https://www.nippon.com/ja/news/fnn2020061853848/

 

もともと私は12年と14年の都知事選では宇都宮氏に投票していたし、出馬取りやめした16年の都知事選でも宇都宮氏を応援していたため、山本太郎が都知事選に出馬するかもと話題になっていた時点では、出馬に反対でありました。
 
先日の出馬記者会見冒頭での第一声を聞いた時も「やっちまったなあ」とさえ思っていたほどです。
しかし、その後の出馬動機などの説明を聞いて、私の想像を超えてきた主張には、納得せざるを負えませんでした。 

▼ 【記者会見】東京都知事選挙の対応について 2020年6月15日【れいわ新選組代表 山本太郎 】

 

もともと山本氏は「この国の壊れていくスピードが速すぎる」として、与野党間の茶番ではなく本気の積極財政、本気の経世済民を勝ち取りに行かないと国民が殺される、国が終わるという考えのもと、自党を立ち上げ政権奪取に向かったわけです。
 
しかしコロナショックでその壊国のスピードが速まった。
収入を失い、住むところを奪われ、食べるものにも困る人たちが街にあふれています。
 
山本氏は、最速で国民を救う手立ては都知事になることしかないと判断したのだと考えられます。

その山本氏の公約はどれも素晴らしいものでしたので、公式ページで確認いただきたく思います。
(個人的には五輪はどうせ開催できないので、どっちでも良い案件だと思っていますが、労働リソースを五輪にとられるのならやめたほうが良いでしょう)
https://taro-yamamoto.tokyo/

 

さて、以下は個人的な推測も含みますが、彼の出馬理由はおおまかにこんなところではないかと思います。

 
しかし、上記ツイの引用元のきっこ氏だけではなく、多くのリベラル派が山本氏の出馬を批判している状況にあります。
彼らの論理は、先日まで私が考えていたように、シンプルに「宇都宮氏と山本氏で票割れになる」ということに集約されるでしょう。
 
そこで、今回、山本氏が強引とも思える出馬に踏み切った理由を、少し推測も交えて考察していきたいと思います。
以下、複数の新聞記事や関係者証言から時系列等を組んだので正確ではないかもしれませんが、おおまかな流れを掴むためにまとめてみました。
 
まず三月後半の時点。
「『5%減税の条件が成立せずとも野党共闘してくれ』と説得されるだけの共産党との会談には何度も参加するわけにはいかなかった。そのため、共産党とのその後の会談も中断されたままになっていた」
https://youtu.be/6B2eky18zZQ?t=2283
山本氏はこのように主旨を動画で話しています。
 
三月末。
「3月27日時点で、都知事選は権力を取るための最短ルートだから困窮する国民を救うために、れいわとして全力でいかなければいけない」
https://youtu.be/MGCvIqLRkdU?t=880
れいわの大西つねき氏は山本氏とこのような話をしたと語っています。
 
その後、四月の初頭前後に、立憲からの都知事選出馬の打診がありますが、山本氏側の「れいわ公認での出馬」や「5%減税で共闘」との条件を巡って交渉がとん挫しました。
 
そのことについて、山本氏は出馬会見で以下のように語っています。
「(立憲側に対して)次の衆議院選挙で、野党の統一政策として、消費税5%ということを約束してほしい。選挙までに書面で、これは約束をする、ということをお話しました」

「消費税5%を野党の共通の政策とすることはどうかという話については、党内手続きが間に合わない、そういう話でした。と言いましてもその最後の話が持たれたのは5月の終わり頃ですから、選挙が始まるまでには20日間くらい、20日以上あるわけですね。その20日間を持っても終わらない党内手続きということは、消費税5%減税ということに関してはもう決められないという宣言であろうという風に私自身は受け取りました。民主党が壊れるときは1日で合意取り付けたのにね。あ、いらんこと言うたらあかんわ。すいません。すいませんね。はい。ということです。これが経緯です」
https://taro-yamamoto.tokyo/20206151-2/
 
