https://stat.ameba.jp/user_images/20151115/19/nakanokatsuhiro/d0/68/j/o0800052713484574792.jpg

 

どうも。

最近は5/27のお台場のミュージック花火”STAR ISLAND”の音楽制作と、酷い腰痛でやられていました。


保守系の経済評論家・三橋孝明さんの言葉をお借りすると、世の中には二種類の新自由主義者(グローバリスト)がいるそうです。

① 保守系、リバタリアン = 小さな政府主義系の新自由主義者(グローバリスト)
② 左派、リベラル系 = 地球市民系の新自由主義者(グローバリスト)

テレビや新聞でお見かけする経済論客はだいたいこの二者となりますね。
(最近は安倍政権の悪政の反動で、左翼系のグローバリストは少なくなりましたが)

二者は一見すると相反する論理を掲げ、議論を戦わせていますが、その実新自由主義的傾向を持つ同根のものです。

これは”ヘーゲルの弁証法”をもとに”人工的対立軸”を演出することにより実現された、支配層の”分断統治(Divide & Rule)”の手法そのものと言えるでしょう。

人々は、この”見せ掛けの対立軸”の中でしか思考できなくなり、煙幕の向こうの真実には到達できません。


先日フランスの大統領に選出されたマクロン氏は、リベラル系のグローバリストと言えるでしょう。

日本のマスコミは、マクロン氏を「右でも左でもない中道」と称し持ち上げていますが、その実、単なる構造改革論者で糞ネオリベのグローバリスト。

だまされちゃいけません。

左右は違えど、安倍首相、小泉進次郎、小池知事、橋下元市長みたいな感じですかね。
 

【参考】
▼焦点:仏大統領選勝利のマクロン氏、改革の道は多難
2017年 5月 8日  ロイター

http://jp.mobile.reuters.com/article/idJPKBN18408


おそらく今後、フランスでは、経済格差がさらに広がり、また侵略戦争にも加担することになり、テロも起こるでしょう。

私は暗澹たる気持ちでいっぱいになってしまいました。
(ひょとしたらマクロン氏も、キャパを超えた欧州の”奴隷生産”に歯止めを打ってくれるかもしれないと淡い期待も抱いていますが)


しかし、そんなグローバリストを尻目に、我々まともな市民は正しい経済政策を学ばなければなりませんし、正しい政治家を選択しなければなりません。

今回も松尾理論を学びたいと思います。

こんなにすばらしい指針が15年の時点であったのに、なぜフランス人達は学ばなかったのでしょうか...。

 

 

▼ 闘う欧州労連は量的緩和を歓迎する
立命館大学教授 松尾匡  15年5月20日

http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__150520.html

 

(前略)
 まず、今回のタイトルにあります「欧州労働組合連合」(European Trade Union Confederation)ってご存知ですか。英語ウィキペディアによれば、39カ国90のナショナルセンターを傘下に収め、6000万組合員を擁する全欧労働組合組織だそうです。これが日本語版ウィキペディアには項目がないの。なんてこと。いや私もウィキペディアの編集の仕方とかわかりそうにないし、何もタッチしていないので、ヒトのこといえないのですけど。
 この欧州労連が、今年1月22日の欧州中央銀行の量的緩和の決定を受けて、即日コメントを出している文章が同労連のサイトで読めます。短いので全文引用します。
▼ QE not enough to stimulate growth (量的緩和は成長を刺激するのに十分ではない)

http://www.etuc.org/press/qe-not-enough-stimulate-growth#.VVtEq2Ynhlq

 

 The European Central Bank (ECB) buying bonds is necessary, but will not be enough to stimulate growth or create jobs warned the European Trade Union Confederation (ETUC).

“There is a welcome shift in economic policy” said Veronica Nilsson, Confederal Secretary at the ETUC referring to the expected and long-awaited quantitative easing announcement by the ECB, the recent reinterpretation of fiscal pact rules and investment plan by the European Commission.     

“It is austerity that is making Europe stagnate. What is needed to get Europe’s economy moving again is investment at a level considerably higher than that proposed by European Commission President Juncker.”

“Europe will not escape stagnation until the EU and national Governments adopt a longer-term approach to debt reduction and abandon the savage cuts in Government spending that are suppressing demand. There also needs to be a shift in focus of structural reforms, away from driving down wages and working conditions, towards investing in education and life-long learning.”

“There needs to be a strong link between Quantitative Easing and the European investment plan” added Nilsson.

