この記事を何日かかけて書いている最中に「西部先生の他殺説」が再浮上したので追記します。

本日、3月14日に、先ほど入ったニュース。

▼ 西部邁自殺 警視庁が事件性の疑いで再捜査
http://bunshun.jp/articles/-/6558
【抜粋】
最大の謎が西部氏の遺体の状況だ。
多摩川から引き上げられた遺体は、工事現場用のハーネスで固定され、白いロープが結び付けられていたという。

 西部氏の親族が語る。
「邁さんは手が不自由で、食事をするときは箸ではなくスプーンです。それにシャツのボタンを留められず、長女が手伝っていました。ロープの片側は木に巻
きつけられていたといいますが、彼1人でロープを結べるとは思えません」
 

自裁死すると名言していことに便乗して何者かがアベしたのでしょうか?
「工事現場用ハーネスが装着され、ロープが結び付けられていた」というのは、拷問されていたから?それとも誰かが自殺幇助していたから?

一気に謎が深まりました。
もしアベされていたのであれば絶対に許せませんので、犯人に対し立ち上がらなければなりません。


----- <追記ここまで> ------


僕は故西部邁先生が好きだったので、どうしても彼が生涯をかけて何を言わんとしていたのか気になってしまいます。

西部先生が自殺したことによってその自裁死を蔑む人もいますが、僕は人間の自然権には「自死の自由」もあると思うので、特に忌憚すべき一件とも感じて
いませんし、むしろ彼は目的を達成したのですから祝福されるべきなのではないかと思っています。


西部先生は保守論壇の重鎮として知られる人物でありましたが、死ぬ間際の西部先生は「今の共産党こそ保守だ」と発しておられました(笑)

▼ 西部邁さんの保守思想、野中広務さん、経済政策、死刑 - 小池晃「日本共産党」書記局長インタビュー 
by 酒井佑人2018 01 29
日仏共同テレビ局フランス
https://www.youtube.com/watch?v=nWEAdBOpk8w

これは安倍捏三尊師を支持する似非ウヨさん達には理解しがたいことだと思いますが、まったくその通りなのです。

安倍さん一味は保守でも何でもなく、単なるネオリベ売国奴と断じて差し支えないことは、多少の教養のある人間であればもはや常識となりつつあるでしょう。
また、安倍さんや橋下さんのようなネオリベが日本を散々破壊し続けてくれたことによって、多くの人がデモクラシーとは何なのか?保守やリベラルとは何なのか?に気づくことになったのだとも思いますが、そういった思想背景やマクロ経済学についてずっと発していたのが西部先生となります。

西部先生が「共産党こそ保守」と発したその理由は、生前に残した数々の映像で語られています。

しかし、西部先生の論じる保守の定義はなかなか複雑ですので、映像をご紹介する前に私なりの「保守の定義」を簡単に提示させてください。

・歴史と文化、伝統を重んじる人
・人間の理性や知性に対し懐疑的で、その理性や知性以上のものが存在すると考える人
・人間は完璧ではないという前提に立ち、先人達の作ったものに対し永遠の微調整を続ける人

西部先生の弟子で東工大教授の中島岳志先生は、フランス革命を否定的にとらえたエドマンド・バークの論理を元に以下のように定義しています。

左派思想は理性主義・設計主義をもとにしているが、理性・知性には限界があり、人間は不完全な存在である。
だから歴史の風雪に耐えてきた慣習・伝統・良識に依拠して社会を考える。
保守とは永遠の微調整である

  出典:「愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか」中島岳志 (著), 島薗進 (著)

 


西部先生自身は以下のように定義します。

西部:
保守の政治思想は三つに整理できる。
第一は、中島君が言った、人間の完成可能性への懐疑
人間は道徳的にも認識的にも不完全性を免れないのだから、自分が思い描く理想だけで大変革をすると取り返しがつかなくなるという姿勢です。

第二は、国家有機体論社会はまるで植物の有機体のようにいろいろなところに張り巡らされ、成長したり衰退したりする。
そこに人工的な大改革を加えると、有機体が傷ついてしまう。

個人や集団の知恵ではとらえきれない、長い歴史を有し、複雑で多種多様な関係を持った有機体であることを忘れてはならないという論理です。

第三は、改革はおおむね漸進的であらねばならないということ。
合理的に説明できないという理由で破壊的な社会改革はすべきでない。
伝統の精神を守る限りにおいて、一歩一歩、少しずつ改革していくべきだという考え
です。
  出典: ▼ 西部邁、中島岳志の師弟対談 保守と右翼の間にある大きな違い
         https://dot.asahi.com/aera/2017042400072.html?page=1

