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トルコでの停戦の話し合いが進展し、ロシア軍も一部撤退しているとの情報があり、本当に良かった。
このまま停戦まで一気に持ち込んでほしい。


前回、反論が途中までになったので、今回もその続きとなる。
このあたりの記述に対してとなる。

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▼ 「プーチンさんを悪く言わないで!」という”陰謀論”動画の正体
古谷経衡作家/文筆家/評論家  3/4(金) 
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20220304-00284877

馬淵睦夫・元駐ウクライナ大使
「(コロモイスキーは)私兵を使って、つまり傭兵を、自分の武装集団を持ってたんですね。アゾフという。それがロシア人を虐殺してたわけですよ。」「コロモイスキーはユダヤ系なんですよ。それが、ユダヤ系を虐殺したというナチスのハーケンクロイツを振りながら、東ウクライナでね、ロシア人を虐殺してる」

古谷経衡氏
「彼らがロシア人を虐殺したという事実は立証されていない。OSCEが立ち会って、虐殺と認定した事実もない。またアゾフ大隊の支援者のひとりがコロモイスキー氏であることは事実だが、アゾフ大隊の全部がユダヤ系では当然ない。アゾフ大隊がナチスの紋章類を使用したのは、独ソ戦でドイツがソ連に侵攻したために、親露派をソ連に見立てたものが理由ではないかと思われる。…いずれも事実を立証できないものばかりだ…」
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ついでだが、こちらの”自称”専門家の小泉悠氏や自民党・青山繁晴議員に対する反論になるとも思う。

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「ウクライナ」(2) 小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師 2022.3.9
https://www.youtube.com/watch?v=r0a3s5Y50yo
4分あたり
「プーチン・ロシア側は『ウクライナ政府は国内にいるロシア系住民を組織的に虐殺している。今のゼレンスキー政権はナチスだ』と言っている。
しかしゼレンスキーはユダヤ人なのでナチスってことはない。反駁しようと思ったらあまりにもツッコミどころが多すぎる。ずさんだ」
6分あたり
「ウクライナ東部でロシア系住民が虐殺されていると言うんだったらなんで今まで それを国際社会に訴えなかったんですかって話ですよ。…開戦直前の3日前、2月21日になって初めてそんなことを言い出したのかと聞いてみたい。
こういった様々な理由を開戦直前に持ち出してきたのは相当方便に近いという印象を持たざるを得ない。少なくとも積極的な証拠がロシア側から示されていない」
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自民党・青山繁晴議員
ジェノサイドをウクライナ軍がやったんだったら絶対にバレます!アメリカの軍事衛星は全世界、南極に至るまで見ているし、緊張地域は間違いなく見ている。絶対にわかる。僕の情報収集能力を信用してほしいんだけど、その事実は一切ないです!ウクライナ軍がジェノサイドをやったってことはまったくない
https://twitter.com/AmiPirates/status/1507478723557150723 ・・・・・・・


自称専門家らが適当なことを言っているので、間違いは正していかなくてはならない。

【目次】
① ジェノサイドの定義
② 国際機関の報告書の不備から見える事実
③ ユダヤ系オリガルヒ・コロモイスキーによるネオナチ部隊の創設

 

① ジェノサイドの定義

 

基本的に欧米のプロパガンダを妄信し、都合の悪いものをすべて「ロシアのプロパガンダ」とし思考停止状態にある人達の主張は似ているので、逐一反論する必要もないかもしれない。
彼らが同じようなことしか言わないのは、1984体制の情報源からしか情報を得ていないから当然である。

そして、多くの識者やインフルエンサーは、「国連やOSCEが虐殺と認定したことはない」という話を、そのままイコール「虐殺はなかった」と脳内変換している。
このように導き出された結論は、実に非科学的で不誠実である。


この際、「虐殺」の定義をはっきりさせておかねばならない。
日本語の虐殺は英語のMassacreやSlaughter、つまり殺戮と同じ意味でも用いられる。「惨たらしい方法で殺すこと」とも定義される。
議論の対象になる「虐殺」を、「ジェノサイド条約」における「ジェノサイド」としよう。

 

