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どうも。

先日Tomorrowlandを観ましたが、なかなか良かったです。

当然のことながらファミリー向け作品ですので、ディズニーらしい二元論構造学の布教活動なんだなって感じもしましたが、劇中でテスラやフリーエネルギーに触れていたのは、そういう時代が来たからなんだなと感心した次第です。


しかしすごく気になってしまったのが、劇中で物語の主軸として取りざたされていた秘密結社「Plus Ultra(プルスウルトラ)」。

劇中に登場した有名人ウォルト・ディズニー、エジソン、テスラ、エッフェル、ジュール・ヴェルヌ、レイ・ブラッドベリーはプルスウルトラ所属(公式サイトでも言及→ http://www.disney.co.jp/movie/tomorrowland/hint.html)とされていますが、本当にこんな秘密結社は存在したのでしょうか?


同じく劇中で言及されたオーウェル、ハクスレーに関しては、社会主義者の結社として有名なフェビアン協会所属( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%8D%94%E4%BC%9A )で、こちらは間違いなく実在するグループですが...、プルスウルトラははたして?
(*ネタバレになるので後述します)。


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さてこの映画、都市伝説を逆手に取ったティザーサイトも用意されていてなかなか興味深く、映画とネットやツイッターをクロスメディアしながら楽しめる仕掛けにもなっています。
同時に統失の方たちを刺激してしまわないだろうかとちょっと心配にもなりましたが。

こちらはその「プルスウルトラを糾弾する体」で作られたティザー・プロモサイト「Stop Plus Ultra
http://www.stopplusultra.com/

上記Stop Plus Ultraの謎解きゲームで提示された 【 http://plusultrasociety.com/ 】に飛んで、同じくStop Plus Ultraで取得した【 W08102013 】や【 NT7141903 】などといった秘密のコードを入力すると、秘匿されたコンテンツを閲覧できる、というような仕掛けです。


要するに、ディズニーが用意した自作自演型の謎解きゲームという感じですね。


概要は以下の方がリポートしてくれていますが、リアルタイムでフォローしていたらテンション上がったと思います。
http://ameblo.jp/stacyperry109b/theme-10092407453.html




↓↓↓↓↓↓ここからネタバレ含む(映画ストーリーには言及しません)↓↓↓↓↓↓↓↓

③plusultrab.jpg



さて前述したように「Plus Ultla」という秘密結社は実在するのか、しないのか?という問題。


結論を先に言うと、おそらく存在しない可能性が高い。


英語で原典を探したのですが、いまいち満足いく結果を得られなかったのです。

ハローバイバイ関氏をはじめ多くの人が、ディズニーの壮大な釣りにひっかかったか、もしくはこの秘密結社プロパガンダに加担したかというところでしょう。



例えばWikiにおける「Plus Ultla」の記述には、以下のような情報しか存在しない。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Plus_ultra_(motto)  (英語版)

プルス・ウルトラ(Plus Ultra, ラテン語で”もっと先へ””更なる前進”の意)は、カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)の時代のハプスブルク朝スペインの国のモットー。


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1500年代、世界のほとんどを手にしたハプスブルグ帝国の全盛期における”植民地主義”を形容したモットーなのだから、”マニュフェスト・ディスティー”のような二面性に薄気味悪い印象を持つのは自然でしょうか。
その薄気味悪い印象を、秘密結社を軸とする陰謀論に繋げる演出を講じたのかもしれませんね。



プルスウルトラは、おそらく映画ダヴィンチコードで語られた架空の秘密結社「シオン修道会」と同じオチだろうと思われます。

面白い仕掛けでしたが、あのときも多くの人が釣られました。
(ニュートンはシオン修道会の総長じゃないですよ! 薔薇十字団やテンプル騎士団の存在はかなり確実ですが)



そもそもテスラがエジソンの会社「エジソン電灯」で雇用されていたのはわずか1年間。
就業中も反目し合い、いよいよエジソンとの対立が激化し退社した後も、終始バトりっぱなしです。

しかも電流利権争いから生じたいざこざから”誰かさん”に研究所を放火されてますから、疑心暗鬼からエジソンの属する権力者サイドの秘密結社に参加する可能性は相当に低いと思います。

Plus Ultraにはエジソンと仲の良かったときに参加した、またはテスラが参加した後にエジソンが参加したという可能性は否定できませんが、ちょっと難しいんじゃないかとも思います。

【参考】 
■電流戦争
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B5%81%E6%88%A6%E4%BA%89
■ニコラ・テスラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%A9


