毎年お台場でやってるミュージック花火「STAR ISLAND」が今度シンガポールに行くことになって、その音楽制作でかなり忙しく、ブログ更新を怠っていました。


▼ 山本太郎を批判する立教大・金子勝教授が間違いだらけな件

松尾先生ともメールでお話させていただきましたが、本日話題とさせてもらうビデオが本当に問題作。

山口義行さん(立教大学名誉教授)、金子勝さん(慶応大学名誉教授・立教大特任教授)、荻原博子さん(経済ジャーナリスト)、山田厚史さん(ジャーナリスト)

彼らは良い人たちだし、普段からとても心ある発言をする人たちなんだけど、今回は根本的に間違っている。
良い人たちが間違いをおかしていることは絶えられませんので、今回はあえて彼らに反論します。
彼らの錯誤には、左翼の典型的な間違いが詰まっていて、良いスタディーケースになるとも思うので反論したいということであります。

まずは以下の動画、特に”後半戦”の前半のほうをご覧いただきたい。

▼ 【山田厚史のここが聞きたい 熱夏スペシャル】ホントはどうなの?日本経済 前半戦:「好景気」の舞台裏
https://www.youtube.com/watch?v=aX51nknj6VY

▼ 【山田厚史のここが聞きたい 熱夏スペシャル】ホントはどうなの?日本経済 後半戦:アベ対抗策は「反緊縮」?
https://www.youtube.com/watch?v=fkTRy-Qtnoo


金子先生たちは以下の山本太郎議員の演説を引き合いに出し、そこから反論を展開していきます。
 

山本太郎議員:
ないところから取るな! あるところから取れ! 当たり前でしょ!
国が一番ケチってる分野に金を出せ!
そこが成長分野だ!
例えば教育、例えば保育、例えば介護!
金をずっと投資してこなかったから。
ここが一番伸びシロあるじゃないですか?

みなさんどう思いますか?

そしてデフレの時にはもう一個やれることがある。 
それは何か?
金融政策。 金を刷れるんですよ。
金を刷って財政出動する。
インフレにさせたいんでしょ?
安倍政権はやりまくってるけどインフレになんかなってませんよ。
どうして?
金だけ刷ってみんなに金出してないから。

これは世界中がやってるんですよ。
だって投資のないところに成長はないでしょ?
IMFが180カ国で、国がどれぐらい人々に金を出しているかと言うデータを見れば、ダントツのビリ が日本なんですよ。
20年間ですよ。
デフレの原因はこれ。

IMF180カ国以上で経済がどれくらい大きくなったかって見た中でダントツのビリはどこか?
日本なんですよ!!
金出してないからなんですよ!


太郎議員の経済政策は、コービンやメランション、サンダースら欧州の主流左派が主張するものと同等なまっとうな経済政策です。
その主流左派の理論は「新規国債を発行し、市中銀行からお金を借り、社会保障費などに当てる」もしくは、「新規国債を発行し、日銀に直接買い受けさせ、そのお金を社会保障費に当てる(財政ファイナンス or ヘリマネ)」というものです。

 *詳しくは太郎議員の政策アドバイザーを務める立命館・松尾匡教授のサイトをご確認ください。
  https://economicpolicy.jp/

ところが日本の左翼は、古くからのマルクス経済主義に固執してしまっているのか、なかなか最新の左派的経済政策にアップデートできていない。
「無駄を省く」とか「倹約を良しとする」とかという、マクロ経済用語で言うところの「合成の誤謬」にハマってしまっています。

彼らは本動画で、山本太郎議員の経済政策を批判する体をとって、松尾匡先生の理論を批判しているということになるのでしょう。

さて、この上記演説を切り取って、山田厚史さんが発言します。

山田厚史さん

安倍政権に勝つためには経済で勝たなければいけない。

いろんな悪法が出されてるけど、結局経済政策で勝たなければならない。 

だったらアベノミクス反対っていうだけじゃなくて、アベノミクスのもっと先を行こうという話になって。 

だけど山本太郎さんは、日銀マネーをどんどん刷ってそれを財政資金に回してインフレを起こそうと言う方法で、安倍さんを上回る景気良い話をぶち上げようといているということだが、それには懸念を覚える


私はこのビデオで引き合いにされた「6.6オールジャパン総決起集会」の山本太郎が演説していた現場にいましたが、山田厚史さんが現場に来ていたことを確認していたので、「彼も賛同しているんだな」と思っていました。
しかしそうともいえなかったようです。

動画に戻ります。
山田厚史さんの質問に対し、荻原さんが答えます。

荻原さん (発言要約)
量的緩和という日銀のバラマキがあっても銀行からお金が出てこないので失敗しています。
じゃあどうやって、お金を皆さんにばら撒くかというと日銀が直接皆さんにばら撒くわけにはいかない。
そうすると、こういう(山本太郎のような)威勢の良いことを言っていてもどうなのかと思うんです。