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ジェノサイド罪の防止と処罰に関する条約(ジェノサイド条約)
〔1948年12月9日、国際連合総会において採択〕
http://www.cgs.c.u-tokyo.ac.jp/definition.html

第2条
この条約において、ジェノサイドとは、国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を、それ自体として破壊する意図をもって行われる以下のいずれかの行為を指す。


〇集団の構成員を殺害すること、
〇集団の構成員に重大な身体的または精神的な危害を加えること、
〇集団にその全部または一部の身体的破壊をもたらすよう意図した生活条件を故意に課すこと、
〇集団内の出生を妨げることを意図した措置を課すこと、
〇集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと。

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意外とジェノサイドの定義が広いことがわかる。

この点において、青山議員の脳内ソース、または衛星映像万能説は問題外であることが即座にわかる。
衛星映像では、誰がミサイルを打ったのか確認できることは稀である。
また、ジェノサイドの定義からもわかる通り、「集団にその全部または一部の身体的破壊をもたらすよう意図した生活条件を故意に課すこと」は確認できない。
上記は、例えば行政レベルで食糧や水道供給、年金支払いを停止することなどが含まれるが、ウクライナ政府はそれらをやっていた(と断じても過言ではない)。この点の証拠は後述する。

青山議員が「手を尽くして調べたので、僕の情報収集能力を信じてほしい」と発言しているが、結果として、信じるに値しない情報収集能力だったことが確認された。

また、詳細は後述するが、2014年5月2日に右派セクターと疑われるネオナチが50~100名を殺戮した「オデッサの悲劇」、2014年5月9日にネオナチのアゾフ大隊が20名を殺戮した「マリウポリ事件」、アムネスティにも糾弾されたアイダル大隊による数十人の殺戮などは、「集団の一部を殺害したジェノサイド」にあたるのではないか。


「反論がクッソ長いな」と思われる方も多いだろうが、なるべく公的文書を用いた正確な記録を残していくことが重要であり、これは、米欧日のプロパガンダ・メディアのホラ話に騙される人々に対して、参照すべきアーカイブ群を残す作業でもある。

 

 

② 国際機関の報告書の不備から見える事実

 

国連やOSCE、アムネスティ、ヒューマンライツ・ウォッチなどの国際機関の報告書も完璧ではなく、事実の一部をおさえるのみであった。
それどころか、実態を掴めていないなかウクライナ政府側・ドンバス側の武装勢力による被害を過度に相対化するあまり、「どっちもどっち論」に収束させようとしている意図さえくみ取れる。

50~200ページの国際機関の報告書40点を読みこんだ筆者が、「国際機関による報告書の不備」「念頭に置くべき事項」として認識するのは以下の通りとなる。
これはこの手の報告書を1件や2件読んだだけでは見えてこない。

 

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【国連やOSCEなどの国際機関による報告書の不備と、考慮すべき事項】

・内戦が始まった2014年当初は、ドネツク/ルガンスク共和国の行政機構が確立されていなかったため、ドンバス側から十分な事情聴取ができていない。
(他方でウクライナ政府からの情報に偏る非対称性があった)

・2014年当初のOSCEの監視官はドンバス地域でわずか158人(国連の監視官はウクライナ全体で34名)しかいなかったため、網羅的な情報収集・調査が困難であった。

・目撃者がいないなどの理由から、民間人の恣意的殺害等の戦争犯罪の犯人を特定することが困難であった。
(国際機関は過度な相対化を試みて双方のせいにする傾向があるが、平時の裁判においても殺人事件を立証するのにも数年はかかるので当然かもしれない)

・ドンバス側の被害者の多くは、拷問などを受けても治安部隊(SBU)やネオナチ系有志大隊の報復を恐れ告訴もできない。同様の報復を恐れ弁護士さえつかない

・ウクライナの司法機関は、自陣の犯行と疑われる民間人の殺害や拷問などの事件を捜査・解決する気がない

・捕捉しきれていない行方不明者が2000~数千人存在する。(ICMP・赤十字の報告)

