昨日、れいわ新選組の総会で、渦中の大西つねき氏が除籍処分となりました。
大西氏が謝罪の強要は支配的だ等として謝罪の撤回をしたためだといいます。

なんとも言えない結末となってしまいました…。

会見で山本太郎代表が「供給能力の上限問題」には触れず、「財政的制約のために命の選別をするのはよくない」というようなことしか言わなかったのは気になるところですが、今回の大西騒動により、あらたに俎上に上がったこの「供給能力の上限問題」は、カタストロフィーともなりかねない問題なので、本当にどこまでヤバい問題なのか検証せずにはいられないとも感じました。
大西氏の提起したこのハードルを越えられるという確証が得られない限り、ずっとモヤモヤし続けるのだろうと思うのです。

我々反緊縮派は「政府には財政的制約はないので、問題を介護分野における供給能力の上限や需給問題だけに絞る」という点でコンセンサスを得られているのだと思いますので、これを検証していきたいと思いました。

そのうえで、この問題を端的に、「少子高齢化のスピードが速すぎて、終末期医療・介護に関わる人材が足りなくなってしまう。他の産業から労働リソースを割かなくてはならなくなる」というふうに設定することにします。

そして、この問題が事実なのかを確認するために、「生産年齢人口、65歳以上の人口、要介護者数、介護人材数」を調べて、2020ねんから2060年まで十年ごとに各項目を推計していく」という形で簡易シミュレーションを作成することにしました。

とは言うものの、この手のシミュレーションは変数の設定によって結果が左右されますので、あまり意味はないかもしれません。
ですから、このシミュレーションを通じて、「これだけのハードルを越えなければいけないのだ」という感覚をつかむというとらえ方程度に収めるのがいいかもしれません。

 

〇 生産年齢人口と65歳以上の数はこちらの総務省の平成30年(令和元年)報告のデータを利用します。
(こちらはエクセルのみで画像はありません)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd101100.html

〇 要介護認定者数と介護職員数はこちらの厚労省のデータを利用します。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000531297.pdf

ちなみに、厚労省が「2025年に向けた介護人材ニーズ(第7期計画に基づく介護人材の必要数)」などで、2025年に必要となる介護人材を推計していますが、どうも変数がよくわからないので、無視します。

 

結果として下記の図のように推計できました。

・確定データが出ているのは2017年度までです。

・要介護数対65歳以上人口を割り出したところ、近年は約18%でした。後期高齢者が増えているので年々要介護の割合が高まっているようですが、簡素化のためこの「18%」という比率を用いて2020年以降も推計しました。

・介護人材数対要介護数を割り出したところ、近年は約30%でした。介護人材が不足している理由で、15年前まで要介護者四人につき一人(25%)の介護人材が就いていましたが、現在は三人に一人(30%)となっているため、推算の簡素化のため平均比率を「30%」と設定しました。(この点は人材不足に苦しむ介護従事者の皆さんに対しては心苦しい限りですが、このように設定させてください)

・2060年だけ、複数の推計結果を出しました。要介護数対65歳以上人口を現在の増加傾向に合わせて「20%」に設定したものと、2013年の厚労省推計値を利用したものも推算しました。これは予防原則の観点から悪いケースも出す必要があると思ったためです。

なお、13年推計の生産年齢人口が少ないのは出生率を低めに設定しているからだと思われます。
この2013年度版「我が国の高齢化の推移と将来推計」の2060年推計値によると、生産年齢人口が4418万人、65歳以上の数が3464万人となっています。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141210.html

 

【推計結果】
2017年の確定値では、介護職に就く人材は、生産年齢人口の39人に1人(2.6%)の割合でした。

2060年の推計では、介護職に就く人材は、生産年齢人口の25人~21人に1人(4.0~4.7%)の割合となりました。

 

 

30~40年後の介護業界では、今よりもだいたい倍くらいの労働リソースが必要になる計算になります。
ただでさえ生産年齢人口が半減して、他の産業でも人手が足りなくなるのに、介護分野は倍の人手が必要になるのです。