これは、当たり前の話ですよ。
安倍政権がやっている「量的金融緩和」は、主に「買いオペ」といわれるもので、市中銀行が有する国債を日銀が買い取り、それによって日銀が通貨を発行するという構造になっています。
つまり日銀がどんなに買いオペで通貨を発行して、市中銀行にお金を渡しても、その市中銀行が実体経済市場にお金を貸し出ししなければ、実体経済にお金が還流することはありません。
日銀はこの5年間に400兆円あまりのお金(マネタリーベース)を創造していますが、そのうちの約350兆円は市中銀行が日銀に持つ「日銀当座預金」というところにプールされ(ブタ積み)実体経済には還元されていません。
残りの50兆円は金融市場に投資され、一部上場企業の株価を吊り上げるだけで、殆どのお金が実体経済には還流しない仕組みになっています。

ですから新規国債発行によって得たマネーを、政府が実体経済市場に支出(財政出動)すれば良いということを太郎議員は言っているのです。


マネタリベース(日銀が刷ったお金)を増やしてもマネーストック(市場に出回るお金)は増えません。
 

荻原さんはFPであり、ミクロ経済学の専門家ですので、マクロ市場が実体経済市場と金融市場に分かれていることをあまり理解されておられないのかもしれません。

「家計や企業会計と国家財政を混同している状態にある」のだろうと思われます。
今回は彼女の発言は全て無視してしかるべきでしょう。

さらに、この荻原さんの発言の後、山口義行教授も以下のような発言を重ねます。

山口義行教授 (発言要約)
「政府が国債を発行した次の日には、日銀が国債を引き受けて、実質的に”財政ファイナンス”してるだけ。
山本議員は今日銀がやっていることを言ってるだけ。
いったいどこが違うの?


マスコミがアベノミクス批判の際によくやる手口ですが、山口先生の発言も、「財政ファイナンス」の意味を曲解、もしくは誤解したものといえるでしょう。
「財政ファイナンス」とは、中央銀行が政府の発行する国債などを直接引き受けることで、中央銀行が通貨を発行して、国の財政赤字を直接穴埋め・補填する措置であり、中央銀行が国家財政に資金を供給する(ファイナンスする)という意味の名称であります。
この場合、中央銀行の発行した通貨は、市中銀行にいくことなく、国庫へ渡ることになります。

つまり、現状のアベノミクスでは、政府が過去に発行した国債で、市中銀行が買い取って保持していたものを、中央銀行である日銀がさらに買い取り、それによって通貨を発行するという機構(買いオペ)になっており、「政府が新規発行した国債を日銀が即座に引き受け、通貨発行しているものではない」ということになりますし、その際日銀は通貨を発行し市中銀行に渡しているというシステムになるのです。

というか、財政法4条と5条の制約により、議会の議決がない限り「財政ファイナンス」はできませんので、山口先生はかなりおかしいことを言っていることになります。

もちろん、国債は最終的には日銀が買い取ることになりますが、現状は安倍首相の緊縮財政のおかげで新規国債発行額は減っており、日銀が利益を国庫納付することにより国の債務額は減少傾向(PBの改善)にあるので、その点は何も問題がないはずです。

山口義行教授も「財政ファイナンス」を曲解するような姿勢で思考停止してしまっていますので、彼の発言も以降はあまり真に受けるべきではないのかもしれません


実体経済と金融経済は分離している
出典:天野統康
 https://ameblo.jp/amanomotoyasu/entry-12210630877.html



図の下部が買いオペ、図の上部が国債引き受け(財政ファイナンス)
出典:日経 https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/index.aspx?Sakuin2=574&p=kaisetsu


問題は金子勝教授。
この人が非常にやっかいです(笑)

金子勝教授 (発言要旨)  
これはもう殆どナチスと同じだと思う。
なぜかというと出口がない。
”財政赤字は短期では効く”というのはマクロ学者のコンセンサスを取れるけど、こんなに長期で財政赤字を出し続けてもGDPはせいぜい横ばいにしかならない。
政治家は税金を集めて的確に分配する能力が求められるが、安倍さんはそんな能力はないので、お金を刷るという一番楽な手法をとっている。
ヘリコプターマネーはお金をバンバン刷ってばら撒くという手法だが、これはナチスのメタボ手形とか、日本の陸軍の軍票と同じ。
(山本太郎議員は)自分の言ってることが何だかわかってないんですよ。
ナチスも結局は金融緩和と軍備拡張で財政が立ち直った。
貨幣発行益でお金ばら撒くなんて簡単じゃないですか?