[拙訳]
  欧州中央銀行が債券を買うことは必要なことであるが、成長を刺激し職を創出するためには十分ではないと欧州労働組合連合は警告した。
 「経済政策における歓迎すべき転換があった。」予想され、長く待ち望まれた量的緩和の声明が欧州中央銀行によってなされたこと、そして欧州委員会によって最近、財政協定ルールと投資計画の解釈のやり直しがなされたことを受けて、欧州労連書記のベロニカ・ニルソンは言った。
「ヨーロッパを停滞させているのは緊縮政策である。欧州経済を再び動き出させるために必要なものは、ユンケル欧州委員長が提案しているものよりももっと決定的に高いレベルの投資である。」
「ヨーロッパは、EUと各国政府が、債務削減についてもっと長期的なアプローチをとり、乱暴な政府支出削減で需要を抑制することをやめにしないかぎり、停滞を抜け出すことはできないだろう。さらに、構造改革の焦点を転換させることが必要である。すなわち、賃金と労働条件の引き下げに焦点をあてることをやめ、教育と生涯学習への投資に焦点を移さなければならない。」
「必要なことは、量的緩和と、欧州投資計画との間に強いリンクをつけることである」とニルソンは付け加えた。

 いやいや「歓迎すべき転換」ですよ。「長く待ち望まれた」ですよ。ここまではっきり言うとは。
 ここで、「高いレベルの投資」とか「欧州投資計画」とか言っている「投資」は、主に公共投資がイメージされていますね。なかでも「教育と生涯学習」があげられているように、教育や社会政策への公共支出が求められているのだと思います。

 こんなふうに書くと、欧州労連が、どっかの国でよく見るような、何か体制べったりの、労資なあなあ組合のような予断を持つ人がいるかもしれませんが、なかなかどうして、私には大変戦闘的な組合のように見受けられます。
 2014年11月14日には、欧州労連が主導して、史上初の南欧5カ国の国際ゼネストが行われ、同時に全欧いたるところで反緊縮のデモやストライキが吹き荒れました。
 例えば、この「レイバー・ネット」の記事をご覧下さい。
▼ ヨーロッパ・ゼネストに1千万人が参加...「緊縮は失敗した」

http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/intl/1352999985112Staf


 下の方に、スペインの街々が、人・人・人の波で埋まっている写真が載っていますが、感動します。みなさんも「#14N」で画像検索してみて下さい。戦闘的画像がいっぱいでてきます。
 動画はこれをご覧下さい。
 このゼネストには、EUの共産党や左翼政党の集まりである欧州左翼党も、「断固支持」を表明しています(同党サイト記事:The EL supports the general strike of 14-N in a meeting convened in Madrid)。
 また、欧州労連はギリシャの急進左翼連合の総選挙勝利を「欧州のチャンス」と表現し、緊縮財政や構造改革では問題は解決せず、向こう10年以上にわたってGDPの2%を投資(これも公共投資の意味だろう)に向けることが、成長と雇用を作り出す唯一の道だと提唱しています(同労連サイト記事:ETUC declaration: Greece after the election - an opportunity for Europe)。


      【ポデモスは欧州中銀をどう変えたいか】
 次に、スペインの新興左翼政党「ポデモス」を見てみましょう。去年作られたばかりで、いきなり欧州議会選挙で第4党に躍進しました。
今年2月には支持率が与党国民党を超えているとか。
 もちろん、反貧困、反緊縮の主張がウケているのです。
 これも誰かスペイン語の読める左翼運動の専門家がいっぱいいるだろうからフォローしてほしいところですが、とりあえずネット上で日本語でも英語でも適当な資料が見当たりませんので、思いあまってポデモスさんにひと月ほど前、直接英語のメールで金融政策論を問い合わせたのですが、返事はきませんでした。
 仕方ない。ウェブに載っているスペイン語の綱領の最終文書の該当部分を、グーグル先生に英語にしてもらって、おかしいところは、ウェブ辞書でつきあわせて直していって、とりあえず日本語にした上で、スペイン語のできる新任同僚の杉田伸樹さんに点検修正してもらいました。杉田先生ご親切にありがとうございます!
[拙訳]
 1. 3 – 欧州中央銀行を諸国の経済発展のための民主的な機関に転換します。
 欧州中央銀行を議会による民主的なコントロールのもとにおくことで、それを政治的権威のもとに従属させる仕組みを創り出します。
 定款を修正し、中央銀行の優先的な目的として、EU全体にまっとうな雇用を創出すること、投機的アタックを防ぐこと、国債を発行市場で無制限に直接買い入れることで諸国の公的資金調達を助けることを書き入れます。
 諸国の社会的な支出のための資金や、再分配メカニズムによってなおさら不利益を被った社会的、地域的な領域のための資金を優先的に支えます。そして必要があれば、欧州社会債を作ることによってこれらを支えます。
 通常の商業銀行と投資銀行の監督ルールを区別し、後者の投機的活動を規制します。

