ネオナチの系譜〔その1〕 ～NHK党と参政党の問題

 

▼ネオナチの系譜　シリーズまとめ

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【目次】
　〔その１〕　→本記事
①　NHK党/つばさの党のユダヤ批判の主張・ナチズムへの接近
②　「共産主義者＝ユダヤ人」はナチの中心的主張
③　統一教会が支援した中南米の世界反共連盟(WACL)はネオナチ
④　ボルシェビキの多くがユダヤ人であったことは確実
　〔その２〕
⑤　陰謀論「双頭の鷲作戦」を主張したのはヒトラー
⑥　マルクスはロスチャイルドの親戚/ロスチャイルドはレーニンを支援？
⑦　ロスチャイルド家とロシアは同じ紋章を使っていない
　〔その３〕
⑧　非科学的な民族主義（Nationalism）はナチズムの根幹
⑨　日本型ファシズムとナチズム
　〔その４〕
⑩　ウクライナのネオナチの系譜 ～ステツコとスヴォボーダ
⑪　ウクライナのネオナチと世界反共連盟（WACL）
　〔その５〕
⑫　労働組合攻撃を続けたナチズム
⑬　CIAによる労働組合攻撃と連合の変容

ここ半年程はウクライナ情勢や統一教会、世界反共連盟(WACL)に関しての記事が多かったので、当ブログを見にきてくれる人たちの中にも陰謀論に興味ある人が多くいるのかもしれない。

事実と陰謀論のあいだには、事実・現実・視点の相違・仮説・推測・仮定・持論・予測・感想・妄想・創作・デマ・ガセなどの様々なグラデーションが拡がるため、個人的には、世間で陰謀論と言われているものを十把一絡げにレッテル張りし排除する非科学的なスタンスを取ることはない。

このグラデーションのどこに線を引けるかが、重要なポイントではないだろうか。

例えば2012年に「CIAが各国の政府要人をはじめ俺たちのことも盗聴している！」などと言ったら、「お薬出しときますねー💊」案件であったが、2013年以降はただの事実となった。
最近、事実として確定した統一教会（勝共連合/KCIA）による自民党議員支配・諜報活動もその際たる例だ。
「事実」に昇格する陰謀論もある。


本記事で問題にしたいのが、右派の陰謀論者、特にQAnonやトランプ支持者ともクラスタのかぶる以下の面々である。

法輪功（新唐人・エポックタイムス・大紀元）
幸福の科学（及川幸久ら）
サンクチュアリ教会＝統一教会分派（我那覇真子ら）
林千勝（チャンネル桜）
藤原直哉
副島隆彦
リチャードコシミズ
参政党（神谷宗幣ら）
NHK党（つばさの党・黒川敦彦ら）

これらの面々のあいだにも細かいグラデーションが存在するが、デマやガセに近い主張を続ける手合いが多いので気をつけたほうがよい。
そもそも行き過ぎた陰謀論は仮説や推測を事実として設定・認識してしまい、そこから奇怪な論理を組み立てる傾向にある。

その中で、本記事で特に検証を試みたいのがNHK党/つばさの党だ。

 

 

①　NHK党/つばさの党のユダヤ批判の主張・ナチズムへの接近


多くの人には、NHK党/つばさの党と参政党は似たようなものに感じるかもしれないが、その違いのひとつに反統一教会であるか否かがあるだろう。
参政党は自民党と同様に親統一教会と言える。
（この点以外の参政党とNHK党黒川派との争いに関しては、常人には理解できない荒唐無稽な陰謀論が展開されるため閲覧する時間も無駄だと感じる人も多いだろう）

N国つばさの党・黒川氏は「統一教会シンパだ」などとして参政党を攻撃しているが、この点について、ある程度ソースのしっかりしている件、また強い疑惑に関しては私も参考にさせてもらったことがある。

 

 


反統一教会のスタンスは私もわりと同じくするところだが、彼らの問題は別のところにあり、それは「ナチズムへの接近」にある。
上掲した右派陰謀論者たちも多くがナチズムに接近しており、私はその動向を非常に危惧している。

例えば、彼らの統一教会や外患批判は、いつのまにか韓国人・朝鮮人・在日コリアン、または中国人批判にすり替わっていて、ナチスと同様の民族主義（Nationalism）・排外主義的傾向を見せており非常に危険だ。

黒川氏らの「ユダヤマネーをぶっ壊す！」などとした批判を根拠なく繰り広げる姿勢も極めて異常であり、コリアン批判と同様に、民族差別そのものであることも指摘したい。

 