・100万の国外難民のうち、大半がロシア・ベラルーシに避難している。

・犠牲者の死因は大半が空爆と砲撃によるものであった。空爆を行ったSu-25やMiG-29などの軍事航空機を持つのはウクライナ側のみであり、地上兵器の火力もウクライナ側が圧倒的に勝る。

・ATO(Anti-Terrorist Operation:対テロリスト作戦)が始まった2014年4月は、クーデター直後の暫定政権における正規軍の指揮系統の乱れのため、アゾフやアイダルなどの軍規の定まらない有志大隊が大暴れした。

犠牲者の殆ど、およそ8~9割がATOゾーンに指定されたドンバス内で、停戦ラインがしかれた後もラインの東側で生まれた。
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上記項目の証拠(国際機関による記述)の殆どは、先日のブログ記事にて紹介している。
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12733195168.html


「国外避難民の殆どがロシア・ベラルーシに渡った」ことは国連報告書でも報告される。
もし親ロシア側やロシアの民兵に殺戮や拷問されていたら、ロシアに逃げるだろうか?
このように間接的な「ウクライナ側の殺戮を示す証拠」は存在するのだ。

古谷経衡氏は「OSCEが虐殺と認めていない」と、「OSCE万能説」に寄っているようだが、上記事実からそうではないこともわかる。

また、小泉悠氏は、「ウクライナ東部でロシア系住民が虐殺されていると言うんだったらなんで今まで それを国際社会に訴えなかったんですかって話ですよ。…開戦直前の3日前、2月21日になって初めてそんなことを言い出したのかと聞いてみたい。」と得意げに発しているが、親ロシア側が、戦争犯罪や集団墓地などの虐殺事例を調査するよう再三わたってOSCEや国連に要請していたことや、ICC(国際刑事裁判所)やECHR(欧州人権裁判所)に提訴していたことさえ知らなかったようだ。
例えば日本語の国連報告書でも「2014年5月にロシアの国連大使が、米英独仏に対し『オデッサの惨劇』の調査・非難を求めている」記述が残る。
https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/protect/International_Protection_Considerations_Related_to_the_Developments_in_Ukraine_u1_J.pdf

この小泉という方はいったい何の専門家なのだろうか。


「OSCEの調査がいい加減」であることを示す「ドンバス・インサイダー」による以下の指摘は妥当に思える。
「ドンバス・インサイダー」はドンバス側の報道機関である。
(*このサイトは、現在DDoS攻撃を受けているようで繋がりにくい)

 

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▼ ドンバス「OSCEは、砲撃による民間人犠牲者の半数しか記録していない」
21/04/2020
https://www.donbass-insider.com/2020/04/21/donbass-osce-records-half-of-civilian-victims-from-shellings/

2020年にドンバスで銃撃・砲撃によって殺された民間人死傷者の数字を見ると、OSCEレポートの信頼性には非常に大きな問題があることがわかる。
実際、2020年1月1日から3月31日までのJCCC報告では、DPR(ドネツク共和国)の代表は、14人の民間人の負傷と2人の死亡を記録し、LPR(ルガンスク人民共和国)の代表は5人の民間人の負傷を記録した。ウクライナの代表は3人の民間人の負傷を記録した。

しかし、2つの国際機関のデータを比較すると、国連が22人の民間人のうち20人が負傷し、民間人の死亡を2人と記録したのに対し、OSCEは11人の民間人(DPR4人、LPR5人、ウクライナ2人)が負傷し、2人が死亡したと記録するにとどまっている。
これは実際の数(負傷22人・死者2人)の半分であり、また国連が示した数と比較しても半分程度となる。


 *筆者注:JCCCはドンバスの2州による報告のこと。実数(負傷22人・死者2人)に対して、OSCEは半分しか記録していない。国連も2人の負傷者報告を見逃している。

加えて、OSCEはロシア・ドネツク・ルガンスクからの再三の要請にもかかわらず、要約報告書では民間人の犠牲者を一括りにし、砲撃、小火器、対人地雷の犠牲者を混ぜ合わせており、民間人犠牲者が誰の責任であったのかが不明確なままである。

