私の肌感ではあるけど、多くの山本太郎支持者は宇都宮さんも応援しているのだろうと思います。
山本・宇都宮双方は、「弱者を救うことこそが経済対策になる」と正しい経済観を持っているので、当然でしょう。

山本派にとって、もし宇都宮氏が都知事選で勝ったとしても大きなデメリットはないように思えます。
あるとすれば、こたつ〇こ先生やタナ〇ン先生ら野党共闘を神とする緊縮カルトのマウンティングが多少ウザいくらいか、宇都宮氏が山本氏ほどの大胆な支出案を組めないのではないかという懸念くらいでしょうか。

さて、先日山本太郎の支出案に関してシロウトながらに検証した結果、前提として「コロナを災害対策基本法に災害指定する」ことが絶対に必要な案であることがわかりました。同時に「日銀の都債買い入れ」がオペレーション的に意味があるのかないのかよくわからなかったという結果になりました。
(日銀買い入れの件は、薔薇マーク系の先生方からもアドバイスをもらったので次回にでもまた詰めます)
【6/30追記: 「災害指定」が絶対的に必要というわけではないかもしれません。力技ではありますが、不同意債は総務省の同意が得られずとも起債できるとする規定ですので、山本氏の言う「都知事として災害認定し他の県知事らと国を突き上げる」案が許容される可能性もあります】


今回は宇都宮支出案に関しても考えてみたいと思います。

▼赤旗の報道から
>その上で、大型開発を中止し、年間約15兆円の予算を組み替え都民の命・くらし・営業を支える都政に転換を図ると強調しました。
https://www.jcp-tokyo.net/2020/0528/165650/

▼IWJの岩上安身氏との対談から
>「条例を改正し、都の基金を取り崩して3兆円を捻出する」
https://www.youtube.com/watch?v=XyUhto0zVN0&t=10216s

 

宇都宮さんの財源捻出方法は、ソースが少ないので以上の二つの発言を総合して考えようと思っていましが、基本的系には大型公共事業の予算組み替えが主となり、基金の取り崩しはその補佐的なものになるのではないでしょうか。
(*注①: 6/27追記:赤旗の「年間約15兆円の予算を組み替え」という表現は、「予算を15兆円分組み替える」のではなく「一般会計+特別会計の合計15兆円の予算のなかから組み替える」という意味ではないかとご指摘をいただいた。確かに読み間違えたっぽいw)


しかし、ここ数日山本太郎が以下のように街宣で発することもあってか、宇都宮氏は再度見直したようです。

見直した結果、以下のようにプランが変わったとみられます。
ちょうど私も都の基金をざっと見た結果、もし五輪が中止になったとしてもやっぱり5000憶円くらいしか基金予算の組み替えはできないんじゃないかと思ったところでした。

上記動画をまとめると、以下のようになります。

①外環道などの大型公共事業の予算組み替えで何兆円か捻出
②条例改正で都の基金、決算剰余金の予算組み替えで1兆円を捻出
⓷国に財政措置しろと政策提言する(地方交付税?)
④災害指定するという山本案は国の同意を得ることが困難だ。社会資本整備のためであれば総務省同意のもと起債できるため、現状の一般会計予算分の社会資本整備を新発した都債で得た資金で賄い、その浮いた分の予算をコロナ対策に充てる

 *地方財政法では社会資本整備意外の目的で地方債を起債できない

 

宇都宮さんの、他者の優れた案を取り入れていく姿勢は、非常に好感が持てますね。
宇都宮氏だけでなく、小野氏や立花氏まで山本支出案を取り入れ「都債発行」を宣言することとなりましたが、このことは山本氏自身も歓迎しています。

当然でしょう。山本氏本人が都知事になることがベストだけど、第一義的には「困窮する人々を救う」ことがあるのですから、このことが大きなムーブメントになれば、現職都知事にも都債発行/貨幣創出のプレッシャーをかけられます。

もちろん、逆に言えば山本太郎も宇都宮支出案の優れた部分を取り入れるべきで、切磋琢磨していってほしいとも思います。

さて、上述した赤旗の「宇都宮支出案15兆円」(*注①参照)は何かの間違いではないかと思っていますが、新しい支出案であれば7兆円くらい捻出できるのではないかと思いました。
その根拠を以下に説明します。

 

①外環道などの大型公共事業の予算組み替えで何兆円か捻出

 

おそらく宇都宮さんが考えている大型公共事業を主にこれら三つでしょう。

ひょっとしたらカジノなど他の大型事業も想定しているのかもしれないけど、東京都の予算案等には見つけられなかったので今回は試算から割愛します。
私個人としては削ってはいけない公共事業も多いと考えているため、これらの事業についてどれほど予算を削減して良いのかいまいち判断できないけど、是非は置いておいたとして最大で5兆円ほどの予算組み替えができることになります。

