こんにちは。
「墓の魚」の作曲家です。

今回は、「墓の魚」の作品の詩の解説、第四弾

をやらせていただきます。

 

題材は、難解な詩である

「荒唐無稽な叙情」です。

 

この作品は、

今回のコンサートで演奏いたしますよ。

 

◆◆

 

「コンキスタドール達の夢 

イベリアの豚・夜の七つの幻想 

[記録としての古詩と当世詩]」 より

 

第1の月 荒唐無稽な叙情  

~棺の犬~[古詩]

 

 

作詞作曲:黒実 音子

 

◆◆

 

 

 

1
ああ、荒唐無稽な叙情を
死者の口紅から語ろう
寂れた墓石に吹き抜ける風と、

棺桶のきしむ音こそが真実

我々は涙のアミティエ
聖マラトンの患者
マルキシズムの夢に
身を捧げた男達のように

ああ 町人が恋を語り
詩人はあの娘の歌を
鳥達は愛をささやき
街が愛に溢れているのだとしても

我々はやはり孤独なのだ
それは文学の文字が虚しいように
夜明け前のバイロ・アルト通りをただ響く音のように


2
我が父はコンキスタドール
エンコミエンダの実行者
我らは棺が産み落とした褐色の幼子

ゴルゴダの男も
バビロンの娼婦も
ああ 薄情な事 
人は他者に関わらずに歌う

ああ 貴方には貴方の悲しみが
私には私の声が
人は見る事がないのだ
お互いの魂の夢を

ああ どうか詩人よ
唄い語り伝えておくれ
愚かな女の墓に添える言葉を
拙いクリオーリョ達の歌を

======================
ああ、天使達の祝福の鐘の音 厳粛なる浄化
それでも満たされない荒唐無稽な叙情
魚の骨よ、教えておくれ 業の深い罪を許す祈りを
それでも何もかも砂になるだろう
懸命な生き方すら
======================


あるいは、違う結末も望めたのだろうか?
そう、これは劇なのだ!! 脚本の無い遊びなのだ!!

ああ詩人よ!! だが、空虚な墓石が讃えるものは
言葉と、破れた夢と、死んだ魚の骨

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

解説・

まずは、詩の意味よりも先に、

いくつかの単語の意味を

簡単に説明させていただきますね。

■アミティエ

学会に至らない程の

研究者の小さな集団の事をアミティエと言います。

元々はフランス語で友情などの意味があるようです。


■聖マラトンの患者

精神病の事を、

昔は聖マラトン病と呼びました。


■マルキシズム

社会主義の事を説明するのは長くなってしまうので、

詳しくは書きませんが、

社会主義の思想の一つだと考えて下さい。

マルクス主義とも言います。


■バイロ・アルト通り

ポルトガルのリスボンにある通りの名前です。


■コンキスタドール

ここでは、15世紀~17世紀にかけて、

南米を征服した探検家、開拓者を指しています。


■エンコミエンダ

とても簡単に言うと、南米を征服したスペイン人が、

原住民を征服し、支配し、キリスト教に改宗させ、

労働力として使ったシステムの事です。


■我らは棺が産み落とした褐色の幼子

南米を開拓したスペイン人達が、

現地の民との間で子供を産んだ場合、

その混血児はメスティソと呼ばれました。

多くの血の犠牲の上に生まれた自分達の命、人生

という意味でここでは語られています。

■ゴルゴダの男

ゴルゴダの丘は、キリストの処刑された場所で、

ゴルゴダの男とは、キリストの事です。


■バビロンの娼婦

聖書に登場する名前で、

意味としては、様々な説があるのですが、

キリスト教では娼婦は罪の一つであり、ここでは、

キリストに敵対する罪の象徴(魔女)と、

考えてもらえれば大丈夫です。


■クリオーリョ

南米大陸で生まれたスペイン人の事です。

 

 

 

 

さて、上記の意味を把握して、

この詩の意味をアナリーゼ(笑)してみましょう。

 

↓↓

 

 

上記の単語解説を見ていただけるとわかるように、

この詩は、スペイン人

新大陸の開拓の歴史がテーマになっています。
 


 

人間の新天地(植民地)への征服と、

その犠牲になった原住民達

そこから新しく生まれた命、素晴らしい文化

という混沌とした不条理なこの世界を

でも、でもなく、ただ、それがこの世界だと

淡々と語っている作品です。

 

 

ああ、荒唐無稽な叙情を
死者の口紅から語ろう
寂れた墓石に吹き抜ける風と、

棺桶のきしむ音こそが真実

[意味]

この世で動かぬ真実なのは、

そこに石がある事、木がある事、水がある事であり、

人間社会の道徳など何一つ真実ではない。

我々の正義も、道徳も、平和なこの世界も、

たくさんの悪行と血の歴史の上に成り立っている故に、

生きた人間の戯言よりも死んで物質になった人間と、

そこに吹き付ける風や、棺桶の音の方が真実である。

 


マルキシズムの夢に
身を捧げた男達のように

[意味]

人間の理想、夢など、

不完全で、虚しく、儚いものだ


我らは棺が産み落とした褐色の幼子

[意味]

どんな悲劇や、悪行からも、

新しい命や、人生、文化が生まれる。

そもそも善も悪もない。

くそったれで素晴らしいこの世界。

そんな矛盾した世界で生まれた我々は、

この世界をありのままに受け入れて笑う


ゴルゴダの男も
バビロンの娼婦も
ああ 薄情な事 
人は他者に関わらずに歌う

[意味]

キリストも、その反対の存在である悪霊も、

どちらも、ある意味では薄情な存在だ。

この世では他人は誰も助けてくれない・・・


ああ、天使達の祝福の鐘の音 厳粛なる浄化
それでも満たされない荒唐無稽な叙情

[意味]

天使達により、いつかは魂が浄化され、

そこに素晴らしい王国が待っていたとしても、

我々の混沌とした、この世界もまた現実であり、

そこに生きる我々は、いつも飢えている

 


魚の骨よ、教えておくれ 業の深い罪を許す祈りを
それでも何もかも砂になるだろう
懸命な生き方すら

[意味]

しかし、それでも、いつかは死んで、

土になり、砂になり、何もなくなる。

それこそが本当の救いなのではないか?


あるいは、違う結末も望めたのだろうか?
そう、これは劇なのだ!! 脚本の無い遊びなのだ!!

[意味]

それとも、私達には、

もっと良い道の選択があっただろうか?

それはわからない。

ただ、人生とは即興劇のようなもので、

悲しみすらも、演出として必要なのだ

 

 

いかがでしたでしょうか?

総じた解釈こそは、

読者の皆さんにお任せする所です。

しかし、上記の様な意味を知っておくと、

より、詩の意味を楽しむ事ができるのではないでしょうか?

 

この作品に興味を持っていただいた方は、
ぜひ、コンサートに来ていただけますと嬉しいです♪♪

 

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