Electro Dance Song特集 | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

ブラック・アイド・ピーズの新曲で一気に記憶がよみがえったエレクトロなダンス・ミュージックの快感。
おそらく90年代以降から音楽を聴き始めた人には意味のわからない世界だと思います。しかしブラック・アイド・ピーズの新曲は、このあたりの素養がないと全くウィル・アイ・アムのセンスが理解できないと思いますので、ちょこっとおさらいをしておきます。

まずは
"Axel F"Harold Faltermeyer
一曲目の紹介はちょっと軽めのこの曲から。ビバリー・ヒルズ・コップのテーマ・ソングです。80年代はこういうデジタルなビートがクールとされる時代でした。

"Planet Rock"Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force
ヒップ・ホップの黎明期の名曲の一つとしてあまりにも有名です。21世紀に入って、ヒップ・ホップがR&Bとの融合を果たすと、このルーツの部分が振り返られなくなってしまって、今のヒップ・ホップとの連続性も希薄になっていますが、初期ヒップホップはエレクトロとの親和性が高い音楽でありました。

"Egypt, Egypt"Egyptian Lover
LAのアーティストですね。間もなく発売されるエミネムの新作でもがっちりプロデュースを担当するドクター・ドレも初期の仕事("Surgery"The World Class Wreckin' Cru)はこの手の音楽が多いです。それはこうした音楽がニューヨークで廃れた後もLAのシーンでは長く愛されていた背景があります。ヒップ・ホップの流行の中心が”東”であったことを象徴する事例です。

"Rockit"Herbie Hancock
ジャズ・フュージョン界の大御所、ハービー・ハンコックもこの手に触手を伸ばしました。

"Jam on It"Newcleus
ミッシー・エリオットがかつてこの時代へのオマージュとして、数曲オールド・スクールな曲をリリースしていましたが、さすがにここまでの音楽性を再現することはありませんでした。そういう意味ではウィル・アイ・アムの提示した世界観はすごいものがあります。

以下、このジャンルの音楽で個人的に好きなものを挙げます。
"King of the Beat"Pumpkin & the Profile Allstars

"One for the Treble (Fresh) "Davy DMX

こうして聴くと、ブラック・アイド・ピーズはヒップホップがもともといた場所に帰ろうとしていることが解ります。
"Boom Boom Pow" The Black Eyed Peas
00年代初頭を境に、この手の音楽はヒップホップのクラシックから切り捨てられ、デフジャムが活躍し始めるころ、つまりランDMCや、ビースティ・ボーイズあたりからしか振り返りがなされなくなってきています。
これはヒップホップが歴史を重ねてきて、しかも重要なトピックが未だにその歴史を塗り替えられている最中にあるという意味では、喜ばしいことですが、そこで端折られることになった黎明期の音楽性について誰もが意図しないうちに、忘却されそうになっているという状況が進行している訳でもあります。
まるで、高層ビルを建てるためになくなっていく下町の風情をみるようですが、個人的には今の、そしてこれからのブラック・ミュージックのためには、これでいいし、これを楽しまなきゃいけないと思います。
ただ、こうした、壊す側にいるはずのウィル・アイ・アムが、下町の一軒家を買い取って、外観を残したまま時代に対応したものに内装を改装するようなことに挑むあたり、この人のこだわりを感じます。
ヒップホップもポップ・ミュージック・シーンに躍り出て、つまりデフジャムのアーティスト、ビースティ・ボーイズやLLクールJがヒット街道に登場して、20年が経過しています。流行音楽の歴史が20年で1周期を迎えるとするのが私の持論ですが、次の20年に進むために、黎明期のヒップホップを再評価しておくというスタンスは理に適っていると思います。