             【欧州左翼党第4回大会採択文書】
 欧州中央銀行の独立性を批判して、それを議会による民主的コントロールのもとにおこう、そしてそれが作る資金を使って公共的な支出をして雇用拡大させようっていう、このポデモスの主張は、このエッセーコーナーでも何度も見てきましたとおり、もともと欧州左翼党がはっきり掲げていたものでした。(拙著『不況は人災です』でも紹介しましたが、欧州社会党も、それほどはっきりとではありませんが同様の主張を掲げています。)
 その欧州左翼党ですが、2013年の第4回大会で採択された最終政治文書(Final political document 4th EL Congress)で、こんなことを言っています。
-    In the meantime too, we propose to create a European institution democratically administrated and controlled, in order to finance at a very low interest rate, even at a zero rate, public spendings of national States and enterprise investment if they develop employment, according to precise social and ecological criteria, with the monetary contribution of the European Central Bank(art. 123.2 of the Lisbon Treaty) and with the receipt of Tobin Tax. This could lead to the creation of a european public bank. Hence, we can concretely begin to radically question the independence and mission of the European Central Bank, as well as the current architecture of the euro and its governance. Place the ECB under democratic control, giving it the power to be lender of last resort, that is to say, lending directly to states without present anti-social“conditionnalities”. Money should not be used for speculation but to create jobs, public services, useful products and ecological transition.

[拙訳]
「他方でまた、我々は民主的に運営されコントロールされる全欧的機関を創立することを提案する。それは、各国の公共支出や、きっちりとした社会的エコロジー的な基準のもとで雇用を増やす条件で、企業の投資に対して、非常に低い利率で、ゼロ金利であっても、資金を融資するためのものである。これは、欧州中銀の金融的寄与(リスボン協定の123.2条)と、トービン税の受取によってまかなわれる。このことは、欧州公共銀行の創設につながることになろう。かくして、我々ははっきりと根本的な疑問を投げかけはじめることができる--欧州中銀の独立性と使命、そしてユーロ貨とそのガバナンスの目下の制度設計に対して。欧州中銀を民主的なコントロールのもとに置こう。そうするとそれは、最後の貸し手の力を持つことになる。すなわち、現在の反社会的な『融資条件』などなしに、諸国に対して直接に貸し出しをする力である。貨幣は、投機のために使われるのであってはならず、職を作り出し、公共サービスを作り出し、有用な生産物やエコロジー転換を作り出すために使われるのでなければならない。」
 
             

            【反緊縮は今流行りだ】

   先日のイギリスの総選挙では、スコットランド国民党(SNP)の躍進がニュースになりました。まるで右翼政党みたいな名前ですけど、実は労働党よりずっと原則的な左派政党で、EU統合推進派なので普通の意味での民族主義政党とは言えません。
 選挙前のSNPのスタージョン党首の活躍ぶりを伝える、次のブログを是非読んで下さい。「在英保育士・ライター」のブレイディみかこさんの記事です。

>▼ 「左派のサッチャー」がスコットランドから誕生?

http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20150409-00044664

 

今時あけすけに「反核」!「あくまでもどこまでも反緊縮」。医療再国営化。貧しい人の大学授業料無料化。移民の締め付けではなく下層民の引き上げを…。
 みかこさんは、絶対にブレないこの姿勢を称して、「左翼のサッチャー」と呼んでいます。

 SNPは候補者はスコットランドでしか立てていないのですが、スタージョンさんは全英の有権者に反緊縮を伝導していて、テレビの党首討論の締めくくりには、「スコットランドの皆さん、今よりも良い、もっと公平で進歩的な社会を望むのなら、SNPに投票してください。そして英国の他の地域のみなさん、私たちがスコットランドから英国をより良い国にするお手伝いをします」と語りかけています。
 すると、党首討論についての世論調査の中には、スタージョンさんが支持率トップに出たものもあったそうです。
 この勢いの前に、当初総選挙で台風の目と思われた極右政党は精彩を欠くことになり、みかこさんは党首討論で極右党首がスタージョンさんにやりこめられる様をピエロ扱いしています。

 そうなんですよ。左派勢力が、暮らしが苦しい人々のことをちゃんと目に入れて、「あくまでもどこまでも反緊縮」を貫き、賃上げや雇用拡大の道を示せば、右翼なんかに負けるはずがないのです。その際、「じゃあ財源は?」と聞かれたときに、「無から作ればいい」と言えるために、金融緩和と、中央銀行の民主的コントロールが必要になるのです。
 みかこさんの記事によれば、労働党党首は、「緊縮は必要」を大前提にして「富裕層の増税」を主張してカットする層の変更を論じただけだそうで、こんな姿勢だから負けちゃったんですね(まあ得票数は増えているのですが)。

 これは現代資本主義の中にあるかぎり、どこの国でも同じことです。
 都構想を葬った大阪市民の闘いはお見事で頭が下がりますが、しかしそれでもやはり僅差で、これだけ無茶苦茶にされても、まだまだハシスト支持者が多い現実を見せつけられました。
 来年7月にあるだろう改憲議席をにらんだ同日選挙までに、左派勢力が最もすべきことが何かは明らかだと思います。
 

 


次回は先日のフランス大統領選投票日直前に投稿された松尾先生のエッセイから学びます。

 

ごらん頂きありがとうございました。

 

cargo

 

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