去年22年の秋ごろから再び腰が痛くなり、23年の1月8日にギックリ腰状態になり半寝たきりになってしまった。
現在は手術を経てほぼ完全に回復したが、結局9か月あまり半寝たきりの生活が続き、だいぶ地獄のような生活を送っていた。

自分なりに原因がわかっているので、この経験を忘れないためにも、そしてもし似た症状の人がいたら参考にしていただくべく、「椎間板ヘルニア日記」としてまとめようと思う。

ちなみに以下は、医者でもない筆者の個人の感想なので、同じような症状を持つ人にはうのみにせずに医師に相談することをお勧めしたい。また、脊椎菅狭窄症の場合はまた原因や治療法が異なるので気を付けてほしい。

 

椎間板ヘルニアとは

 

さて、まず、整体師さんに聞いたことだが、椎間板ヘルニアはだいたい10代~30代で発症するようで、その理由は椎間板の水分が多くゼリー状であるため飛び出すことが多いとのことだった。
年齢を重ねると椎間板の含有水分が少なくなり固形化するため、高齢での発症は少ないとのことだ。

若いうちは、飛び出た椎間板を「異物」と認識したマクロファージ(白血球の一種)が捕食してくれ、また腹筋・背筋の筋力もあるため、症状は緩和されることが多い。

この飛び出た椎間板ヘルニアが神経を圧迫するため、ひどい腰痛を感じ、また下半身に神経性のしびれの症状が出る。




https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_518.html
上記画像はNHKが示した一般的なヘルニアの症状

私の場合は下記画像のように突起物(緑の矢印)がだいぶデカい。
デカすぎて神経を圧迫している様子がまざまざとわかる。
また、長年ヘルニア持ちであったため、突起物の上部の骨が変形していることがわかる。



加えて、私の場合は、腰骨の4番と5番の間の椎間板が患部だったが、「5番腰骨と骨盤」がくっついている先天的な状態も発症に関係した可能性があると医師に言われた。
このタイプの先天性は、脊椎科に来る患者の中でも数百人に1人しかいないので、一般の人でいうと数千・数万人に1人の割合だと思われる。


https://oji-sakura.com/blog/%E8%A7%A3%E5%89%96%E5%AD%A6%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%80%80%E8%85%B0%E6%A4%8E%E7%B7%A8/

手術では、飛び出たヘルニアと変形した腰骨を削ることになった。


病歴を振り返りたい。腰痛を繰り返している人も多いと思うが、個人的には根本治療(手術)を薦める。

 

 

病歴・時系列

 


14歳、中二で発症
  2年ほど体育の授業を欠席し、毎日のように整骨院に通いけん引や超音波等の治療を行う
  運動ができなくなったおかげでギターを弾き始めるようになる(ヘルニアのおかげでプロのミュージシャンになることができたともいえる笑)

高校に入学する頃にはだんだん症状が緩和され、高校卒業後はオーストリアで平然とサーフィンをしていた。

・その後はほとんど症状なし(マクロファージの働きと筋力があったためだと思われる)。

・プロのミュージシャンになり25歳くらいから音楽だけを生業としていたので、この頃からコンピューターの前に座って作業をし続けることが多くなる。 *座り続けの生活習慣が非常に良くない

30歳くらいで再び腰痛を覚えるようになった。

35歳くらいで下半身のしびれ(椎間板が飛び出したことにより神経を圧迫することで出る症状)が出るようになり、酷い時には歩くこともままならない状態になったが、整骨院などに通い数か月で痛みが緩和する。
 症状が重くなったり軽くなったりを繰り返す。

・2017年(42歳)に初めてまったく動けなくなるギックリ腰に。
 激痛のため寝返りをうつのに5~10分かかり、トイレに這って行くのに30分かかるという状態になる。
 半寝たきりで左足のつま先まで神経性のしびれと疼痛を感じていた。
 安静が必要とされたため、病院では痛み止め的なシップや内服薬を貰うのみで、基本的には自然治癒にまかせた。
 3か月ほどで症状が緩和していき、杖をつきながら外出可能に。6カ月ほどでほぼ完治する。