また、2020年1月1日から3月31日までのデータを見ると、砲撃・射撃によって殺害された民間人のすべてがドネツクで殺され、負傷した民間人の86.6%がドネツクとルガンスクで生じたことがわかる。ウクライナ側では13.4%となっている。


もしOSCEがこの数字を明確に示し、砲撃や銃撃による民間人の犠牲者が出たドンバスの場所を明示すれば、DPRやLPRの民兵ではなく、ウクライナ軍が意図的に民間人を標的にしていることが明らかになるはずである。
「巻き添え被害」という説明だけでは、DPRやLPRにおける砲撃による民間人犠牲者がウクライナ側の6倍もいることを説明できない。

OSCEは、民間人犠牲者について(例えば停戦違反の場合など)詳しく説明するよう繰り返し要求されているにもかかわらず、完全に歪んだ数字によって不可解な報告を発表し続けている。
DPRは、OSCE組織内のロシア代表に対し、OSCEのイメージを損ねるこの嘆かわしい傾向を正すよう圧力をかけるよう求めてきた。
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OSCE報告は、実数に比して半分しか記録していない。
国連報告にも不備がある。

2019~2021年は、砲撃や死者が最も少なかった時であったが、この比較的混乱の少ない時期であっても報告書の確度が低いことがわかる。

調査実施時期によっても異なるだろうが、国連はOSCEやアムネスティなどの報告を受けて報告書をまとめる。そして各国際機関それぞれに捕捉しきれていない事案が多数存在するのも事実であろう。

このように不備の多い国連やOSCEの報告書であっても、区域ごとの死傷者数が示すのは、圧倒的な非対称性である。
非政府管理区域の死傷者数は70~81%であった。

なお、以下に示したような図は、激戦時期であった2014~2016年の分は存在しない。これも統計の不備によるものと思われる。



出典: OSCE
https://www.osce.org/files/f/documents/f/b/469734.pdf



出典: 国連 HRMMU
https://ukraine.un.org/sites/default/files/2022-01/Conflict-related%20civilian%20casualties%20as%20of%2031%20December%202021%20%28rev%2012%20January%202022%29%20EN.pdf
国連 OHCHR
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Countries/UA/29thReportUkraine_EN.pdf



青山議員は得意の情報収集能力と衛星映像で、このような圧倒的な非対称性を確認していなかったのだろうか。
脳内ソースによるデマはエンタメとして人々を楽しませはするだろうが、戦時においては非常識なので控えたほうがよい。

以上のことから、国際機関が「ジェノサイド認定していない」ことについて(先般のICJ判決についても同様)は、主に犯行の加害者を確定できていないこと、また調査自体に不備があることが理由だと念押しするとともに、再度、ジェノサイドの有無を証明しうる報告書になっていないことを述べたい。

私は、殆どの殺戮行為や戦争犯罪の加害者は、ウクライナ側だと確信に近い認識を持っている。


さて、実際にジェノサイドと言える殺戮行為はあったのか知りたいところだろうが、その前にコロモイスキーやユダヤ人の件に触れなければならない。

 

③ ユダヤ系オリガルヒ・コロモイスキーによるネオナチ部隊の創設


古谷経衡氏の「アゾフ大隊の支援者のひとりがコロモイスキー氏であることは事実だが、アゾフ大隊の全部がユダヤ系では当然ない」という記述、また、小泉悠氏の「プーチン・ロシア側は…『今のゼレンスキー政権はナチスだ』と言っている。しかしゼレンスキーはユダヤ人なのでナチスってことはない。反駁しようと思ったらあまりにもツッコミどころが多すぎる。ずさんだ」という発言に対する回答を行う。

結論から言うと、古谷氏はだいぶ実態をつかんでいるが、馬淵氏が「アゾフ大隊はユダヤ人系のナチス」であると発言したと勘違いしたようで、意味不明な記述になっている。
当然だがアゾフの殆どはユダヤ人ではないだろう。
アゾフを支援する者、コロモイスキーやゼレンスキーがユダヤ人だというだけだ。

