https://ministerfaust.blogspot.com/2009/06/tonight-on-terrordome-part-2-of-five.html

 

 


今日はPublic Enemyの話をしようと思ったのだがやめた。
先にMichael Hudson(MMTer)と5%ersの話をしたほうが、このシリーズの趣旨が伝わりやすいと思った。

それと今まで特定の国際銀行家による支配を陰謀論と表現してきたが、これも使用する語句を「陰謀論」ではなく、「銀行家支配論」と変更したほうが良いのではないかと思った。
「陰謀論」というと「ユダヤの陰謀論」だと勘違いする人が多いだろうから、語句の使用には注意を払う必要がある。

例えば、いまだに「ユダ金」などと言ってる人たちにも、特定の人種について言及せずに題材を扱うことをお勧めする。
その特定の対象のことは「1%」でも良いし、「銀行家」「国際金融資本」「グローバリスト」「グローバル資本家」「バビロン」「ウォール街」「オリガーキー」「ディープステイト」など同じような呼び方はいくらだってある。
ユダヤ人で大統領候補のバーニー・サンダースは「1%」「ウォール街」「オリガーキー」という語句を好んで使う。

矛先がぶれると誤解を生む。

それとついでだけど、私はレプテリアン説やワクチン陰謀、人工地震、フリーメイソンやイルミナティの陰謀、サタン信仰など、証明しようがない題材にはあまり興味がない。


これらとの違いを示し、誤解を避けるために、「銀行家支配論」としたほうがいいと思った。


さて、この銀行家支配論の視点をMMT派が代弁すると以下のようになるという話を、マイケル・ハドソン教授の文章を引用するかたちで例示したい。



ロシア国営放送「RT」に出演するハドソン教授
https://www.pinterest.com/pin/316026098848541757/


マイケル・ハドソン教授は、カンザスシティのミズーリ大学の経済学の研究教授であり、バードカレッジのレヴィ経済学研究所の研究員、MMTの始祖ランダル・レイの研究メイトだ。

ランダル・レイが今年2020年に発表した論文「The “Kansas City” Approach to Modern Money Theory」には、そのカンザスシティ派がアメリカのMMTの中心的研究施設であり、ケルトンやチェーネバ、フォステーターらもこの周辺だということが記されている。


ケルトン教授とチェーネヴァ教授
https://www.retemmt.it/kansas-city-nuova-della-mmt/

以下のハドソンの報告では、米国では金融関係者や政策担当者のあいだで少しMMTが理解されることになったが、金融緩和によって金融部門を支えるための口実にMMTが悪用されていると指摘されているので、これを抄訳する。
 

▼ MMTの使用と乱用 - マイケル・ハドソン
https://michael-hudson.com/2020/04/the-use-and-abuse-of-mmt/