上記の金子教授の発言に反論します。
まず、財政赤字拡大とGDP成長率には、直接的な因果関係はない。
金子教授は、この因果関係をなにか履き違えているのではないでしょうか。
政府が適所に支出をすれば乗数効果により税収も増えていくはずですし、彼が問題にしている財政赤字も長期的には解消されていくはずです。

先進37カ国での政府支出と財政健全性指標の相関関係

出所 IMF WEO Apr. 2015 
IMFの分類による先進国全体での2004-2013年における平均伸び率。
財政健全性指標は政府債務残高÷名目GDPで算出した。


政府支出伸び率と財政健全性指標の決定係数(相関係数の二乗)はわずかに0.06。
全く相関関係はないといってよいでしょう。

一方、政府支出伸び率と名目GDP伸び率との決定係数は…

政府支出伸び率と名目GDP伸び率の相関
出所 図表1に同じ
図中、名目GDP伸び率が負の3カ国は、日本・ギリシャ・サンマリノ。

  出典:  http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20150627
 

そしてナチスの手形は民間の銀行家が勝手にばら撒いたもので、同様に日本軍の軍票も同じ構造にあり、中央銀行の統制外にあったことこそが問題でありました。
太郎議員や松尾教授の理論は、なにも無尽蔵に”市中銀行に信用創造させる”という話ではありません。

金子教授の発言を受けて山田さんが発言します。

山田厚史さん (発言要旨) 
チマタでよく言われるのは山本議員が言うように、日銀にお金を刷らせてそれを福祉に回しましょうと。
わかりやすい例が、ベーシックインカムのように1人頭に数万円を渡すという政策。
低所得者の所得が増えれば、お金はすぐに国内消費に廻るから経済が活性化するんだと。
今は財政再建のためにお金を使っているので、日銀マネーを福祉や教育に使って国民生活を向上させれば、選挙にも勝てるんじゃないかという議論になっています。


コービンや欧州の左派が提唱しているのは、まさに中央銀行が直接国債を引き受ける「財政ファイナンス or ヘリマネ」となります。
しかし太郎議員は財政ファイナンスにまで言及しているわけではなく、通常の新規国債発行により得たお金で、福祉に政府支出しようという案です。(立命館・松尾教授は財政ファイナンスにまで言及していますが)
山田先生もまた金融システムをいまいち理解できていないのではないでしょうか(怒)。

この後、荻原さんが「国は1000兆円の借金があるが、そのうち日銀は450兆円を持っている。普通の企業なら子会社が借金まみれなのに親会社はピカピカみたいな状態」とわけのわからない発言をしますが無視します。

再び金子教授。

金子勝教授 (発言要旨)  
ローマ帝国では最初銀貨の八割くらい銀の含有量があったのが、帝国が崩壊する時には5%くらいになっていた。
お金を薄めて発行すれば楽じゃないですか。
ルイ15世の時代にも紙幣をジャンジャン刷った挙句、フランス革命が起きて国家が崩壊した。
つまりGDPの3倍も借金をして貨幣発行益で効果を出し続けられるんですかということです。


現在の通貨発行制度は信用創造であり、希少金属の含有量とは何の関係もありませんし、現在はフランス革命時の管理通貨制度下における100倍にも及ぶ過剰な通貨供給状態にあるわけでもありません。
上記の点はミスリードはなはだしいですが、確かに通貨供給量を増やせば円安になる面もあります。
しかし現実は、日銀がインフレ率2%を目指すと掲げているのにも関わらず、5年間で4倍もお金を刷ってもその2%には到達できていません。
その理由は明確で、実体経済市場にお金を流していないから個人消費も実質賃金も伸びず、インフレ率が上がらないというわけです。


アベノミクス第二の矢”財政出動”はどこいった? 民主党政権時よりも政府支出(公共事業)を削減し、緊縮財政に陥る安倍政権。

さらに山口教授がかぶせます。

山口義行教授 (発言要約)
お金を刷っても効果がない。
日銀がお金刷って景気よくなるという論理は実際には実現されずに行き詰ってる。
ところが、(山本議員)はアベノミクスの効果で、今は好景気だと誤解している。
日銀はお金を作れるが、需要は作れません。
日銀がお金を刷っても銀行は貸し出ししないからです。
バカな経済学者はいまだに「お金を刷れば需要が生じる」と信じてる。