 

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/24/documents/01_03_21.pdf

蛇足ですが、個人的にはインバウンド関連事業も基本的には国内観光事業に組み替えなければいけないと思っています。
皆さんも、コロナ禍で外国人に頼る経済がいかに脆弱かわかったでしょう。
インバウンド4.8兆円ほどの市場は、GDP比では少額ではあるけど、インバウンド頼りの経済基盤を作るのは、市場自体に壊滅的ダメージを与えかねないので危険すぎます。「おもてなし」の代償は大きすぎました。
 

 

②条例改正で都の基金、決算剰余金の予算組み替えで1兆円を捻出

 

参考:令和2年度(2020年度)東京都予算案の概要 p102
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/20200124_reiwa2nendo_tokyotoyosanangaiyou/2yosanangaiyou.pdf

 

総額3兆円ほどある基金から予算の組み替えをしたいところだけど、山本氏が指摘するように、取り崩してはいけない基金もあります。
例えば、「防災街づくり基金」や「心身障害者扶養年金基金」を取り崩せるのか?というと無理でしょう。
そう考えると、多く見積もっても3000億円くらいしか捻出できないのではないと思います。
ちなみに当該概要のP103、「財政調整基金」の9345億はコロナ禍で残り400億程まで使ってしまっているそうです。

また、五輪が中止にされると仮定すると、令和二年度の五輪関係の基金2482億円からも大雑把に考えて1000億円くらいは組み替えできるのではないでしょうか。(*基金と一般会計予算がごっちゃになりますが、すでに使ってしまったインフラ整備分以外の今年度計上分は取り崩しできると仮定し、ざっくりと半分くらいはいけるんではないかと想定しました)

https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/20200124_reiwa2nendo_tokyotoyosanangaiyou/2yosanangaiyou.pdf

 

そして、「減債基金」からも使える額があるか探してみたいと思います。



p103 https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/20200124_reiwa2nendo_tokyotoyosanangaiyou/2yosanangaiyou.pdf


減債基金は都債の元利償還費としてプールしているものなので、あまり使ってはいけないものだともされますが、だいたい1兆5618億円が確保されており、毎年1000億~5000億が、2020年度は2,876億円が元利償還金として計上されている状況です。
宇都宮支出案だと、毎年の元利償還金4400億円くらいの都債が発行できるはず(後述します)ですので、現行の支払いと大雑把に足して7000億円としましょう。

とすると、とたんに不安になってきますね。毎年黒字は積み重なるものの、毎年の支払いが7000億円もあって、現状では使える貯金が1.5兆円しかない…。

(*注② 6/27追記: 元利償還金のための積立が足りなければ借換の為の地方債起債が可能なので、実際には今回想定される新発都債償還のために毎年4400億円が減債基金に確保されていなければならないというわけはない。例えば10年債だと満期到来時に元本の1割~3割ほどの積み立てがあれば、借り換えできるため、元利償還自体が先延ばしできる)

 

減債基金を減額してしまうと、都債を発行した場合に元利償還金や借り換えの費用が払えなくなるので、例えば山本支出案ほど多額の都債発行するのであれば使えない枠となってしまいます。

個人的には、この基金をそのまま使ってしまうより、都債発行の裏付けにし信用創造で新たに貨幣を発行させたほうが経済循環を良くするので、使わないでいたほうが良いんじゃないかとも思います。
ですので、私個人としては宇都宮さんには太郎支出案のこの部分を取り入れてほしいとも思っていることもあり、取り崩し分は0円とさせてください。

さらに、次は私のおすすめなんだけど、地方法人課税の「偏在是正措置」による影響額というものも、国から取り返すべきだと思います。

https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/syukei1/zaisei/20200124_reiwa2nendo_tokyotoyosanangaiyou/2yosanangaiyou.pdf p23

>令和2年度における都財政への影響額は、「偏在是正措置」が初めて講じられた平成20年度税制改正前と比べて、▲8,386億円となっています。

これは東京都が優良公共団体だからといって国に召し上げられている8386億円取り返すというアイデアとなります。
そもそも通貨発行権を持つ政府は、地方財政に対して地方交付税などの拠出により責任を持たなければならないのに、逆に予算を取り上げるとは何事かと。
先進国でこんなことやってる国があるのだろうかということです。
この偏在是正措置のお金が毎年国に持っていかれないとするのなら、かなり心強いですよね。

 

 

③国に財政措置しろと政策提言する(地方交付税?)