＊注：正確には、「おじちゃんの代からCIA」は間違いで、「おじいちゃんの代はCIA」が正しい。これは安倍晋太郎や安倍晋三がCIAエージェントだと証明されたことはないだめだが、米国のために働く姿勢はエージェントそのものにも映る。

 


上記ツイで引用した動画にあるような、彼らの「世界はユダヤ人国際金融資本により支配されており、それこそが諸悪の根源である。そのユダヤ人たちが共産主義を作り、労働組合を介して思想を広めた」とする主張は、ナチズムそのものである。

黒川氏らは、他のビデオでも統一教会やウクライナのネオナチを批判しているが、彼らは、その批判対象とほとんど変わりない主張を展開しまっている。
（＊統一教会が主軸として参加するWACL=世界反共連盟はネオナチの集まりである）
黒川氏ら自身や彼らの支持者は、この奇妙な構造に気がついているのだろうか。

批判しているNHK党黒川氏らと、批判されているウクライナのネオナチの主張が殆ど同じなのだ。


以下に示したのは簡単なナチズムの要件だ。

【ナチスの手口】
・ユダヤ陰謀論に基づくユダヤ人差別・民族主義
　　自国民が他を優越するとし、外国人を差別する民族主義
　　ユダヤ人銀行家が世界を牛耳るとして、ユダヤ民族全体を差別する行為

・共産主義/民主主義への攻撃
　　共産主義はユダヤ人が作った国際化(グローバル化)思想とする前提を置く攻撃
　　民主主義的中間団体である労働組合（構成員の多くがユダヤ人/他民族と設定）への攻撃

・全体主義・ファシズム
　　議会制の放棄・国家コーポラティズム
　　国民国家の民族主義的統合・排外主義

NHK党黒川派は、上記の2点目まではかなりクリアしている。
現時点でも、ADL（名誉毀損防止同盟）やサイモン・ヴィーゼンタールなどのユダヤ人権団体案件となるだろう。

ここに個人の人権は国家のためにあるとする全体主義的要素が加わればナチズムとしての役満となるのではないだろうか。
ハンナ・アーレントが言うように、自国の民族が他の民族を優越するとする民族主義は、その虚構の世界観を全体主義として成就しようとする力学が生まれがちであるため、民族主義を唱えた時点で全体主義的流れが強化されているともいえる。

 

 

②「共産主義者＝ユダヤ人」としたナチズム


マルクス-エンゲルスの「共産党宣言」の一行目に「ヨーロッパには幽霊が出る--共産党という幽霊である」とあるが、170年経ってもその幽霊を恐れ虚空に向かって棒を振り回している者たちがいる。
その最前線が統一教会/勝共連合、自民党、Qアノン、サンクチュアリ教会、連合、創価学会、参政党などであろう。

その中でも最もラディカルな部類が「共産主義者＝ユダヤ人」説を唱える者たち、つまりNHK党/黒川氏らということになるのだが、この説こそがナチズムの中核を成す。

それはヒトラーの「我が闘争」を読めば即座に理解できる。

ヒトラーは民主主義（当時は共産主義は民主主義の一部と認識される）に反対していた。
アーリア民族（ゲルマン系）の自決に基づく一党独裁が彼の理念であり、そのためには邪魔な民主主義を構成する共産主義や労働組合を排除する必要があった。
その共産主義者や労働組合員の多くを占めていたのがユダヤ人であった。（実際にボルシェビキの多くがユダヤ人であり、ロシア革命はユダヤ革命とも呼ばれた）

気をつけなければならないのが、「共産主義者＝ユダヤ人」ではなく、ボルシェビキにユダヤ人が多くいたという違いだ。
統一教会が韓国の反日カルト宗教だからといって「統一教会員＝韓国人」ではないことは、多くの人が理解するところだろう。

ナチ党の隆盛期には、反共産主義(≒反民主主義)・反労働組合・反ユダヤ主義という3点セットの思想が明確に並列し党勢拡大の原動力となっていた。
ナチズムと反共・反ユダヤ主義・反労働組合は密接不可分な関係なのだ。

ヒトラーが著した「我が闘争」を見てみよう。

 

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『我が闘争（抄訳）』
https://www.islam-radio.net/historia/hitler/mkampf/jap/

今日の西欧の民主主義はマルクス主義の尖兵であつて、これなしにはマルクス主義は到底成功し得ない。しかもこのマルクス主義は狡猾なユダヤ人等に依つて運用されてゐる魔薬なのである。

