
私は”そういう一方的な視点で自己反省なしに相手を批判できる安直な思考こそ共産主義が危険視されるに至る政治思想になった原因”と反論したかったけど、グッとこらえました(笑)
人は自分の経験した範囲内でなければ本当に共感することができません。それは人間の能力の限界でしょう。
かつて「腰が痛い」と言っている人に同情はできたとしても、自分が実際に腰痛を患い、脳髄突き上げてくるような痛みを経験するまで、理解して共感してあげることはできませんでした。
彼が原子爆弾をつくったことで苦しんだ後悔の深さは当事者である彼しか人類史上誰も共感することはできないことです。
それでも愚かな人類の一人として、思いをはせることはできます。
この映画のストロース大佐のパートで語られたのは人類の不寛容な排除の罪深さ。
現在の文春砲などの報道やSNS拡散によって、かつての赤狩り時代のオッペンハイマーのような行き過ぎた懲罰がまかり通ってしまっていないか、ノーラン監督は厳しく我々に自省を促します。
さすがに人生最愛の10本という判断には時期尚早でしょうけど、20本のうちには間違いなく入る大傑作と言い切っていいと思います。