これはぜひやるべきだし、私は、そのためには太郎案の「災害対策基本法にコロナを災害指定し、都債起債により潤沢な資金を得るべき」だとも思うし、このことをもって、国に対して「もっと地方交付税を出せ」と迫るべきであると思います。

その理由はこうです。

しかし、現実は政府は金を出し渋っています…。

とにかく、第二次補正予算では、地方交付税が東京都に約1000億円配分される予定(https://whitearcticwolf.com/2020/06/24/post-12093/)なので、三次補正でも同じくらいと見積もり1000億円としておきましょうか。

本来なら2兆、3兆、5兆、10兆と拠出させなきゃいけませんけど。

 

 

④社会資本整備のためであれば総務省同意のもと起債できるため、現状の一般会計予算分の社会資本整備を新発した都債で得た資金で賄い、その浮いた分の予算をコロナ対策に充てる

 

いままで都債の起債に関して言及のなかった宇都宮さんが、山本太郎に影響されて都債に踏み込みました。
これは本当に素晴らしいことです。

しかしながら、地方債は災害対応目的以外で起債すると「地方公共団体財政再建法」における実質赤字比率2.5%の壁があり、それを超えると総務大臣および財務大臣許可がないと起債できなくなる許可制団体に格下げという扱いになり、さらに5%を超えると起債制限がかかるので、かなり金額の上限が決まってしまうという問題もあります。

(山本案であれば制限は実質公債費比率18%の壁以外はありません)

地方公共団体の財政の健全化に関する法律(地方公共団体財政再建法)の概要
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/kenzenka/pdf/kenzenka_law_070622_2.pdf
3 地方債の起債の制限
○再生判断比率のうちのいずれかが財政再生基準以上である地方公共団体は、財政再生計画に総務大臣の同意を得ている場合でなければ、災害復旧事業等を除き、地方債の起債ができない。

 

例えば、東京都の実質「黒字」比率は、実質収支3408億円、標準財政規模3兆8242億円です。

災害指定しない場合では、許可制団体への格下げラインは、実質赤字比率2.5%なので、実質収支の赤字額でいうと956億円となります(38242×0.025≒956)。

この場合の猶予は4364億円ということになります(3408+956)。

 

10年債で、金利が0だった場合は4兆3640億円借りられ、毎年の元金返済額は4364億円になるということです。

もし金利が1%だったら大雑把に考えて約4兆円借りられる計算ですね。

金利1%の30年債なら、10兆円借りても毎年の元金返済額は3333億円、利払いは1000億円ですから、毎年の都債費の増分の合計は、上限の4364億円より少ない4333億円となります。

(*注②で追記したように、減債基金のシステムから、元利償還金として毎年の返済として想定される4333億円満額を積み立てておく必要はない。実際には10年債の場合はその1割~3割ほどが確保されていれば、満期到来時に借り換えで償還を先送りできる。しかし私の知識不足で、都債の借り換え上限が何年なのか、そして借り換えすることができる元本の割合がどれほどのか判断できないなので、満期到来時に確保しておかなければならない金額が詳しくわからない)

 

さて、超ざっくり試算となりましたが、以上を勘案すると、

①外環道などの大型公共事業の予算組み替えで何兆円か捻出
 →最大で約5兆円
②条例改正で都の基金、決算剰余金の予算組み替えで1兆円を捻出
 →最大で約1.2兆円
⓷国に財政措置しろと政策提言する(地方交付税?)
 →三次補正で約1000億円と仮定
④社会資本整備のためであれば総務省同意のもと起債できるため、現状の一般会計予算分の社会資本整備を新発した都債で得た資金で賄い、その浮いた分の予算をコロナ対策に充てる
 →約10兆円

  試算合計 最大で16.2兆円

なかなか優秀じゃないですかね?

試算するまでは7兆くらいかなあと思っていましたが、予想以上に資金を確保することができそうです


でも、個人的には大型公共事業や基金の予算組み替えが想定通りうまくいくとは思えませんので、がんばったとしても実際には総額14兆円くらいじゃないかと思っています。

それと、今年は間違いなく税収減になり、財政も赤字になることが予想されるので、元利償還金費用がうまく確保できないかもしれません。なので支出できる総額ももっと減るかもしれません
(これは山本支出案についても同じ)


それにしても宇都宮さんにもがんばってほしい。
しつこく言いますが、できれば「災害対策基本法にコロナを災害指定し、都債起債により潤沢な資金を得るべき」という山本支出案を取り入れてほしいですし、全国的なムーブメントにしてほしいです。

このように優れた政治家ですから、ぜひ健闘してほしく思います。

 

宇都宮支持者の一部(4年前の都知事選で宇都宮氏を誹謗中傷していた、野党共闘を神とする緊縮りっけんカルトの皆さん)は、山本氏の藁人形を作り卑劣なデマを流すことに没頭しておられるようですが、山本太郎支持者は宇都宮さんの財源論に多少の瑕疵があっても特に責めたりしません。
むしろサポートし、共に頑張ろうと応援していきたいもんです。
 

 

以上、ご覧いただきありがとうございました。

また次回。

 

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