【中略】
私は、社会民主主義の疑問が、一つの例外もなくユダヤ人を依って支配されていることを知った。

【中略】
尚遡れば、国会の議員にもこれがある。労働組合の幹部、各団体の議長、街頭デモの扇動者等、何れも約束したように、この狡猾な選民が乗っ取っていた。

【中略】
私は私の情熱を以て、如何にマルクス主義が世界破壊の怖るべき陰謀思想であるかを判らせようと思って、機会ある毎に、全く舌がこわばる程にまでこのことを説いたのである。

【中略】
彼等のマルクス主義こそは、自然の貴族的な本質を否定し、大衆と、数と量とのみを重んじて、権力と力とが持つ永久的な威力に対して全然反対の立場に立っている。

【中略】
こんな運動が成功した時のことを考えて見るがよい。宇宙には唯混沌のみがもたらされる。人類は滅亡する。
正にインターナショナルはある物を創造する主義や運動ではなく、一切の物を破壊しようとする、怖るべく且つ憎むべき思想であるに過ぎぬ。

〔＊注〕たまに民主主義と社会主義とを相対する概念のように対置させて認知する「冷戦脳」の人がいるが、それは間違っている。社会主義は民主主義の進化版と考えるとわかりやすいだろう。共産主義は、土地所有の権利などをプロレタリア共有としたハードコア版である。
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どうだろうか。
「共産主義者＝ユダヤ人」説こそがナチズムの骨格、ヒトラーの魂であることがわかるだろう。

この飛躍した論理展開から、ユダヤ人への差別、弾圧、虐殺が始まるのだ。

 

 

③　統一教会の支援した中南米の世界反共連盟(WACL)はネオナチ


ここでヒトラーの意志を受け継いだネオナチがどういう変遷を辿ったのかも見ていこう。

下記は私が度々活用するWACL（世界反共連盟）の概観図である。
WACLの中心には統一教会が座しており、日本人から騙し取った金によって各国WACLの構成メンバー（特に中南米）のテロリズムも運営されていた。
（＊資金の全てが日本人マネーというわけではない、麻薬マネーなども活用されている。また、統一教会自体は反ユダヤ主義というわけではない）


統一教会マネーが中南米の極右ゲリラ組織に注がれていたことはワシントンポストにも報道される。


WACLのあまりの酷さに激高し、イギリス支部を脱退させた支部長のジェフリー・スチュアート・スミスは、WACLは「ナチスや反ユダヤ主義の集まり」だと発する。


また、WACLの中米支部「CAL」の要であったメキシコの「テコス」に関する記述を「Inside The League」から抜粋するが、彼らは明確に「ユダヤ＝フリーメイソン＝共産主義者の陰謀」を敵視している。黒川氏らとほとんど同じ思想であることに気づくだろう。



中南米に多くのWACL系のネオナチ組織が生まれたのは、戦後に欧州から逃げたナチの残党が中南米に腰を据え、各国の独裁政権や極右ゲリラの政治・戦術・科学顧問になったからである。

中南米に逃げたナチスの残党といえば、ホロコーストにおけるユダヤ人の収容所送りを主導的に実行したアドルフ・アイヒマンが有名どころだが、その潜伏先のアルゼンチンのファン・ペロン/ビデラ軍事独裁政権もWACL傘下にあった。

「エルサレムのアイヒマン」（1963年）を著したハンナ・アーレントは反ユダヤ主義を以下のように解説する。
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国際的な商業カーストとしていたる所で利害をひとしくする家族的コンツェルンとしてのユダヤ人というイメージがくりかえしあらわれ、やがてこうしたイメージは、王座のかげにかくれた隠密の世界勢力、あるいは世界のあらゆる出来事の裏で糸を引いている全能の秘密結社といった幻想へと変容した。
その権力とされるものを一切の社会的秩序の破壊のために利用するのではないかと否応無しに疑われたのである。
　　　-- アーレント 「全体主義の起源」（1951）
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第二次世界大戦後すぐに、世界はナチズムの何たるかを解明し続けた。しかしながらナチズムは時代を超えて生き残っている。

ホンジュラスで見つかった、エルサルバドルのネオナチ系暗殺部隊（FAN=ダブイッソン大佐ら）の落書き（1980年代）（Inside The Leagueより）

 

 

④　ボルシェビキの多くがユダヤ人であったことは確実

ロシア革命当初のボルシェビキの多くがユダヤ人であったことは確かであろう。

1920年2月8日付のロンドンの『イラストレイテッド・サンデー・ヘラルド』紙に掲載された「シオニズム 対 ボルシェヴィズム：ユダヤ人の魂のための闘争」というチャーチルによる社説がある。



