先日、またまた池上彰さんがやらかし、ツイッターで話題になっていました。

池上さんはもうこの手の財務省の大嘘プロパガンダを定期的に宣伝するための工作員となってしまったのですかね…。
問題の放送は15日のものですが、この悪質な「国の借金デマ」を何度も垂れ流しているわけですから、BPO行きは確実です。

なぜ我々がこんなにもマスコミの「国の借金デマ」をしつこく非難するのかと言いますと、この「国の借金デマ」が人を不幸にするからです。
その例として、相模原で障碍者数十人を殺傷した植松被告が「国の借金が大変なので、生産性のない者を安楽死させる」として凶行に及んだ件が挙げられるでしょう。

「国の借金は返さなければいけないのだから、政府は支出を絞らなければいけない」などという間違った認識を持てば、愚かな緊縮財政の世論を形成することとなり、不況を悪化させたり、貧困や自殺者を増やす可能性もあります。
実際に、安倍政権はこの手のデマのままに、激ショボのコロナ対策で不況を長引かせ、人々を苦しめています。

池上さんがデマを改めないのだから、我々も何度でも同じような指摘をせざるを得ません。
以下でそのデマを検証していきます。



「池上彰のニュース”うそ”だったのか」の画像部分は誰かが作成したパロディーですが、それ以降は実際のテレビ画面からです。
それによると、「日本は、収入だけでは足りないから借金している借金大国」とのことです。
そもそも政府債務は借金とも言えないのですが、まあここまでは、いつものマスコミの感じなんで許容範囲内とします。
問題は次のシーンから。



「国の主な収入源は”税金”」とのことですが、これはマクロ経済学の最新の議論から、事実ではないことがわかります。
国の財源は税金ではありません。
支出することであらたなお金が創造され財源となります。

支出こそが財源です。

その支出の裏付けとなるのが国債、もしくは準備預金(日銀当座預金)となります。詳細は後述します。

 

「国債は借金だから返さないといけない」とのことですが、実際は返さなくてもよいものです。
池上さんの言うように貨幣の循環は「返済する分のお金を再び借りて返している」形で保っているのですが、これは、いくらでもずっと借り続けていてよいお金だからです。
だから、悪循環でもなんでもありません。
国債という債券は事後的に日銀に借り上げられ、国債整理基金特別会計を介して借り換えを繰り返しそこで消化されていくものです。
加えて、貸主である日銀には、借主の政府から利払い費が入りますが、その余剰金は親会社である日本政府の国庫に返納されます。
つまりお金はぐるぐる回っているだけと言えるので、政府は返済しているように見えているだけというわけです。
また、国債はいちど日銀に借り上げられれば徐々に消化されるだけなので、本来なら一般会計予算にその償還費用を計上する必要もありませんし、実際に諸外国ではそのような会計処理を行っているのですが、なぜか日本だけは償還費を計上するよう処理しています。
そのため、「一般会計の歳出の部の償還費の項目」だけを見て、「国債の償還費を払っている(借金を返済している)」と勘違いしてしまう池上さんのような人を生む結果につながっています。
 

【参考】世界でも特異な国債60年償還ルールは廃止が当然 - 関西学院大学・朴勝俊教授
https://economicpolicy.jp/2020/02/25/1191/
 

 



「国が国債を発行すると銀行が買う」「そのお金は君たちの預金」とのことですが、この部分は”完全な虚偽”となります。
国債を買うお金は皆さんの預金ではありません。この説明は後述します。



池上さんは「国債は間接的に国民のお金で買う」と、しつこく虚偽の話をアイドルやお笑い芸人に刷り込もうとします。
池上さんの説では、民間銀行預金の金額が、国家の財源の制約になるということになりますが、そんなことがあるわけがありません。
じゃあ皆さんの預金額が少なくなったら国家財政も縮小するんですか??