(前略)
金融部門とその債務負担を補助する国の政策は、 「実体経済」 を支えることはなく、むしろデフレ化させてしまう。
その効果は金融・銀行部門に力を与えることであり、その産物は非生産的で、実際に搾取的な形をとった信用と債務の創出である。
(中略)
(MMTの赤字支出による)このようなアプローチを詳細に検討した結果、民間部門の債務のダイナミクスに起因する不安定性ではなく、こうした赤字がいかに安定性を生み出したかが明らかになった。
(中略)
しかし、政府が財政赤字を計上して経済成長するだけに十分な購買力を供給しないのならば、銀行に対して貨幣と信用を提供する役割は、銀行が決定する目的(主に不動産、株式、債券の購入を目的とした貸付)と利払いのために、放棄されなければならない。この点で銀行は、誰が経済に貨幣と信用を提供するかについて、政府と競合関係にある。
(中略)
銀行はそのために、政府が自ら貨幣を生み出す行為を阻止する必要がある。その結果、民間銀行の信用と公的資金の創出との間に対立が生じる。公的資金は、主に生産と消費の成長を維持するために、社会的目的のために作られる。しかし、今日の銀行信用は主に不動産、株式、債券などの金融資産の移転のために作られている。
(中略)
本来、「経済」とは生産・消費部門のことを意味し、金融・不動産市場のことではない。
(中略)
しかし、富裕層の1%、または10%にとっては、「経済」は「市場」のことでであり、具体的には所有する資産、つまり不動産、株式、債券の市場価値を意味する。
(中略)
オバマ元大統領は、住宅ローンなどの不良債権を実体経済市場に運用させず、代わりに銀行を救済して不良債権を作る(NINJAローンの借り手への「虚偽の貸出金」や、FRBの信用供与や救済措置を受けるために 「銀行」 として指定された証券会社によるデリバティブに対する悪い賭け)ことで有権者を裏切った。
銀行のバランスシートが新たな信用貸付を行う能力を損なったため、政府は独自の信用貸付を行う介入をした。これにより銀行は、シャドウバンクやその他のノンバンクに大量の信用貸付、つまり差し押さえ物件を買い占めて賃貸物件を建てる豊富な機会を与えた。この政策はBlackstoneによって企画され、この危機を、参加者に莫大な利益をもたらすチャンスに変えた。投資家が参加するには最低500万ドルのトランシェが必要だったため、その効果は経済の二極化を強めることになった。
(中略)
FRBによる4兆6000億ドルの量的緩和は、技術的には資産スワップであるため、貨幣創造ではない。この場合「ガラクタを高く評価する」ようなものだ。この資産スワップの効果は預金流入に近いものであった。これにより、銀行は株式・債券市場の低迷を乗り切り、買収資金の融資や金融投機を行うことができたのだ。
(中略)
ウォール街によるMMTの金融面の捕捉は、経済を再生させるのではなく、資産価格を上昇させるためのものである。
(中略)
貨幣とは借金のことである。雇用と生産のために支払う公共目的のための政府資金創出は、繁栄を促進する。しかし、現在の形では、民間部門の債務創出はほとんど搾取的になっており、その結果、逆の効果、すなわち債務デフレにつながっているのだ。
(中略)
金融部門を救済することによって生じた財政赤字は、指数関数的に拡大する債務の経費を経済が担えないことを反映している。この経費は複利計算の結果として増加するため、救済措置の規模は常に増加しなければならず、それに伴い、銀行や金融投資家による損失を防ぐ代わりに、この債務超過を補うための財政赤字が増加するのだ。
(中略)
生産と消費の 「実体経済」 を犠牲にしてウォール街が再び救済されれば、米国は民主主義体制から完全な金融寡頭体制へとなり果てるだろう。
(中略)
今日、これらの資金提供者は、シチズンズ・ユナイテッド判決(スーパーPAC導入を決めた裁判)を通じて、米国の選挙政治をも支配している。政治局は民営化され、最高入札者に売却された。これらの資金は金融セクター、つまりウォールストリートや金融会社からのものである。


どうだろうか、かなりややこしい文章なので、文脈を見失ったかもしれないが、要するにウォール街の金融オリガーキーが、自分達の信用貸付などによる儲けを奪われないようにするために、政府による実体経済への支出の機会を奪っている。さらにこのオリガーキーが人々を負債の網に陥れるだけでなく、中央銀行や政府の意思決定過程、または選挙制度まで牛耳ってしまっている、という話だ。

銀行家支配論そのものではないだろうか。

それをただ、難しい専門用語を使って、実際の銀行のオペレーションなどの観測結果をもとに、学術的に言い表しているに過ぎないということだ。

そして私が指摘するのは、アメリカのHip Hopper達が、学術的考察ではないにしても、イスラム教徒のネットワークを介して、この手の知識を得て、ずっと批判していたということだ。

ただ単に「バビロンや資本主義を批判するのが流行りだったから」という理由で、彼らは似たような歌詞を書いていたのではなく、そこにある一定の「系譜」が発見できたのだ。
だから私はこんなに熱くなっているのである。

では、そのイスラム教系のHip Hopperは誰なのかという話になる。

90年代前後から活躍してきたDJ Spookyが、MIT出版から出した「Sound Unbound(2008)」という書籍から抜粋する。
DJ SpookyはDJ活動を続けるかたわら大学教授も務めるインテリだ。
 

▼ Sound Unbound, an anthology of writings on electronic music and digital media (MIT Press, 2008).
https://mitpress.mit.edu/books/sound-unbound

Appendix: Who's Who in Muslim Hip-Hop
A very incomplete, always evolving, list of artists who profess Muslim faith (Five Percenter, Nation of Islam, Sunni, Shi'a, Sufi, etc.) or have been influenced by Muslim beliefs
: Afrika Bambaataa Afrika Islam After Hijrah Akbar Ali Shaheed Muhammad, formerly of A Tribe Called Quest An Nasr Arab Legion Azeem Big Daddy Kane Brand Nubian The Brothahood Brother Ali Busta Rhymes Capital D Common Daddy O (Stetsasonic) DAM Divine Styler 11:59 Encore Erykah Badu Eve Everlast Frontline Generation M Guru (Gang Starr) Halal Styles The Hammer Bros. Ice Cube Intelligent Hoodlum Iron Crescent The Iron Triangle Jeru the Damaja Jurassic 5 Kam Kenny Muhammad Kool Moe Dee KRS-One K-Solo Ladybug Mecca (Digable Planets) Lakim Shabazz The Last Poets Lupe Fiasco MC Ren Mecca 2 Medina Mobb Deep Mos Def Mujahideen Team Napoleon (Tupac's Outlawz) Nas Native Deen Old School Paris Poor Righteous Teachers Prince Akeem Professor Griff (Public Enemy) Q-Tip (Fareed Kamal), formerly of A Tribe Called Quest Queen Latifah Rakim Roots Shorty (Da Lench Mob) Sister Souljah Sons of Hagar Tyson World Famous Supreme Team Wu-Tang Clan Young Messengerrzz
https://web.archive.org/web/20131002100445/http://www.shobak.org/text/hiphop-full.html