このチャーチルの社説には「ボルシェビズムの創造とロシア革命の実現において、この国際的な、そして大部分は無神論的なユダヤ人が果たした役割を誇張する必要はないだろう。それは確かに非常に大きなものであり、おそらく他のすべてのものを凌駕している。レーニンを顕著な例外として、主要な人物の大半はユダヤ人である」と記される。

しかしそれは、ヒトラーがプロパガンダとして使用した偽書「シオン賢者の議定書(1903)　https://encyclopedia.ushmm.org/content/ja/article/protocols-of-the-elders-of-zion 」のように、ユダヤ民族の企てた陰謀であるとする説とは繋がらない。
繰り返しになるが、民族全員が同じ思想を共有しているわけがないのだ。
「特定民族の陰謀」と確定してしまうか否かが、重要なボーダーライン（越えちゃいけない線）となる。


ましてやロシア革命があった1917年から100年も経った今、ソ連は崩壊し、共産主義自体も瓦解してしまっている。中国でさえ市場原理を取り入れて久しい。
その系譜が引き継がれているとは到底考えにくい。



「私は今も日本共産党がユダヤマネーのスパイ工作機関だと認識している」とは、冒頭に示したツイート内引用動画における黒川氏の言である。
https://www.youtube.com/watch?t=694&v=z9uVDjBU5pI&feature=youtu.be

日本共産党の資金繰りは収支報告書によって開示されているが、黒川氏の上記の認識は、本文冒頭で言及した「事実・現実・視点の相違・仮説・推測・仮定・持論・予測・感想・妄想・創作・デマ・ガセなどの様々なグラデーション」のどの位置にあたりそうだろうか。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/reports/SS20201127/SF/000070.html

根拠のない妄想ではないだろうか。こうなるともうただのアブナイおじさんでしかない。

少なくとも、私は、後述するウクライナのネオナチの系譜「OUN-バンデーラ → OUN/ABN-ステツコ → スヴォボーダ→アゾフ」というような確度の高い傍証が存在しないのならば、100年の時を経てその思想の潮流を雑に一直線に結ぶような、科学の枠組みを超えた勇気ある立場に立脚することはない。


日本共産党は、ソ連共産党や中国共産党とも半世紀も前に袂を分かち、今では元気に露中批判を繰り広げている。
香港問題における中国批判、またはウク露戦争におけるロシア批判の急先鋒が日本共産党であったことは記憶に新しい。

また、パレスチナ問題においてはイスラエルを強く批判している。

これらの日本共産党のふるまいも、黒川氏の言う「ユダヤマネー」がそうさせているのだろうか。
そんなわけはないだろう。


さらには当該動画で黒川氏は「統一教会のデモにおけるカンパのウワマエは、CIAがはねている。同様のことを行っているのが共産党と立憲民主党だ」というようなことを言っている。


あまりの奇怪な論理飛躍に、ついていける人がいるとは思えない。
デモにおいて集まった数万円規模の微々たる額のカンパを、CIAや共産党が資金源にするわけがない。

統一教会の場合はその資金（主に霊感商法でだまし取った金だと考えられる）が、CIAが主導したWACLに流れていたことは確実であるのでまったく正しくないとは言えないが、「デモのカンパ」を資金源にするのかという論点では、疑問である。

そして、黒川氏の批判には「共産党は資本主義も天皇制も否定」とあるが、そんな事実はない。
日本共産党はあくまで国民の民主主義的な賛否の意志が必要だという立場だ。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-03-07/05_01.html
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/06/post-807.html


黒川氏の日本共産党批判の論理は、そのへんの野良ネトウヨと同程度に酷いものがある。


長文となったため、続きとなる以下項目は次回にしよう。
　〔その２〕
⑤　陰謀論「双頭の鷲作戦」を主張したのはヒトラー
⑥　マルクスはロスチャイルドの親戚/ロスチャイルドはレーニンを支援？
⑦　ロスチャイルド家とロシアは同じ紋章を使っていない
　〔その３〕
⑧　非科学的な民族主義（Nationalism）はナチズムの根幹
⑨　日本型ファシズムとナチズム
　〔その４〕
⑩　ウクライナのネオナチの系譜 ～ステツコとスヴォボーダ
⑪　ウクライナのネオナチと世界反共連盟（WACL）
　〔その５〕
⑫　労働組合攻撃を続けたナチズム
⑬　CIAによる労働組合攻撃と連合の変容

次回に続く