【執筆者】脇澤 一弘(CARS幹事)

 

家庭用・業務用のゲームに音楽を固定し、増製・頒布する利用について、JASRACでは「ゲームに供する目的で行う複製(ゲーム目的複製)」という利用形態区分で管理しています。家庭用ゲームには、テレビに接続して楽しむゲーム機や、それを携帯可能なサイズに小型化した携帯用ゲーム機、スマホにダウンロードするアプリなど、様々な形があります。業務用ゲームにも、ゲームセンターで楽しむアーケードゲーム機や、ホールに設置される「遊技機」があります。

 

ここでいう遊技機とは、「ぱちんこ遊技機」と「回胴式遊技機」のことで、一般的にはそれぞれ「パチンコ」、「パチスロ」の名称で知られています。

 

私もかれこれ30年来、趣味としてパチスロを楽しむユーザーの一人であり、特段予定のない週末には、近場のホールで開店を待って並ぶこともあります。

 

ホールの営業時間は都道府県ごとの条例で決まっており、東京都では午前10時が開店の時間です。開店前のホールに多くの人が並んでいる様子を目にしたことがあるかと思いますが、なぜ並ぶのかというと、自分の目当ての機種・台を確保したいからです。特に、新規開店やリニューアルオープン、新しい機種が導入される日など、出玉設定がいつもより良いかもしれないと期待できる日には、大勢が訪れ、大行列になったりします。私がよく行くホールは、様々なお店が立ち並ぶ商店街の真ん中にありますが、いつもホールのスタッフさんが、近隣の店の出入り口をふさがない位置に誘導するなどして行列を管理しています。どのホールもおおよそ同じような流れかと思いますが、いったん早いもの順に並び、開店15分程前に入場抽選(ボタンを押すと、番号が記載されたレシートのような紙がプリントアウトされる方式など)を行い、そこで引いた番号の順番に、改めて並び直します。開店時間になると、順番どおり整然と入場していき、各自が選んだ台で遊技を開始します。このようなプロセスを経て、目指す機種や台を確保したとしても、遊技の結果は必ずしも思いどおりにならない、ということは言うまでもありませんが…。開店前の行列は、目当ての台を確保したい、というユーザーの思いが形になったものである一方で、それによってユーザー同士、または近隣の方々との間で混乱を生じさせない、という共通理解のもとで保たれる秩序の象徴でもある、ということです。このようなことも含めて、パチンコ・パチスロは、日本独自の娯楽文化なのだと感じたりします。

 

2020年、誰もが予測しなかったコロナ禍において、東京都では様々な営業施設に休業要請がなされ、パチンコ・パチスロのホールもその一つとなりました。そのこと自体に否やはありませんが、当時、いくつかの放送番組で、開店前の行列の映像が流れたことで、ユーザーやホール、あるいはパチンコ・パチスロという娯楽そのものに対して、「こんな時にまで」という良くないイメージを、少なくない方に持たれてしまったのではないかと、気になっていました。

 

様々な見方はあろうかと思いますが、この娯楽をまったく体験したことのない方に、前述の行列の意味のほかに知ってもらいたいことがあるとすれば、いくら大勢が並んでいても、入店後の各ユーザーは、「人」とではなく、自ら選んで確保した「台」と向き合って、それぞれの時間を過ごしているということです。突き詰めると、ホールで過ごす時間は、「台」を通じて「自分」と向き合う時間なのかもしれません。

 

この日本らしい娯楽文化が、これからも長く続いていくことを願いながら、私も今週末は、ゆっくり自分と向き合おうかと思います。

 

では。

 

 

CARS(楽譜コピー問題協議会)