句点がないのでわかりづらいが、錚々たる顔ぶれだ。
また、Five Percenter, Nation of Islam、スンニ、シーア、スーフィなど、いろんな宗派がごちゃ混ぜになっているので注意が必要だが、90年代のHip Hopperが総出演している。

最も人数が多く、豪華な面子が揃う5%ers(Five Percent of Nation / The Nation of Gods and Earths)のメンバーだけに着目すると、そのメンバーは以下の通りとなる。5%ersはNOIの分派系だ。

 

5%ersのリスト:
Big Daddy Kane, Rakim, Wu-Tang Clan, Brand Nubian, Diamond D(DITC)、Nas, Common, Poor Righteous Teachers, AZ. Jay-Z, Killah Priest, Digable Planets, J-Live, Erykah Badu, Queen Latifah, Planet Asia, Guru、Busta Rhymes、Gravediggaz、Black Sheep、Large Professor(Main Source)、Divine Styler、Mobb Deep、K.M.D.、The World Famous Supreme Team、The Fugees、The Roots、De la Soul,N.O.R.E.、Styles P, Smiff n Wesson、Lupe Fiasco、DJ Khaled
https://en.wikipedia.org/wiki/Five-Percent_Nation
http://archive.boston.com/news/globe/ideas/articles/2003/12/21/the_five_percent_rap/
https://www.urbandictionary.com/define.php?term=Godbody
https://archive.org/details/isbn_9780253345745/page/n11/mode/2up
http://www.isc.meiji.ac.jp/~tomyam/hiphop.html

*上記は私cargoが復数のソースから得た情報だが、確証はない。
 今は辞めた者や影響を受けただけの者も含まれるのかもしれない。



Big Daddy KaneとErykah Badu
http://www.xxlmag.com/news/2014/10/five-percent-nation-conscious-concert-in-harlem/

加えて、未確認ではあるが、DJ Spookyと他の日本人の方が、2000年代以降の人たちも調べてくれている。

 
Generation M(Generation Yまたはミレニアル世代ともいう。主に85~95年生まれ):
Capital D, Sons of Hagar, After Hijrah 11:59, Arab Legion, Divine Styler, Halal Styles, Iron Crescent, Jamil Mustafa, Kenny Muhammad, Mujahideen Team, Native Deen, the Hammer Bros., the Iron Triangle, and Young Messengerrzz.
https://web.archive.org/web/20131002100445/http://www.shobak.org/text/hiphop-full.html
T-ペイン,SZA,スウィズ・ビーツ,ケヴィン・ゲイツ,フレンチ・モンタナ,フリーウェイ,ビーニー・シーゲル,エイコン,スカーフェイス,シェック・ウェス,ニプシー・ハッスル
彼らの多くはネーション・オヴ・イスラーム(NOI)を中心に信仰しているようですが,各アーティストによっては,どれくらい信仰しているかについての程度の差はあると思います。
https://raphabit.com/2019/06/15/%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%90%e3%83%a0%e3%80%8eye%e3%80%8f%e3%81%ae%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%81%8b%e3%82%89%e4%bb%8a%e5%b9%b46%e6%9c%881%e6%97%a5%e3%81%a71%e5%b9%b4%e3%82%92%e7%b5%8c/

Hip Hop好きであれば、ここに列挙されているグループ名や人名に驚くばかりだろう。

2000年代以降にムスリムが減るのは、9.11に際して愛国者法が導入され、ムスリムに対する検閲や弾圧が始まったことが関係すると言われる。
そしてHip Hopがメインストリーム文化になり、リリックの内容がギャングスタ、金、女性、ドラッグなど軽薄な対象に移り変わったこと、また、メディアが徹底的にNOI潰しに走ったことや、黒人音楽ラジオ局のHot97がビーフ(ラッパー間の闘争)ばかり煽ったこともその理由として挙げられている。

さて、そんなわけで、次回からまた、このリストにある人名からピックアップして、彼らが銀行家支配についてどのようなリリックをつづっていたのか、リサーチしていきたいと思う。

次回こそ、Public Enemyだ。


ご覧いただきありがとうございました。

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