5月25日、山本氏が宇都宮氏と折衝。
山本氏は以下のように語りました。
「(宇都宮氏に対して)どうなさいますか?って話をしたら、必ず出るというお答えをいただきました。で、それは誰が出たとしても出るんだ、というお話をいただきました。私としても出る可能性あるんですけれども、というお話をしたんですけれども、それは出ればいいと。それぞれの政策を選挙という場で、皆さんに主張していくってことは重要なことだと、勝ち負けではなくて、政策提案という意味でも、選挙に出るということは、私はやる、ということを、そういった趣旨のことをお話をされたというのが私と宇都宮さんとの間でのお話です」
https://taro-yamamoto.tokyo/20206151-2/
 
同日、宇都宮氏がツイッターで出馬表明。
https://www.asahi.com/articles/ASN5T6S4LN5TUTIL032.html

 

6月4日、立憲民主党都連は常任幹事会で、宇都宮氏を支援することを決めた。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020060401086&g=pol

 

ここまで時系列を追っていくと、山本氏側からの「5%減税の条件」に乗れなかった立憲が山本擁立を諦め、宇都宮さんに乗ったということがわかりますね。
 
ところが、ここから不可解なことが明らかになっていきます。
 
共産党・小池氏は、山本代表が同日の出馬会見で「次期衆院選で野党の統一政策として消費税5%を書面で約束することなどを立候補の条件にする話し合いを野党と行ってきたが、だめだった」と発言したことに言及。 「日本共産党としてはこのような“話し合い”には一切関わっていない」と語りました。
https://news.livedoor.com/article/detail/18423214/
 
なんと三月末の山本-共産会談以降、都知事選候補交渉の経緯を共産党は知らなかったということででしょうか?
これは非常に不可解です。
立憲が主導して山本側との交渉に当たっていたが、共産党側には経緯の報告さえもなされなかったと…?
 
加えて、ジャーナリストの田中龍作氏が以下のように報告しています。
 
宇都宮は立社共の支援を受けるまでは「消費税5%」を掲げていたが、今はパンフレットから消えている。
https://tanakaryusaku.jp/2020/06/00023128 
 
ここから推測できることは、立憲は「どうしても消費税を減税したくない」ため、山本氏との交渉を打ち切り、宇都宮氏に対しては「減税5%の旗を降ろせば推薦しますよ」と持ち掛けたのではないだろうか?ということです。
 
もともと宇都宮さんは他の弁護士らによくある傾向通り、どうしても「財源は税金だ」と考えている節があると感じます。
そして四年前には野党共闘のために、断腸の思いで出馬を断念させられたという経験を持ち、トラウマとなっているはずです。
 
宇都宮氏の立場になれば、73歳という年齢のこともあるので、本都知事選が最後になる覚悟だったかもしれないし、そういう状況のなか、立憲からの交換条件を蹴ってしまえば、また四年前の悪夢が再来することもありえると考え、立憲からの支持を取り付けたいという思いもあったのかもしれません。
 
 
しかし、5%減税の理念を捨ててしまえば、国民を救うことはできません。
というか、消費減税さえできないのであれば、コロナ禍で苦しむ国民の社保料や各種水光熱費や税金の減免、さらなる積極財政などできようはずもないとも言えます。
 
この点でも、山本氏が強引に出馬した理由が理解できるように思えます。
 
さて、つい昨日ですが、もう一つ興味深い事件がありました。
皆さんもご存じの通り積極財政派の須藤元気議員が立憲を離党したのです。
苦しむ国民のため、そして山本太郎を支援するために苦渋の決断で離党した彼の気持ちは痛いほどよくわかります。
 