これはもう無理ゲーなんではないかと匙を投げたくなりますが、なにがなんでも解決方法を考えなければなりません。

こういう可能性があることを勘案せずに、ちょっとでもこの人口動態と供給能力上限の問題に関して危機感を表明した人間にたいして、感情論のみで「ナチスの優生思想だ」と叫ぶのは勝手ですが、この現実を変えるために必要な努力を考えると、私は目の前が真っ暗になる思いでもあります。


そんなわけで、私の足りない頭で考えると、例として以下のような解決策が得られました。

〇 2025年から出生率を2以上にして生産年齢人口を6000万人ほどに保つことができれば、2060年の介護人材を27人に一人程度に抑えることができるかもしれません。
(今から超積極財政で若者を支え、婚姻を促し、出生率を上げなければなりません。もしくは、多くの子供を産んでもらうために「婚姻のあり方」自体を規制緩和で変え、事実婚や養子制度を緩和し、それに対して社会的差別なきように政府が広報すべきかもしれません)

〇 機械化することで必要な人材が半分になったら、介護人材は生産年齢人口40人に一人くらいに抑えることができ、とりあえず現状は維持できるかもしれません。もし機械化した場合の能力が人材抑制効果25%であれば、介護人材は30人に1人は必要になります。
(機械化がどれだけ万能なのか推定できませんが、財政的制約はないので無尽蔵に公共投資し、10年~20年で技術革新をし、スーパーロボットを製造・普及することができると希望的に考えれば、必要な介護人材の抑制が可能になるのかもしれません)

〇 介護人材となってくれる移民を50万人ほど受け入れれば、2013年推計ベースで考えたとすると、「生産年齢人口4418万人÷(介護人材207万人-移民50万人) = 28人に1人の介護人材」となります。
(財政的制約はなく、いくらでも低所得層の経済的支援をできるという前提が成り立てば、移民受け入れによる移民自身と国内労働者の低賃金化を抑えられると想定します。なお、本件は喫緊の課題ですので、文化的軋轢や犯罪率などの問題を考慮することはできないものとさせてください)

以上三点は、現状考えられうる対策となりますが、このレベルの努力をして、やっと他の産業から労働リソースを割く必要がなくなるのだろうと思います。


「介護職の賃金を上げれば就労者が増えて解決!」などと言う人もいますが、これもよく考えると、例えば介護職の賃金を2倍にしたとすると、それだけ他の産業から労働リソースが移動するのではないでしょうか?
2040年や2050年に介護職がそれだけの高賃金だったら、生産年齢6000万人以下の社会では、他産業のリソースがひっ迫してしまわないだろうかとも心配になります。
仮に全産業で同じように賃金が倍になったら、介護職に対する就労意欲も減退するので、うまく各産業の賃金のバランスを取っていかなくてはならないのだろうと思います。

政治的・実際的な問題もあります。
緊縮志向にあり少子化対策を殆どやってこなかった、又はこれからもやりそうにない自民党は完全にアウトなので、まずは政権から退いてもらう必要があるでしょう。
そして民主党系にも、現在も続く根強い緊縮志向を改めてもらって、野党連合政府として政権の座についてもらって、5年後から抜本的な少子高齢化対策を始めてもらわなければなりません。(この場合、衆参両院の議席を抑える必要があるため、最速でも5年はかかると考えられます)

私は、数々の悪法を立法した自民党議員は許せないと思っていますが、この問題を解決するためであれば、西田・安藤氏ら自民若手グループと手を組む必要もあるのだろうとも思いました。(その際は、彼らの人権意識などに関する懸念は不問としなければなりません)
というか、今すぐにでも、積極財政派であるれいわ、立憲若手、国民民主、自民若手で手を組んで、連合政権を作らないと、この少子高齢化爆弾処理ゲームはタイムオーバーになるんじゃないかと恐怖しています。

大西氏の問題提起のおかげで、供給能力の上限問題をクリアし、全ての人の命を守る社会を作るためには、上述したような抜本的で、かつ不断の努力が必要であることがわかりました。

できたら説得力のある当事者である木村議員か船後議員に、国会で、この手にの試算をもとに「今からこういう対策をしないと大変な社会になりますよ」と、政府を脅しつけてほしくも思いました。


以上、本日はここまで。

なにぶん、ど素人の推計ですので間違っている可能性もあります。もし不備があったら教えてください。

ご覧いただきありがとうございました。


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