 症状が重い場合は、腰を揉むなどで筋肉の緊張をほぐしてもあまり意味がない。
 症状が緩和したのは、やはりマクロファージが突出した椎間板ヘルニアを食べてくれたためで、症状が全くなくなったわけではなかった。その後も軽い症状は出ていた。

22年の春頃、えげつない痛みが再発しだした。
 秋には座っていることもつらくなっていた。

23年1月、お泊りに来た甥と姪(小中学生)の相手を全力でした結果、再びギックリ腰に。
 最初の2週間~1か月は寝返りに5~10分かかり、トイレに這って行くのに30分かかるというほぼ寝たきり状態だった。
 しかし「今回も3か月ほどで治癒に向かうだろう」と気長に考え、寝たり座ったりの生活をしていたが3か月が経っても治らない。

4月くらいにかけて若干、症状が改善していたように感じたが17年の発症時と何かが違った。
 それでもこの頃は、杖をつきながらDJもやっていた。(1時間とか2時間立ち続けることは不可能なのでイスに座りながら)
 なんと、痛み止めを飲みながら大阪や新潟にも遠征に行った。

6月、回復に向かっているだろうと認識していた症状が激変し、再びほとんど立てなくなる。
 以降もほとんど良くならず、どうにかして歩いても歩行速度は分速20メートルにも満たない状態になった。
 発症した1月から手術をした8月までの9か月間、ほとんどの期間、20メートル歩いたら1分ほどは座って休憩が必要なほどの激痛が伴った。これは「疼痛(とうつう)による間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という現象で、腰痛と神経痛のために連続して歩くことが困難になる症状だ。
 左足だけではなく、左下半身全体(腰・臀部からつま先まで)が痺れ、凄まじい疼痛を伴った。
 買い物などのためにどうにか杖をつきながら外出するが、信号の青信号が点灯している間に横断歩道を渡り切れないほどの遅さで、普段は歩いて5分ほどのスーパーに行くのに30分は要するほどだった。

23年7月、あまりの激痛と日常生活の困難さに疲弊し、手術を決断。8月にオペを行う。

 

 

 

 

手術


手術を考えている人は、下記フローが役に立つ。


https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_520.html

3か月を超えてもあまり座れない、歩けないなどの症状が続いた場合は、マクロファージがヘルニアを「異物」と認識しない状態になり、捕食の行われなくなったタイミングであるため、手術を考えるべきだということみたいだ。
基本的に薬物治療は、「痛み止め」であるため、根本治療にはならない。


私の場合は、全身麻酔をする「内視鏡下ヘルニア摘出術-MED法(https://medicalnote.jp/contents/180717-010-CC)」を選択した。
背部を1.5cmほど切開して外筒管を刺し入れ患部を削るといった方法だ。

手術時間は約1時間ほどで、1週間ほどの入院が必要になる。


私の場合、手術後は速攻で症状が改善した。
「成功率90%」という医師の話に悩んでいた自分がバカみたいに思えるほど劇的に改善し、痛みもほぼない。
手術室に入り全身麻酔を行った後は記憶がなくなり、いつのまにか病室のベッドで寝ていた、くらいの感覚だった。
(麻酔から覚めかけに意識の確認のため、看護師さんに声をかけられるが、なぜか英語で返答をしていた笑)

痛み止め薬のおかげもあり、術日も次の日もほとんど痛みがない。そればかりか、ヘルニアの症状がウソのようになくなり、痛みの感覚も術前より大幅に軽減されたため気分が晴れる。