このことをちゃんと理解するには「バランスシート(賃借対照表)」でお金の流れを見る必要があるのですが、経済学にあまり興味のない方にはかなり重荷になるので、そんな人のために、感覚的に理解するための一文があります。


「あなたの私有財産である銀行預金を、私企業である銀行が勝手に使って投資しているわけがない」


貨幣創造(信用創造)のメカニズムを説明する画像も、二方向から紹介します。
まずはポストケインジアン的説明から。

画像出典:Nonsukeさん

 

以上のように、国会でも国会議員と日銀の委員によって、「銀行預金で国債を買っているわけではない」ことが確認されています。

 

PK派の説明の場合は、政府がまず国債を出すところから信用創造が始まりますが、MMT派の説明ではどうでしょうか。
以下は、望月慎氏の書籍の説明をかるかろどん氏が動画にし、それを私がさらに画像にしました。


出典:かるかろどんさん(原典:図解入門ビジネス 最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本 望月 慎)
https://twitter.com/karukarokarukar/status/1289465428633214977

 

以上のように、PKの場合とMMTの場合とで多少順番が違いますが、まあ内容は似たようなものとなります。
いずれにしても、「政府が支出を決め、その発令に従って銀行が貸し出す時に通貨が生まれる」ことに変わりはありません。
もちろん民間預金で国債を買っていないことも、両者の説明からよくわかります。

余談ですが、PKの視点とMMTの視点の異なる部分に関してですが、MMT派にとって、「国債は、準備預金を回収するために発行される」ことが肝でもあるようです。
先月発刊されたランダル・レイの論文でも、冒頭のIntroduction部で「taxes create a demand for the sovereign’s currency, bond sales by the sovereign are not really a borrowing operation but rather are used to drain excess reserves from the banking system 【拙訳】徴税は主権通貨に対する需要を生み出し、国家による債券(国債)の販売は実際には借入のための操作ではなく、銀行システムから余剰な準備預金を排出するために使用される」と綴っているほど、重要なようです。
 

最後にもう一点だけ加えさせてください。

 



上記の「日銀が国債を買った分だけお金が出回る」との説明も虚偽です。

日銀が国債と交換するのはマネタリーベース(準備預金=日銀当座預金と同義とする)であり、これは実体経済市場に決済手段として出回る通貨ではないからです。
要するに、このお金は、私たち民間の非金融部門が使えないもので、種類が違うのだと考えるとわかりやすいと思います。
日銀が国債と交換するかたちで民間銀行に提供した準備預金は、銀行が貸し出すときに、その見合いで通貨を生む(信用創造)仕組みになっているので、日銀が国債を買っただけでは市中にお金は出回りません。

実体市場をめぐる、私たちが使える通貨の総称をマネーストックと呼びます。


出典:不明

張飛が「なんでマネーストック(通貨)がまわってこないのだ!?」と嘆いていますが、こんなのは当たり前の話なのです。
例えば、アベノミクスの量的金融緩和も、マネタリーベースを増やしただけなのだから、それだけで実体市場にお金が出回るわけがなかったというわけです。



池上さんは先月の番組でも「国の借金(国債)は、国民が返していくべきものだ」「若者も責任感を持て」というような報道をしていました。
まったく悪質な限りですが、番組を視聴した1000万人くらいが影響受けるわけですから脅威でしかありません。


本ブログ冒頭で触れたように、我々がマスコミの「国の借金デマ」をしつこく非難するのは、これが人を不幸にするからです。
例として、「国の借金が大変なので、生産性のない者を安楽死させる」として相模原で障碍者数十人を殺傷した植松被告の件が挙げられます。

「国の借金は返さなければいけないのだから、政府は支出を絞らなければいけない」などという間違った緊縮財政の認識を持って、不況や貧困、自殺者を増やす世論に加担してはいけません。


そんなわけで、皆さんも、池上さんに騙されて「国の借金デマ」を心配している人を見つけたら、「それデマだから心配しなくても大丈夫だよ」と教えてあげてください。
おそらく日本人の98%くらいがこのデマを信じてしまっていますけども。


本日はここまで。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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