こんにちは。
「墓の魚」の作曲家です。
「墓の魚」の作品の詩の解説、第三弾です。
本日、ご紹介するのは新曲のタンゴ。
今回のコンサートで初公開の作品です。
こちらが歌詞です。
↓
◆◆
「組曲・三つの黒ミサ曲」より
組曲の主題より組み立てた、たわいもない遊戯曲
ムール貝の密葬
1.
ある日、男は酒場で
やばい娘に惚れちまった
まるで骨と皮だけの
みすぼらしい黒衣のグリンガに
その女は嵐の晩に、
死者のバンドネオンの音色に合わせ、
ボカの墓場でイタリア人の骨と踊る
女に罪深い恋の呪いをかけられ、
男は日に日に痩せ衰えていく
おお、お優しい神の忠告など
届きゃしない
***********************
ルンファンドと死んだ言葉で愛を交わし
男は棺桶にまで埋葬される!!
ああ、男と女はいつだって呪いあう
何がお望みなのかすら
もうわからないクセに
ああ、なんてことだ!!
光もささないこんな場所には
主の祈りも届きはしない!!
魔術と酔いどれと葉巻の煙が、
おぞましい甲虫とタンゴを踊る場所なのだ
***********************
2.
男と女の呪いにかけられ、
女に貢ぎ続け
男はついにある日、力つき死んだ
女は楽し気に笑い、
墓場でタンゴを踊る
昔、自分が誰かに微笑んでいた事なんて、
もう忘れた
ああ、誰もが悲しいものだ!!
男も、男の母親も、
呪いと邪悪しか知らないグリンガの女でさえも!!
***********************
さぁ、踊ろう!!
囚人のジレンマのタンゴ
その女は、その骨すら魅力的!!
ある意味では誰もが情熱のやり場がなく
大人気ない夜の寂しがり屋
女よ、本当はわかっていたのだろう?
おまえですら愛を探し求めていたのだ!!
神と人の愛し方を、
誰もおまえに教えてくれなかっただけで
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***********************
会計士達はムール貝を密葬する
秘密裏に、そして厳粛に
なんて稚拙な!!
結局は墓穴で虫に喰いつくされるだけだ
それでも、なんてことだ!!
魔女も聖者も侠客も子供も
結局の所、それを見つけられぬのだ
つまり、埋葬された虚しさだけが
真理なのだ
憎悪も善意も効かぬ真理なのだ
***********************
***********************
だが、我々はそれでもいいと夢見る
だってここは、よごれた俗世だから
俗にまみれた愚か者どもの演劇だから
やがて誰もが主の前に倒れ
土の中で虫共に喰いつくされ
体は朽ち果て、髪は抜け落ち、
本当の美しさを手に入れるのだろう
***********************
◆◆
解説・
「組曲・三つの黒ミサ曲」
黒実の作った、タンゴをテーマにした
組曲の中の一作品です。
この組曲は、どの作品にも、
同じ主題(音の組み合わせなど)が繰り返し現れ、
全曲を通して一つの統一感のある作品となっています。
さて、歌詞の内容ですが、
歌詞の中で、
男が魔女に惚れてしまい、
痩せ衰えて倒れるまで、その女に貢ぎ続けて死んでいく
というアルゼンチンを舞台にしたシンプルな物語が語られています。
確かにシンプルではあるのですが、
以下の背景を知っておくと、
また、違った側面が見れるかもしれません。
■みすぼらしい黒衣のグリンガに
女はグリンガであるわけです。
グリンガ(男性はグリンゴ)とは「よそ者」を意味する
スペイン系のスラングです。
当時、アルゼンチンでは、イタリア移民が多く入ってきていた為、
スペイン系のアルゼンチンの人達は、
勢力の強いイタリア系の移民をグリンゴ(よそ者野郎)として
差別、または嫉妬していたのです。
(メキシコなどでのグリンゴは米国人を指す)
次の歌詞でも、その事が暗示されています。
■その女は嵐の晩に、
死者のバンドネオンの音色に合わせ、
ボカの墓場でイタリア人の骨と踊る
黒実の作品全てに言える事ですが、
魔女と言われていても、
実際にファンタジーのような魔法が使われる描写はほとんどなく、
彼女達は、むしろ現実社会の中で魔女と呼ばれたり、例えられる
社会的身分の低い異端者達である事が多いのです。
この物語でも、女が呪いをかけ、男が痩せ衰えていく・・・
というのは、男女の騙し合いの比喩的な表現にすぎないのです。
女が魔女であるのは、彼女がグリンガであり、
コミューンの中でのよそ者であるからです。
■ルンファンドと死んだ言葉で愛を交わし
ルン・ファンドとは、アルゼンチンのスラングの事です。
スラングというのは変な言い方をするなら下町言葉です。
上流階級の人達の使う言葉では当然無いわけですが、
スペインの文化はフラメンコにしろ、タンゴにしろ、
ヤクザ者、あらくれ者を賛美する傾向があります。
それは、国の歴史の中で、民衆が中央政府に反感を持ち、
その結果、反政府的なヤクザ者達が
愛されてきた背景があります。

タンゴはそうした中で生まれた音楽なので、
この作品は、こうした貧困な酒場での
男女の物語だと考える事ができるわけです。
■さぁ、踊ろう!!
囚人のジレンマのタンゴ
最後に、この囚人のジレンマは、
ある数学者が考案した理論です。
この理論は、まさに黒実の作品の
「この世は、ろくでもない人間達のドタバタ喜劇」
というテーマを表現していて、
囚人のジレンマのタンゴという愛と欲望のダンスを
我々人間は踊り続けなくてはならない・・・
という意味が込められています。
(囚人のジレンマを説明すると長くなるので、
すみませんが、検索して調べて下さい(汗))
■さて、肝心のタイトルとなっている
ムール貝の密葬・・・という意味を
ここでは解説していません。
なぜなら、これは完全な詩と哲学の領域の問題だからです。
会計士達はムール貝を密葬する
秘密裏に、そして厳粛に
なんて稚拙な!!
結局は墓穴で虫に喰いつくされるだけだ
それでも、なんてことだ!!
魔女も聖者も侠客も子供も
結局の所、それを見つけられぬのだ
つまり、埋葬された虚しさだけが
真理なのだ
憎悪も善意も効かぬ真理なのだ
という詩の中に、意味が込められています。
それは、詩の読者である皆様が、各自考えて、
答えをそれぞれに出していただければ・・・と思うのです。
人生がそれぞれなように、
芸術を鑑賞し、導き出す答えもそれぞれなはずですから。
さてさて、いかがでしたでしょうか?
この作品に興味を持っていただいた方は、
ぜひ、コンサートに来ていただけますと嬉しいです♪♪
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