その離党の際の会見で、また興味深い事実が判明しました。
 
会見で須藤氏は「福山哲郎幹事長に離党届を提出してきました。きっかけは一昨日、都知事選で山本太郎さんを応援するとツイートしたら、党から取り下げてもらいたいと言われた。僕と山本太郎さんはロストジェネレーション。バブルを経験していません。山本太郎さんの消費税5%削減に賛成です。僕らが立ち上がらなければ誰が立ち上がるんですか!」と号泣して訴えた。

「悔しいんですよね。やっぱ政治の、政治の失敗で僕らが犠牲になってるじゃないですか。悔しいですよ。ちっちゃいころから日本は何百兆円借金があるとか、そのためには我慢しなきゃいけないとか、この30年間ずっと我慢してきたんですよ。何がプライマリーバランスだ、と思うわけですよ。もう十分我慢しましたよ。今、僕らロストジェネレーションが立ち上がらないで、いつ立ち上がるんですか。なんで上の言うこと聞かなきゃいけないんですか。十分言うこと聞いてきましたよ」
https://ameblo.jp/monzen-kozo100/entry-12604989592.html
 
須藤元気参院議員「悔しいですよ。何で上の人の言うことを聞かなきゃいけないんですか。『消費税減税とかそういうこと言うな』とか、何が『言うな』だよ。いいじゃないですか、言ったって」 須藤議員は、離党の理由について、東京都知事選で宇都宮健児氏を支援する立憲民主党の方針に反し、れいわ新選組の山本太郎代表を支持することや、消費税減税をめぐる党執行部との温度差をあげ、野党は「消費税5%」の政策で1つになって戦うべきだと訴えた。
https://www.fnn.jp/articles/-/53853

 

 
須藤議員の証言により、「立憲は消費減税を口に出すことすら禁止している党」ということがわかりました。
それが離党の理由になるくらいですから、須藤議員には相当な圧力があったことは確かでしょう。
 
この須藤議員の離党の一件からも、「立憲が宇都宮氏に減税の公約を取り下げろ」と迫ったのではないかという推測が真実味を持つとも思えるのです。
 
いづれにしても残念ながら、これは財政に対する感覚の違いとしか言いようがないでしょう。
 
消費税5%の共闘条件ラインも、もともと山本側が消費税廃止と掲げていたものを、立憲に寄せたかたちで後退させた経緯もあります。
立憲側がこの「消費税5%の共闘条件ライン」さえも受け入れないのであれば、もう政治的センスがない、財政的感覚がズレているので、共闘する必要はないと、山本氏が見限っても仕方ありません。
 
そして残念なことに、宇都宮氏も5%減税について譲歩してしまったのですから、山本氏自身が「俺が都知事をやって苦しむ国民を救うしかない」と奮起したのもうなずけるのです。
 
 
このような旧態依然とした予定調和型の政治に一線を引く山本の政治姿勢を、元検事の郷原信郎氏がベタ褒めしています。
 
驚きました。政治ってこういうものなんだとこの年になって思い知らされた感じがします。
山本さんが打ち出した政策はロジカルにもまったく問題なく、非常にまっとうなことを言ってる。
政治がこれをやらなきゃいけないんだと、こんなに路頭に迷ってる人たちを放っておいていいのかという沸き上がる熱意を感じました。
社会が本当に危機的な状況のなかで、私はすぐにでも困窮する人を救うんだという熱意…。
私は政治というものに、これほどの握力を感じたことはなかった。
それを地方債の起債など財源の裏付けを取って明確に打ち出した。
これこそ政治なんだなということだ。
(一部要約、抜粋)

【山本太郎氏出馬会見、都知事選大波乱の幕開けか!】郷原信郎の「日本の権力を斬る!」#18
https://www.youtube.com/watch?v=p4BCpKF9NyM&feature=youtu.be

 

 
さて、最後に、山本氏本人による、「宇都宮氏との財政観の違い」に関する見解も以下に貼っておきます。
 
ここまで話したことに関して、おそらく宇都宮けんじさんも同じ気持ちだと思います。そのような支援をされてきた方ですよ。だとするならば、それは宇都宮さんに託せばいいじゃないか。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも私と宇都宮さんでは財政にかかる部分が、考え方が違うということですね。公約も見ましたけれども。

