コロナウイルスのパンデミックは、アフリカに大きな変化をもたらすことは間違いない。ポスト・コロナ時代のアフリカはどなるのだろうか? すでに私たちは未来のアフリカ大陸の姿を垣間見ることができる。そして、それは悪いニュースばかりではない(悪いニュースもたくさんあるが)。
悪いニュース
ヒューマンコスト
5月1日時点で、アフリカ大陸で感染者数は37,393人に上っている。死亡者数は1,598人だ。これらの数字は、今後さらに悪化する可能性が高い。インペリアル・カレッジ・ロンドンによると、最良のシナリオでも、アフリカ大陸では、年内に約30万人がコロナウイルスによって死亡する可能性があるという。これは計り知れない損失だ。
大不況
コロナウイルス対策のための国による外出禁止措置は、この地域の経済を減速させ、何十年にもわたる成長を逆行させ、貧困ライン付近に住む多くのアフリカ人の生命を危険にさらしている。世界銀行は4月初め、このウイルスがアフリカ大陸を25年ぶりの景気後退に追い込んでいると発表した。国際金融機関は、成長率が2019年の2.4%から2020年には-5.1%にまで急激に低下すると予測しており、世界銀行は貿易とバリューチェーンの崩壊を指摘している。送金を含む海外資金フローの減少、感染拡大、政府の外出禁止措置が経済危機の主な原因である。経済危機は、アフリカの人々にとって特に悲惨なものになる可能性が高い。国連によると、約2000万人の職が失われ、深刻な食糧危機に直面する人々の数が2倍になる可能性がある。ルワンダのポール・カガメ大統領は、コロナウイルスの経済的影響から立ち直るには一世代かかるかもしれないと警告している。
外国人嫌悪の高まり
パンデミックに対する恐怖が、アフリカにいる外国人や中国にいるアフリカ人に対して、外国人嫌悪の波をあおっている。コロナウイルスのニュースが報じられると、中国市民に対する排斥発言が増加した。ケニアの政治家が、中国人は目の前で石に打たれるべきだと言ったと報じられている。また、コロナウイルスの恐怖のために中国人が嫌がらせを受けたり、脅されたりした例もある。カメルーンやエチオピアでは、外国人が乗っている車へ石が投げられたこともある。中央アフリカ共和国と南スーダンでは、新聞やソーシャルメディアが「コロナウイルスは外国人のせいだ」と報じたため、国連が職員に外出禁止令を出さなければならなかった。一方、中国では、アフリカ人は家から追い出され、ホテルから追い出され、レストランでのサービスも拒否されている。
腐敗
同地域の政府や国際的パートナーからの資金や物資の流入が、汚職の新たな機会をもたらしている。4月初旬、ウガンダは、政府高官4人を逮捕したが、彼らは、コロナウイルス対策の救援食料品の価格をつり上げていた。西アフリカにおけるエボラ出血熱の時の経験から判断すると、この地域全体で汚職が増加するリスクが高い。2019年、シエラレオネは、国のエボラ対策を支援するために計上された数百万ドルが行方不明になったため調査を開始した。トランスペアレンシー・インターナショナルは今月、「特に制度が脆弱、国民の信頼が低いときには、汚職が横行する」と警告した。
過激派
アフリカの過激派は、地域政府を麻痺させるパンデミックの影響を利用し、積極的な攻撃とプロパガンダを急増させている。安全策をとっていた欧州のカウンターパートとは異なり、アフリカのアルカイダ系列組織とイスラム国 (IS) の支部、そしてボコ・ハラムは活動を続けている。モザンビーク北部でISが支援する反政府勢力が、2017年の蜂起以来最も大胆な作戦を実施し、2つの地区の都市を攻撃し、ボコ・ハラムがチャド兵士92人を殺害した。サヘルでは最近、アルカイダがマリの主要な野党党首を誘拐した。過激派は政府軍の混乱の恩恵を受けている。政府軍の一部は封鎖措置を実施するために再配置されており、国際平和維持部隊も中断していて兵士がいない。ボコ・ハラムとアル・シャバブは、プロパガンダ活動にコロナウイルスを取り入れた。ボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウは最近、「私たちにはウイルス対策がある。お前たちにはコロナウイルスがある」とあざ笑った。
ジャーナリズム
世界のどこでもジャーナリストになるのは困難な時期であり、アフリカも例外ではない。パンデミックの経済的影響により、広告収入は急激に落ち込み、視聴者はニュースに金を払うのに苦労している。東アフリカでは、過去数ヶ月で新聞の発行部数が半減した。メディア各社は毎月の給与支払に四苦八苦している。一部の国ではすでにメディア各社が給与削減やレイオフを始めている。これは、すでに脆弱なメディア産業への破壊的な打撃である。信頼性の高いジャーナリズムがかつてないほど重要になっている。
他には?