手術費用は、年収と保険適応状況にもよるが、15万円以下だ。

削り取った患部を見せてもらっが、小指の爪の大きさの半分くらいで、「こんな小さなもののおかげであれほどの症状が出ていたのか」と信じられないくらいのサイズだった。


術後の23年9月には、間欠性跛行(歩行中に座って休む)が起こることなく、連続で1時間歩行可能になった。
23年12月、現在に至る。ほぼ全快である。
1年近く半寝たきりで、太ったため、筋トレに勤しんでいる。

長いことヘルニアを患っていて神経が損傷してしまったため、後遺症は残っている。
片足の甲と裏が痺れている。1年ほど経過を見て軽減されなければ一生残るということだ。
後遺症が残る確率を低減させるためにも、手術は早めに決断したほうがいい。

 

原因


重度のヘルニアになると、腰痛や疼痛もえげつないが、「治らないかもしれない」という思いと日常生活の困難さから鬱状態になる。
17年に発症した時も本当に鬱々とした気分になったが、21年の秋ごろから再発と不治への恐怖で鬱状態になった。

覚醒している間はずっと激痛で、横になっても痛みが少し緩和される程度、眠っても痛みで2時間ごとに目覚める。
こんな「拷問」を何カ月も受けたら鬱にもなる。

30分と座り続けることができないので、寝ながら仕事をすることになるし、軽い作業しかできない。
思考が常に痛みで支配されるため、複雑な思考が続けられない。これもまた鬱化を促す。


手術を受けたあと思うことは、「早く手術してればよかった」である。苦しみを無駄に長引かせてしまったという後悔がある。


さて、ヘルニアの原因はひとそれぞれだが、私の場合は先天的な腰骨の異常に加え、生活習慣がもっとも大きいと自覚している。

仕事がら、ずっと座り続ける。特にあぐらが良くない。

ヘルニア持ちの人ならなんとなくわかるだろうが、イスに長時間座るのがキツイため、イスの上で片立膝になったりあぐらになったりすることで、痛みが軽減されると感じることがある。
しかしこれらは悪手と思われる。

イスの上でこんな姿勢になってる人も多いと思うが、やめたほうがいい。


人間は、立っている状態がもっとも腰に負担がかかりづらい。

立位状態の次にカウンターチェアのように、深く腰掛けないタイプのイスが良いとされる。

身体がもっとも「L字」に曲がり前かがみになる、あぐらが一番良くない。

この前かがみの状態が椎間板を圧迫し、後方へヘルニアを突出させる原因となる。


前屈姿勢に近い状態をずっと続けるから、ヘルニアが後方にとび出てしまう。


そして適度な運動が大事だ。骨や筋肉が鍛えられ、バランスが保たれる。
バランスが崩れた時に病気になる。

 

障碍を持つことへの差別


調子の良い時は杖をつきながら電車に乗ることもあった。
興味深いことに、優先席の前に立っても7/10回は席を譲ってもらえない。
(最初にこの状況に遭遇した時に驚いたため数えていた)

優先席に座る健常そうな若者の目前30cmくらいでワザとらしく杖をカタカタやっても、彼らは絶対に譲らない。

皆さんは信じられないだろう。私も最初は信じられなかった。

しかし、私はふと思いだした。
「日本人は世界で最も弱者に厳しい」とのデータがあることを。

 

このことを、私自身の実証研究でもガチであることが証明できたという思いだ(サンプル数は少ないが)。
日本人は経済だけでなく、性根の部分もおかしくなっている。というか性根がおかしくなっているから経済も政治も腐っているのかもしれない。


一年近く、障碍者のようになってわかったこともある。

ガチで生まれながらの障碍者の方たちがどんなに苦労してきたことか。
社会から無視され、片隅みに追いやられ、それどころか社会から疎まれさえすることにどんなに傷ついてきたか。
障碍を負っていても生きやすいインクルーシブな社会でなければいけない。

こういう感覚は忘れないようにしておきたい。


以上、椎間板ヘルニアの経験に関する備忘録だった。


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