地方の財政状況を表すときに、実質公債比率、実質公債費比率というものを見ますよね。1年間の収入の中で、年間のローン支払い額どれくらいかってものですよね。東京都どれくらいですか?っつったら、29年度で1.6。30年度で1.5ですよ。全国平均は10.9。全然差があります。東京は超優良団体。つまりは東京都独自で資金を調達するという余地が、無茶苦茶あるってことですよ。他の団体どうか? 例えばですけれども、緊急事態、緊急事態というところで指定されたような地域を見ていくと、北海道どれくらい? 20.9くらいですか? 大阪府は16.8くらい? 埼玉は11.4くらいですか? 東京は1.5ですよ。つまりは、いくら自分たちで資金調達できるか?

総務大臣の許可ないまま、いくらまで資金調達できるかっつったら、おそらく20兆円堅い。これ、総務省とやりとりしてます。だとするならば、今、今回のコロナ災害によって苦しんでいる方々に、金出します。当然ですよ。やるべきことはそれだ。そして、次のコロナの災害、第2波、第3波来るんでしょ? ってことは、また「補償なき自粛」、必ず行われますよ。そこに対しても迅速に出す。東京都としてやれる最大限のことをやっていく。

当たり前の話ですよね。どうして、それやろうとしないの? こっちにある予算をこっちに付け替える? 無駄を省いて、それで作れるの、何兆円ですか? それじゃ間に合わないんだよって。この事態を見れば、もっと大胆に出さなきゃ駄目なんだよってことです。それを東京都からやる。それ言えるの誰か?っつったら、自分しかいないんです。なので、立候補を決めました。そういうことです。

(中略)

最大の焦点は何かっつったら、国から金を引っ張れってことを、全国の知事と、全国の自治体のトップと繋がって、国民的な大運動にするってことですよ。自分たちの住民を守らせろと。今の国のやり方でしたら、国から交付金をちょびちょび出すわっていう程度の話ですよね。で、なかったらお前ら勝手に借金したらいいやないか。これ、借金することによって何が生まれるか? もちろん政府と、政府と言えば総務大臣とね、許可をもらいながらとかっていう団体が結構多いでしょうから、そういう団体もあるでしょうから、結局はこれで紐づけっていいますか、首輪を付け続けるってことですね。

だから、地方分権とか聞こえのいいことは言ってるけれども、財政的にちゃんと国が手当てをするという責任を果たさずに、借金をさせてその元利の償還金みたいなものを交付金によって裏付けするというか、そういうようなシステムである限りは、これは今、国がやろうとしてることは、より地方に対して支配を強めるということ以外の何物でもないってことですね。

なので、この私が知事になったとしたら、これは国から金を引っ張れ、国から金をよこせという運動を、全国のトップと繋がって本気でやっていく。それだけじゃなくて全国の住民の方々とも一緒にやっていく。これじゃ回せないだろうと、責任を果たせということをやっていくっていうのがひとつ。で、もうひとつは東京都オリジナルで大胆な財政支出をやっていくってこと。これセットです。
https://taro-yamamoto.tokyo/20206151-2/
 
 
以上、私の推測も混じったけど、山本氏出馬に関する経緯はこんなところではないでしょうか。
 
正直言って、私もこのコロナ災害がもたらした経済的ダメージを甘く考えていたかもしれない。
それを山本氏に気づかされた出馬会見でありました。
 

さて、山本氏出馬の理由に関して、重要な位置を占める「地方債の起債と日銀買い取り」についても、次回に少し書こうと思います。
 
山本太郎というトリックスターの、この無謀にも思える計画を、来るべき新しい世界にとって常識とするべきだと感じてています。
 
 
ご覧いただきありがとうございました。
 
cargo