ホバーボード、いよいよ実現!? | CAR STYLING official blog

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すでにご存じの方も少なくないでしょうが、先日、トヨタの高級ブランドでおなじみのレクサスが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に登場した宙に浮かぶスケートボード、「ホバーボード」のような乗り物(?)を発表しました。その名も「LEXUS HOVERBOARD(レクサス・ホバーボード)」だそうです。







一見、普通のスケボーのようですが、ご覧の通り宙に浮いています。先端にはレクサスの象徴であるスピンドルグリルがデザインされています。また、足を載せるデッキは竹製で、これもレクサス車の内装からインスパイアされたものだそうです。

実は「ホバーボード」を名乗る乗り物(?)はすでに存在していましたが、高圧の水を下方に噴射した水圧を利用しており、「空中を浮遊する」ものではありませんでした。その意味ではレクサスのものは「本物」の浮遊物体と言っていいでしょう。

さて、レクサス・ホバーボードは超伝導(理化学用語。JIS表記では「超電導」と記します。以下、現象に対しては前者、物質や製品には後者を用います)を用いて空中に浮かびます。超伝導とは物質(ある種の金属や合金、酸化物など)を非常に低い温度に冷却した際、電気抵抗が急激にゼロになる現象で、この超伝導を起こしやすい物質のことを「超電導体」と呼びます。
ところが超伝導現象が起きる際、超電導体は内部から磁力線が排除されるマイスナー効果によって完全反磁性体を示し、外部からの磁場を排斥して「磁気浮上」という現象を起こします。レクサス・ホバーボードはこの磁気浮上を利用して浮かんでいるのです。
将来鉄道でおなじみの「リニアモーターカーと同じ原理で浮上している」と解説しているメディアもありますが、それは誤りです。リニアモーターカーはその名の通りに超電導電磁石で浮上しており、マイスナー効果による磁気浮上ではありません。


さて、レクサス・ホバーボードの心臓は高温超電導体(HTSL)を内部に収め、液体窒素に満たされた断熱性コンテナ(低温保持装置)です。ホバーボードの超電導体が液体窒素で-197°Cまで冷却され、永久磁石が埋め込まれたレールの上に置かれると、永久磁石のレールと超電導物質のまわりに磁場が形成されてボードが一定の高さで浮き上がるというわけです。


液体窒素によって盛大に白煙を吹いています。内部はマイナス197度。


実はこのスケートパークの下には磁気浮上のために必要な永久磁石レールが埋め込まれています。まだ専用コース上でしか浮遊できないのです。この専用パークが最も大事な仕掛けかも?


プール下にも永久磁石のレールが埋め込まれているのでご覧の通り。

浮上のために永久磁石を埋め込んだレールが必要なので、実はレクサス・ホバーボードは専用スケートパークの中でしか移動できません。ちょっと残念な話ですが、自由自在に移動できるホバーボードの実現には、まだまだ時間がかかりそうです。
なお、レクサス・ホバーボードは科学的な面だけでなくデザイン性と美しさにもこだわっているとのことで、スピンドルグリルや竹製のデッキといったデザイン要素は、言うまでもなくレクサス車を参考にデザインしているそうです。


By 高橋