なぁ、モモ。



お前にも家族はいるのかい?



帰る場所はあるのかい?



チャコには帰る場所すら無くなってしまってたんだ。


僕はなんて愚かだったんだろうね。



なぁ、モモ。



お前も一緒にチャコを迎えてはくれないかい?



マスターは少しも表情を変えずにゆっくりとした口調で僕に話した。



僕の知らないチャコの話を。



僕はチャコの過去に触れないようにしていた。
触れると壊れてしまうと思っていたから。



チャコはここより大分遠い土地で育った。



父親はジャズピアニストで母親は絵本作家だったそうだ。



2つ上の姉は読者モデルをやりながら服飾デザイナーの卵だった。



チャコが高校生の頃、幸福だったこの家庭にあまりにも突然すぎる不幸が襲った。



それは両親とも忙しい環境の中で時間をつくり旅行に出た時の悲劇だった。



点滴の滴が落ちる刹那に、そんな事を考える。



ベットから起き上がるとマスターの顔がうかがえた。


少しばかりの安堵。



僕は泣きながらマスターに謝っていた。



無責任な自分を。



身勝手な自分を。



レイコにも。



そして、チャコにも。



僕に寄り添ってきたあの猫にさえも。