確かに、山口教授が言うように「日銀がお金を刷って(買いオペ)も市中銀行は貸し出ししないから需要を作れていない」までは正しいです。
いわゆる「馬を水場まで連れて行っても、水を飲むかは馬次第」という状態であり、それは借り手がいないからということになります。
市中銀行は借り手がないから金融市場や不動産市場にお金をまわしてしまいます。
でも、実体経済市場にお金が還流しなければ経済は良くなりません。
だからこそ買いオペを介して金融市場にお金を廻すのではなく、政府が新規国債を発行し、市中銀行から得たお金を福祉分野など実体経済に政府支出しなければならないのです。
低所得者ほど消費性向が高いので、そのお金は即座に実体経済に回り、乗数効果をもって消費・所得ともに倍増します。
(この手の経済制作は、例えば池田勇人元首相の「国民所得倍増計画」で有効性が実証されているはずです)
この機構を知っていれば、誰が「バカな経済学者」なのか、自ずとわかる話なのですが...。

山口教授のこの誤謬に同意する形で、金子教授も典型的に間違った論理を展開してしまいます。

金子勝教授 (発言要旨) 
財政赤字が900兆円台から1000兆円台に増えた分、民間の内部留保が増えている。
お金が増えただけそこに貯まりこんでいる。
お金が還流せず需要が生まれていない状態で、とにかく企業を救って潰れないようにしていこうというやり方なんです。。
このインフレターゲットというシナリオは、人々の物価上昇期待が上がって「消費をしないと損しますよ」っていう風になっているが、全然動いてない。

山口義行教授 (発言要約)
だから福祉のほうにお金を使えば需要供給効果でどうにかなるという論理は、私は違うと思う。

金子勝教授 (発言要旨)
財政赤字を拡大しても一次的に落ち込みを防げるけど、貿易の競争力が落ちていることのほうが問題なんです。

山口義行教授 (発言要約)
だから需要政策よりも、今の産業構造でやっていけるのか、ということのほうが問題だと思うんです。


反論します。

ひょっとして彼らは「買いオペ」をすると財政赤字が拡大すると思っているのでしょうか?

だとしたら大きな勘違いです。

上述したように、買いオペは市場にある国債を日銀が買い取るシステムでして、財政赤字には直接的には関係ないはずです。

むしろ現在は国債の新規発行額は減少傾向にあり、財政赤字も縮小傾向にあります。

金子先生たちが「国債発行の増額を批判し、財政赤字の拡大を批判する立場」なのだとしたら、むしろ安倍ちゃんを褒めなければなりませんよ(笑)

市中に存在する国債の量が買いオペによって減っているんだから、新規国債発行して市場に供給しても問題ないと思いませんか?

出典:財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.pdf


そして繰り返しますが、経済が良くならないのは、お金が実体経済市場、特に低所得者を中心とする庶民にお金がまわっていないからですよ!
日本のGDPの六割以上が個人消費なのに、実体経済に政府支出せず、格差拡大政策を進める反日売国奴の安倍ちゃんをこそ批判しなければならないのに、左翼経済学者はあさっての方向を向いてしまっていて、本当に残念でならない。

日本の政府支出伸び率は世界でもダントツのビリ、世界一のドケチ国家なのですよ!


出典:IMF政府支出伸び率  山本太郎事務所

政府が金融市場にばかりお金を流し、大企業の株式を支え、円安効果によって輸出大企業の業績を支えてるだけで、実体経済の消費も需要も冷え込んでいるのだから、企業は市場原理によってお金を溜め込み、賃金を上げること(インフレ値以上の賃金UP=実質賃金UP)はしません。

このお三方は「安倍憎し」の思考が「坊主憎けりゃ袈裟まで」とばかりに発展し過ぎ、正しい経済政策の部分まで批判してしまっている状態なのではないしょうか。

私は、それこそが今の左派の思考停止を招いているのだとも強く感じます。

このあと彼らは「経常収支の黒字が大事だ」なんてことを熱意を持って語っていますが、我が国は外需15%ほどの国なので、貿易がそれほどGDPに寄与していないことは自明であり、残念ながら反論する気さえ起こりませんでした。

しかし、ちょっと面白かったのが、金子先生が「ハイパーインフレはめったに起きない」と発言したくだり。
あれ?確か金子先生は以前「ハイパーインフレ脅威論」を叫んでいませんでしたっけ?と思った次第でした。 笑

ただそれ以降は、バブルに関する議論も重ねますが、この点は概ね正しいことを言っていると感じました。


さて、わずか20分ばかりの動画部分に対する反論でしたが、とにかく彼らの誤認、誤謬が酷いと感じました。



出典:松尾匡・立命館大学教授 「そろそろ左派は経済を語ろう レフト3.0の政治経済」

デモクラシータイムスは憲法問題などに関しては100%賛同できるのだけど、残念ながら経済がまるでダメなんですよね。

左派はレフト1.0と2.0を脱して、レフト3.0に移行しなければなりませんよ。

安倍ちゃんの暴政に対抗するメインの対抗勢力がこんなていたらくでは先が思いやられます。

山本太郎議員が正しいことにいい加減に気づいてくれ!



以上、最後までご覧いただきありがとうございました。

また次回

cargo,GOKU