 

*ちなみに左翼とリベラルは別のものであり、さらに保守とリベラルは対立する概念ではありません。
  中島岳志先生に教えを受ける立憲民主党・枝野幸男代表も繰り返し中島教授と同じような発言をしています。


以上の定義から、安倍一味のような「明治時代に作られた新しい伝統」を日本の伝統」であると勘違いする長州カルトは、嘲笑すべき対象であるということがわかります。
安倍一味や宇予くん達の勘違いは、「保守は理性や知性を超えた慣習を重んじる」という部分のみに注目し、その思想を曲解し続け、自身の劣化に繋げてきたことにあると思います。

まず第一に「理性・知性ありき」ということが理解できず、己の知見の浅さを補填すべく「反知性主義」に陥っていくというような変遷をたどったのでしょう。
それは、「ハイゼンベルグの不確定整理」や「ピカソのキュービズム」、「フロイトの集団的無意識」や「コルトレーンのフリージャズ」もデタラメな論理を以っては到達し得ないという事実を無視することで成り立つのですが、そういうことを単純に抽象化しその輪郭のみを享受し、カスのような存在になってしまったということですね。

ですから「日の丸を掲げれば保守」「和食を愛していれば保守」「天皇を崇拝すれば保守」というような外形的断面にのみに注目し、それを免罪符として掲げる滑稽な様式を是とするものに陥ったのでした。
さらにそこにフロムが「自由からの逃走」で言うような、現代人としての孤独感を穴埋めするために、大きなもの・国家権力に寄生する論理に収斂し、とうとうネトウヨの誕生に繋がったのだと思います。

例えば西部先生の理論を音楽に当てはめたとしても十分に成り立ちます。
私達クラブミュージックの制作者は特に「守破離」の理論を大事にします。
例えばハウスというジャンルでは「四つ打ち(四分音符毎にキックドラム)」という制限の中のみで表現されるジャンルです。
これはある意味儀式化しているわけですが、その様式美を愛しているからこそハウスというジャンルが継続するのであって、そこから外れるようなものには美を感じない。
その伝統とか慣例と言えるものの中で、永遠の微調整を続けるのです。

これ、西部先生やバークの言う保守主義そのものですよね?
誰だって自分の作る作品をもってある種の革新性を投じたいと思うでしょう。
しかし、ポッと出のミュージシャンが昨日今日思いついた表現方法を「これは革新的だ!」なんて投じたとしても、大抵のことはすでに先人により実験されており、しかも「ダサい」から、実践・発表には至らなかったという経緯があったりするのです。
ところが、音楽の世界では、宣伝力という外的要因が作品の良し悪しよりも影響力を持つので、えてして守破離を無視したしょうもない革新ぶっただけの作品が評価を得たりしてしまいます。
こういう状態ってネトウヨやクソサヨとそっくりじゃないですか?

 


ということで、まっとうな保守、西部先生の映像をご紹介したいと思いますが、その前に少し対談相手の系譜の説明を。

       【 西部邁・元東大教授 】   ←  宮台真司首都大学東京教授(元論敵)

        |            |       小林よしのり(元同僚)
        |            |
藤井聡京大院教授(後継者)  中島岳志東工大教授(弟子) - 枝野幸男立憲民主党代表
        |
柴山桂太京大院准教授
中野剛志京大院准教授

このように現在活躍するまっとうな保守の系譜はだいたい西部邁クラスタ。
西部先生がどれほど重要な思想家だったかがわかります。

 

▼ [追悼・無料放送Part1]西部邁氏:西部邁流、保守主義のすすめ
https://www.youtube.com/watch?v=WnnF5_3Ftr8

 

▼[追悼・無料放送Part2]西部邁氏:西部邁流、保守主義のすすめ
https://www.youtube.com/watch?v=JolJgL1HC8U

宮台教授のと対談。 知の巨人が保守思想とは何かを問う
情緒過剰からくる実体信仰を形式化してしまい、天皇や桜を敬うのが保守と規定してしまっている現在の保守派やネトウヨを批判
10年前から構造改革・グローバリズムを批判し、小泉は打ち首獄門だと断じていた
安倍は保守を自負しながら従米・構造改革・革新となっていると批判
啓蒙思想(=人間のパーフェクティビリティ)を批判したエドマンド・バーク (Edmund Burke)から、オルテガ・イ・ガゼッタやホッブス、ルソーやモンテスキューの思想にまで繋がる
 

 