4月24日の記者会見において、世界保健機関 (WHO) のアフリカ部長であるMatshidiso Moeti氏は、来年、マラリアによる死者が36万人から76万9千人へと倍増する可能性があると警告した。Moeti氏は コロナウイルス対策に集中することにより、他の脅威が放置されることを懸念している 。これは、マラリアだけでなく、洪水、飢餓、食料不安を含む他の災害にも言える。現在東アフリカの広大な地域を襲っているイナゴの異常発生については言うまでもない。イナゴの群れは毎日自分の体重分の食料を食べ、3カ月ごとに20倍に増加する。パンデミックに対する政府の対応は、他のすべての脅威を無視することではあり得ない。
良いニュース
新しい福祉国家
アフリカ諸国の政府は、独立後の早い時期から、社会福祉と労働者保護の拡大に最も大きく取り組んできた。「Development Reimagined」 によると、これまでに44カ国が150以上の救済プログラムを開始している。これらの改革には、公共料金の免除だけでなく、現物支給や現金給付も含まれる。 エチオピアなどでは、医療従事者のための特別規定があり、政府が生命保険の料金を支払っている。ガーナでは、医療従事者は3カ月間税金の支払いが免除されている。ほとんどの国は、新規融資金利の引き下げ、従業員への賃金補助、法人税の納付延長など、地元企業を保護するための多くの措置を発表している。4月中旬、南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領は、企業を活性化させ貧困層を支援するため、GDPの約10%に相当する5000億ランド相当の景気刺激策を発表した。
デジタルソリューション
アフリカの人々は、経済と健康の危機を乗り切るためにテクノロジーを利用し、仕事、銀行、学校、そして世界とのコミュニケーションを保つためにデジタルソリューションを導入している。ナイジェリアでは、ZoomとMicrosoft TeamsがGoogleの検索キーワードで話題になっている。ガーナなどの西アフリカ諸国の政府は、モバイルマネーの口座開設と送金の手数料の一部を免除している。セネガルはオンライン学習プラットフォームを導入し、南アフリカの大学は学生にデータパッケージを提供している。ルワンダでは、薬の配布や公共サービスの告知を行うためにドローンを配備している。インターネットの普及率はまだ比較的低いが、このパンデミックにより、さらなるアクセスと革新を促進する態勢にある。
富の分配
この地域で最も裕福な人々が、コロナウイルスとの戦いに参加することになり、アフリカ大陸の慈善活動の新しい時代の到来を告げている。アフリカで最も裕福なアリコ・ダンゴテ氏やその他のナイジェリアの実業界の大物たちは、コロナウイルスと闘うため、ナイジェリアで「対コロナウイルス連合」 を立ち上げた。数日のうちに、同基金は53人の個人や銀行と企業から6500万ドル以上の寄付を受けた。南アフリカで最も裕福な一族であるルパート家とオッペンハイマー家、そして鉱山事業のパトリス・モツェペ氏の企業グループは、それぞれ10億ランドを拠出して、 コロナウイルスの被害を受けた中小企業とその従業員を支援した。エチオピアとジンバブエでも、著名な慈善団体から同様の寄付があった。
国内のリーダーシップ
アフリカの指導者の中には、暴力的な警察や軍隊の抑制を試みているものもいる。コロナウイルス対策の遵守を確保しようと、警察が過剰な武力行使をしているとの報告を受けて、数人の指導者が謝罪を表明し、調査を開始した。ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は市民に対して、警察による暴力行為は遺憾であると述べた。南アフリカでは、ラマポーザ大統領が警察による虐待の申し立てを調査するためにオンブズマンを任命した。ボツワナのモクウィツィ・マシシ大統領とコートジボワールのアラサン・ワタラ大統領も同様にオンブズマンを任命した。さらに、ラマポーザとマシシは、外出禁止命令に違反した政府職員を叱責した。こういったリーダーシップは、説明責任が欠如している地域では重要な一歩である。
国際的リーダーシップ
アフリカの指導者たちは、この地域の市民をより公平に扱い、経済的苦境を緩和することを主張し、国際関係において気概を示してきた。外国のパートナーに対するアフリカからの勧告が、これほど強力で公になることはまれである。何人かのアフリカの大統領とアフリカ連合委員会の委員長ムサ・ファキは、ドナルド・トランプ大統領のWHO批判を非難した。中国の広州でのアフリカ人に対する差別についても、アフリカの尊厳を守るために批判を続けている。一方、アフリカの指導者たちは、救済のための交渉の席を要求している。南アフリカのラマポーザ大統領は、ドナルド・カベルカ(アフリカ開発銀行元総裁)、トレバー・A・マニュエル(南アフリカ元財務大臣)、ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ(ナイジェリア元財務大臣)、ティージャン・ティアム(スイス銀行元頭取)を含むオールスターチームを結成し、G 20、EU、その他の国際金融機関に対して、景気刺激策を含む「具体的な支援」を提供し、地域の脆弱な経済を支援するよう圧力をかけた。
アフリカ連合の展望
アフリカ連合(AU)は多くの批判を受けている。しかし、AUの先見の明により、西アフリカのエボラ出血熱の流行が起きた後の2017年に、アフリカ疾病管理センター(アフリカCDC)が設立されたのは、大きな成果を出している。アフリカCDCはまだ若い組織ではあるが、国家元首への助言やガイドラインの作成、検査能力の強化に重要な役割を果たしてきた。2月初め、アフリカでは2カ国だけがコロナウイルスの検査能力を有していたが、3月までにその数は46カ国に達した。アフリカCDCから指導者への助言はWHOの助言を具体的に反映している。(二つの組織が緊密に連携している)アフリカCDCがAU内に設置されていることも重要である。これはアフリカの指導者がこの助言を信頼し実行する可能性が高いことを意味する。
固定概念
例外はあるが (タンザニアなど) 、このパンデミック脅威に対するアフリカ諸国の対応は、多くの西洋諸国よりも、組織化され、 早急に実施されてきた。指導者たちは、科学者や公衆衛生の専門家の助言を活用しており、多くのアフリカ諸国の政府は、富裕国が利用できるリソースのほんの一部しか使っていないにもかかわらず、早期に相当の決意をもって行動してきた。これがアフリカ大陸におけるパンデミックの拡大を遅らせていることは間違いない。また、アフリカの指導者についての 固定観念を覆すことも可能にした。