コロナウイルス危機に至るまで、米印経済関係は下降スパイラルにあった。2019年後半には、インドの成長率が低下し、貿易保護主義的な動きが両国間の摩擦を生み、また、貿易が大幅に減少していた。コロナウイルス危機を契機に、両国の指導者は、積極的な協力のための新たな機会を見極め、さらなる危機から経済関係を守るための措置を講じるべきである。

インドでは2011年以降、5年連続で経済成長が加速し、2016年に8.17%の成長を記録した後、反転し、2019年には成長率が6%未満に減速した。その原因は様々であるが、不良債権問題、非銀行系金融機関の貸出に対する監視の厳格化、2016年の商品・サービス税導入に伴う諸問題が挙げられる。多くのアナリストは、2020年には成長が加速すると予測していたが、この予測は下方修正されるだろう。

 

成長の減速に伴い、インドの経済改革も著しく減速した。インド政府は2014年〜2019年の間に大きな改革を1つも実施することができず、ようやく最近になって改革を開始した。それは、インドの法人税率を他のアジア新興経済国と競争できるようにする減税である。景気後退以前から、モディ政権は貿易保護主義の傾向を示しており、インド経済が冷え込むにつれ、こうした機運は高まっている。

インドの保護主義は当初、米印の貿易にほとんど影響を与えていないように思われた。2019年3月までの12カ月間で、米印の年間貿易総額は900億ドルを超えた。しかし、上半期に貿易が増加したが、下半期には縮小していた。保護主義とインドの景気減速が、ついに貿易の流れに影響を及ぼした。インドの保護主義政策はトランプ政権にとってターゲットにし易く、米国はインドへの制裁措置を講じた (特に2019年半ばに一般特恵関税制度におけるインドの貿易特権を取り消した) 。

 

インドは、コロナウイルス危機が世界中に広がり始めた時、慎重に対応した。インドでは、1月下旬から2月にかけて、数件の症例が報告された。3月になってようやく、広範囲にわたる地域感染が明らかになった。3月24日、政府は強制的な国の封鎖を要請した。企業はすぐに新しい現実に適応せざるを得なかった。さらに、他の数カ国と同様に、インドもまた、輸出規制を通じて、医薬品、人工呼吸器、マスクなどの医療品の国内供給を確保しようとした。インドは通常、世界貿易における主要なプレーヤーとして認識されていないが、不可欠な情報技術関連サービスを提供するインド経済の停止によって、世界的なサプライ・チェーンに混乱が生じた。

米国とインドは、今年後半に起こりうる第二のコロナウイルスの波、あるいは次のパンデミックに先立って、貴重な教訓を学んだ。

 

不可欠なサービスの定義

 

インドの州によって「不可欠なサービス」の定義が異なり、米国とインドが不可欠と考えるものの間にもギャップが生じている。これはグローバルなサプライチェーンに混乱を引き起こす可能性があるため、重要である。補完的な定義は難しいが、こうした問題を解決するためのプロセスを明確にし、関連する財・サービスの貿易を確保することが重要だ。

データ管理

 

インドは、個人情報保護法に基づくデータ管理を検討している。現在起草されているこの法律は、たとえそのデータがインド人向けではないとしても、国境を越えたデータトラフィックを阻害する可能性がある。しかし、コロナウイルスによる国際的なロックダウンは、複数の地域にわたる冗長性の重要性を浮き彫りにしている。このような冗長性は、データフローに関する合理的なルールによってのみ可能となる。

職場のセキュリティ

 

企業は、データ管理に関する柔軟なルールとともに、重要なデータが安全であるように職場のセキュリティを確保する必要がある。少なくとも、在宅勤務は物理的セキュリティが低下し、多くの場合、サイバーセキュリティが低下する可能性が高い。FBIによると、さまざまなタイプのサイバー犯罪が 4倍になった。米国とインドは、サイバー犯罪との闘いにおいて共通の関心を持ち続けている。

 

スマート・インフラ

 

電力網や通信網の破綻に対する懸念は、コロナウイルスの危機の間には払拭されていない。しかし、この非常に現実的な懸念は、公共事業に焦点を当てた有望な景気刺激策と相まって、「より良い建築にする」いくつかの重要な議論への扉を開くことになるはずである。それは、最小限の人間の介入で、停電時に自立的に回復ができるインフラの構築方法などである。これは、多くの試行錯誤がすでに行われている地方自治体にとって重要である。


危機の間に肯定的な機会を見つけるのは難しい。しかし、米印間の貿易関係は、コロナウイルス危機の前には非常に否定的な方向に向かっていた。ここ数カ月間、「貿易協定」が約束されていたにもかかわらず、双方の保護主義的な感情が政策の変化を推進していた。しかし、このパンデミックは、米印間の商業上の関係が深く、緊急事態に対しては脆弱であることを思い起こさせた。このような危機に対し、商業的なつながりを強化する方法を見つけることは、両国の企業と従業員に恩恵をもたらす新たな、より前向きな流れとなり得る。