また、小泉氏は、専門家とは思えない杜撰さだ。
専門家ではない古谷氏にも劣る調査能力しか持ち合わせていないのではないだろうか。
アゾフのビレツキーやUNA-UNSOのコルチンスキーらネオナチの指導者たちは民族主義者であるので、ユダヤ人・ロシア人・ロマ人などの他民族を排斥し、純粋なゲルマン系の国家を望んでいる。しかし、その理想の国家を作るためにはオリガルヒや権力者の力も必要だというロジックではないかと思われる。例えその支援者がユダヤ人であってもだ。
資本家や軍事産業は、金儲けさえできれば誰にでも財政的支援や軍事支援を行う。支援された側も実益さえ伴えば、誰からでも支援を受けるだろう。
ヒトラーも支援者にはウォーバーグやI.G.ファルベンなどユダヤ系資本もいた。特に不思議なことではない。

実際に、イスラエルは国営軍事企業Fortを介してアゾフに兵器ライセンスの供与を行っていた。
https://electronicintifada.net/content/israel-arming-neo-nazis-ukraine/24876

ユダヤ人のジョージ・ソロスも、革命を起こしウクライナの民営化を進めるため、ネオナチ系のゴロツキに資金援助を行っていた。
https://jacobinmag.com/2022/02/maidan-protests-neo-nazis-russia-nato-crimea


ウクライナで3番目の大金持ちとされるドニプロペトロフスクの知事コロモイスキーは、2014年4月にドニプロ大隊を作った。
また彼は右派セクターの最大のパトロンであるほか、アゾフやアイダル、ドンバス、C14(スヴォボーダの武装組織)ら有志大隊にも資金提供したとして知られる。

英国の国際人権団体「オープンデモクラシー」は、2016年に以下のように伝えた。

 

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2014年3月3日、オリガルヒのイゴール・コロモイスキーがドニプロペトロフスク知事に就任した。
ウクライナ最大の銀行、石油・ガス企業、マスメディア(TVチャンネル1 + 1)、航空会社を含む国全体をカバーするコロモイスキーのビジネス帝国は、ドニプロペトロフスクで生まれた。
…コロモイスキー知事らは、彼らの地域の分離主義を抑制するために、合法とはほとんど考えられない方法を含め、可能な限りの方法を使用することを挑発的に認めた。 

オープンデモクラシー 14 January 2016
https://www.opendemocracy.net/en/odr/how-eastern-ukraine-was-lost/
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ウォールストリート・ジャーナルは、コロモイスキーがアイダル大隊を公に支援し、アゾフ、ドンバス、ドニプル-1、ドニプル-2大隊を含む他の民兵グループにも資金を提供したと報告した。
https://www.vox.com/2015/2/20/8072643/ukraine-volunteer-battalion-danger

上記アイダル大隊は、国際人権団体アムネスティ・インター―ナショナルに「数十人の民間人を殺戮・拷問した」と糾弾された極右・ネオナチ系の有志大隊である。


ATO初期となる2014年4月17日のガーディアン誌は、コロモイスキーが、ロシアの「破壊工作員」の捕獲に1万ドル(約110万円)の懸賞金を出すことを約束したと伝える。
https://www.theguardian.com/world/2014/apr/17/ukrainian-oligarch-offers-financial-rewards-russians-igor-kolomoisky

ウクライナの物価を考えると、日本では数百万円の価値に相当する大金である。
多くの無法者が報奨金獲得のために親ロシア派の征伐に参加したことは想像に難くない。

コロモイスキーはアゾフやアイダル、ドニプロ大隊のほかにも数々の残虐行為を行った「右派セクター(UNA-UNSO)」のパトロンとしても知られる。下記画像はOCSE(欧州安全保障協力機構)の報告書からである。



この報告書では「2014年の政権交代後、ネオナチの思想を持つ戦闘組織の代表が権力機構に浸透してきた」とも伝える。

2015年7月29日のロイターは、コロモイスキーの支配する右派セクター系有志大隊とそのリーダー、コルチンスキーに関して以下のように伝える。   

 

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超国家主義の政党(*筆者注:UNA-UNSOのこと。現右派セクター)の元指導者であり、敬虔な正教会のキリスト教徒であるコルチンスキーは、クリミアを取り戻すためにキリスト教の「タリバン」を作りたいと考えている。彼はあきらめない。
「私はウクライナに十字軍を率いてもらいたい
「私たちの使命は、占領者を追い出すだけでなく、復讐することでもある。モスクワは燃えなければならない」と自身の大隊に「聖マリア」と名付けたコルチンスキーは言った。