▼ 宮台真司 西部邁先生にバカタレ!と怒鳴られた真相を今語る!インチキ愛国者の正体を暴露!
2018/01/28 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=mUOWktGJ4_w

宮台氏の東大助教授時代と朝生時代の思い出について
西部先生の自裁死の論理について
 ↓
その伝説の番組とはこちら
 ↓
 ▼ 【番組中に帰る伝説回】西部邁VS宮台真司 佐高信 田原総一朗【ガチ論争】
https://www.youtube.com/watch?v=fQf2EFGUYdA

97年の酒鬼薔薇事件に関して激論
むちゃくちゃ面白いw

 

▼ 《中島岳志》 追悼 西部邁氏 「保守こそが真のリベラル」「他者の意見を聴ける者こそが保守」
https://www.youtube.com/watch?v=duO9h-tkPMQ

師匠西部邁の論理を語る中島岳志

 

▼ [2018.2.26放送]藤井聡 あるがまま日本・京都 ~週刊ラジオ「表現者」~(KBS京都ラジオ)
https://www.youtube.com/watch?v=HJfaSKyFfME

西部先生の刊行していた「表現者」を継いだ藤井先生による追悼番組
ゲストは柴山桂太氏
西部邁については、宇沢弘文先生との逸話から優れた数学者であり、経済学者であり、表現者だったと評する

 

▼ 政治と宗教西部邁ゼミナール 2013年12月30日放送
年末特別番組-政治と宗教が分離できない時代-荒井晴彦×中島岳志×西部邁
https://www.youtube.com/watch?v=UqKbZEhRGjU

 

▼【ダイジェスト】中島岳志氏:ポスト・トゥルース時代の保守とリベラルの役割
https://www.youtube.com/watch?v=emnQDjr_iaw

写真は動画より、中島教授による図解

 

▼ 夜な夜なカフェ Vol.2 /柴山桂太×中島岳志  2012/08/20 
「日本の保守って、いま何を考えてます?」
https://www.youtube.com/watch?v=2NorAbI_Pic

安倍政権始まる前なのに、今起こっていることを完全に予見していてスゴイ。
柴山准教授が「バークを例にとった保守派の先見性」について語っているが、まさにその「保守派の先見性」を目の当たりにできる。
エドムンド・バーク、トクヴィルの理論から保守主義とは何なのかを論じる。
グローバリズム、新自由主義、規制緩和、構造改革を批判。
また本物の左翼と右翼は同じことを言ってる、など。

 

▼ 【西部邁追悼】バブル期 朝まで生テレビ「米軍施設と市民運動・日米安保・民主主義…」1988-12
https://www.youtube.com/watch?v=MidcLlqxwc0

昔の朝生めっちゃ面白い。
学者と政治家と官僚と酔っ払い作家と雷親父の監督と左右の活動家が口々に勝手なことを言い合い、外野が平気で議論に参加しガヤを飛ばすカオス状態ww
それでもデモクラシーが機能していて、すごく自然な感じがする

西部さんはここでもエドモンド・バークの言を引用
今の朝生が、西部先生が生涯をかけて発していたような構造を追えていないことがよくわかる
現在は対立構造がはっきり左右に分かれるように作ってる(左右両陣営にネオリベを潜り込ませる)から面白くないのでしょう

出演者の皆さんもかっこいい。
猪瀬さんは装いがアーバンだし、池田満寿夫がゲンスブールみたいですごくおしゃれで、舛添さんも頭脳明晰だし挑戦的だしかっこいい。
朝日新聞社で拳銃自決した右翼の野村秋介氏も元気にがなりたて、田原総一郎もまだボケていないし司会者としてしっかりしている

 

▼ 宮台真司 「ナショナリズム」を考える
https://www.youtube.com/watch?v=Nf8BPqYXm2A

連合国: 英仏米 = 早くに近代化し、産業資本家と産業労働者が増え、早く近代化
枢軸国: 日独伊西 = 上から行政官僚制を使って近代化を推し進めた
(すげえ!!!目からウロコ)
右翼のルーツ ; 米国の憲法修正二条の武装権(集団的抵抗権) = 政府が自分達の郷土をないがしろにするなら集団的に武装して倒してもよい = ジョン・ロックの抵抗権(革命権) 
国家主義 = 「国の言うことに従わない人間は非国民だ」 → この論理は政党な右翼ではない
 


西部先生は生前、”葉隠”を引用し、「死ぬために生き、自分が信じるもののために死ぬ」また「死に方は生き方の総仕上げ」と語っていました。

今回は、彼の信じたものを探してみました。

まだまだ続きますが。


ご覧いただきありがとうございました。

また次回

GOKU