2015年7月29日 ロイター   
https://www.reuters.com/article/us-ukraine-crisis-battalions-special-rep-idUSKCN0Q30YT20150729
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「ウクライナが十字軍を率いる」とは、「この重要な世紀における我が国の歴史的使命は、ユダヤ人ら劣等人種に対する作戦によって、世界の白人国家を最後の十字軍に導くことである」と発したアゾフのビレツキーの思想にそっくりである。 

http://web.archive.org/web/20100216231547/http:/rid.org.ua/?p=256
上記の「劣等人種(Untermenschen)」とはユダヤ系・ロマ系・ロシア人を含むスラブ系の蔑称であり、戦時中にはナチスにより常用された。


2017年、チェコの国際的なロマ人ネットワークのサイトでは、「オデッサは、『ロマ人は盗賊であり殺人者だ!』などと書かれた反ロマのポスターで溢れている」としながら、オデッサに移住してきた数千人の右派セクターの仕業であることが示唆されている。
http://www.romea.cz/en/news/world/ukraine-odessa-is-flooded-with-anti-romani-posters

また、右派セクター元リーダーのドミトリー・ヤロシは、2014年4月に当時800人から成る「ドンバス大隊」を設立している。このドンバス大隊もコロモイスキーに支援されたといわれる。
http://www.romea.cz/en/news/world/ukraine-neo-nazis-from-right-sector-form-donbas-battalion-to-handle-pro-russian-separatists

その右派セクターもまた、アゾフと同様に国家の軍事組織に編入されている。
2014年3月、トゥルチノフ大統領代理の命令で、国防省・内務省支援の領土防衛大隊(Territorial defence battalions)に編入された。
https://en.wikipedia.org/wiki/Territorial_defence_battalions_(Ukraine)#List_of_special_police_units_(MIA)

コロモイスキーが支援する有志大隊は、極右・ネオナチの思想を有しているだけでなく、「かなりの数の犯罪者」が含まれる。
アゾフのビレツキーも殺人容疑で収監されていたところ恩赦された経緯がある。推して知るべきである。
国連の2015年~16年の報告書では「かなりの数の服役経験者や犯罪ネットワークの一員が、有志団体に参加した(第35段落)」と報告される。


上記国連報告書でも触れられる「トルネード大隊」の8人のメンバーは、レイプ、殺人、密輸などの犯罪で告発されており、ウクライナ当局によると隊の約40人のメンバーが前科を持っているとされる。
https://www.reuters.com/article/us-ukraine-crisis-battalions-special-rep-idUSKCN0Q30YT20150729

実際に、極右・ネオナチは戦場以外でも数々の犯罪行為を行っている。
C14やUNA-UNSOの構成員はジャーナリストを殺害、フランス人テロリストはウクライナの極右と共同でフランス国内で、外国人を殺害する大規模なテロを起こそうとし逮捕された。
https://khpg.org/en/1518396244
https://www.bbc.com/news/world-europe-36460569

コロモイスキーはこれらの無法者たちを、ドンバスへの攻撃だけでなく、私的な利益を追求するために活用してきたことも疑われた。

 

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しかし、部隊の最終的な忠誠心がどこにあるのか、つまりウクライナ政府になのか、それとも地域の給与支払者になのかは疑問がある。
先週、マスク姿の武装集団が首都キエフにある国営石油会社『UkrTransNafta』の本社を襲撃した。
コロモイスキーの重要な協力者であるオレクサンドル・ラゾルコ取締役が解任されたことを受け、同本社を襲撃させたのだ。

ビジネスインサイダー 2015年3月25日
https://www.businessinsider.com/the-pocket-army-controlled-by-sacked-ukrainian-billionaire-igor-kolomoisky-2015-3
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さて、今回も長文になったため、このあたりで次回に続けようと思う。

次回はゼレンスキーの正体を暴く。

ではまた。

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