多少なりとも歴史を知る人間であれば「テスラとエジソンが秘密結社?なんかおかしくね?」と気付くはずなのですが、そのポイントこそがこのプルスウルトラという創作物の種明かしに繋げるために、ディズニーが用意したヒントだったのかもしれません。

④tesla imagesb.jpg
http://www.amazon.co.uk/Nikola-Tesla-Imagination-Invented-Century-ebook/dp/B00CATSONE


プルスウルトラに言及した数少ない英語資料のなかでも、「ニコラ・テスラの英語版Wiki」の記述には以下のように記されていて、プルスウルトラが創作物であることが暗示されています。

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ニコラ・テスラ (英語版Wiki)
https://en.wikipedia.org/wiki/Nikola_Tesla_in_popular_culture

Allusions[edit]
Disney's Tomorrowland depicts Nikola Tesla as one of four members (with Thomas Edison, Gustave Eiffel, and Jules Verne) of a group of inventors called Plus Ultra, dedicated to finding dreamers and inventors who wanted to create a better future. Plus Ultra later discovers an alternate dimension in which the titular City of Tomorrow is constructed.


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もちろん、日本語でも原典を探したのですが、まともなサイトが存在しない。


例えば以下は「バラ十字会 日本支部」なる団体(20世紀になって設立された薔薇十字団の派生系でしょうか)のサイトですが、「Plus Ultra」という語句の使用例に触れたのみで、意味も単純に"nec plus ultra = nothing further beyond(これ以上はない=最高段位)"であることから秘密結社「Plus ultra」とは無関係だろうと推察できます。


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http://www.amorc.or.jp/about_us/history19.html
(前略)
バラ十字段位
  フリーメーソンの教義の中に実際にバラ十字の高段位が現われたのは、古代組織黄金バラ十字団が出現したのと同時であった。その最初の存在が確認できるのは、「叡智の子らの会」(Children of Wisdom)と「調和ロッジ」(Concord Lodge)の活動の中での1757年にみられる「バラ十字騎士」の称号である。我々がすでに見てきたように、バラ十字の段位はすぐにメーソンの最高段位ネク・プラス・ウルトラ(nec plus ultra)と見なされた。この段位は1786年の〈メーソン・フランス分派〉と、〈第18古代組織〉(the Eighteenth of the Ancient)と〈公認スコットランド分派〉の第七段であり最終段位であった。


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また以下のように、ニュートンのライバルであったライプニッツも「プルスウルトラ」という語句を自身の編纂する百科辞典のタイトルに使用したようですが、、あくまで当該語句のいち採用例ということでしょう。


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http://1000ya.isis.ne.jp/0994.html
(前略)
ライプニッツには当初から、人間が世界のなかでふれうる全知を通過したいという普遍計画のようなものがあった。それを百科全書の実在への計画というなら、ライプニッツはずっとその計画の手を休めたことはない。
 けれども実際に百科全書の役割を明確にし、その構想がどのようなものであるべきかを提示したのは、パリ滞在以降になってからのことである。『ブルス・ウルトラ』という計画書も書いている。
 それは驚くべきことに、われわれが知るチェンバースやディドロが編集構成したような百科全書ではなかった。いわば、その百科全書のアーキテクチャそのものが、「思想のアルファベット」に対応できるエンジン機能をもつような、そういうエンジン付きのデータベース構造の提案だったのである


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Tomorrowlandの主人公の苗字が”ニュートン”だったりしますので、脚本家は、論敵であったライプニッツとのなんらかの関係性を示唆したかったのでしょうか。わかりませんが。

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とにかく、1500年代に世界の覇者であるカール5世(カルロス1世)がモットーとしていたのだから、それ以降の世代はこの標語自体も共有していただろうこと、また中世の知的階級のほとんどがラテン語を共通語としていた事実から、メーソンリーやライプニッツが当該語句自体を採用したとしても不自然ではない、と言及するにとどめます。

ただし、当時の支配層やメイソン、また知的階級に好んで使用されたことには、何らかの意味があるはずとも加えておこうと思います。


1ドル札の「NOVUS ORDO SAECULORUM」みたいなノリで、奥の院のシナリオをちょこっと開示したということなのかもしれませんね。



プルス・ウルトラに関しては、そのうち陰謀論者と検証班のみなさんが、答えを出してくれるはずですので、待ってみたいと思います。


でも映画公開からかなりの時間を経ているのに、誰もPlus Ultraの真偽に言及しないのはおかしいですよね。

ぜひ原典を知りたいとこです。



科学とオカルトのあいだ、現実と都市伝説のあいだの領域はおもしろいです。



【蛇足】

ハローバイバイ関氏は、ウォルト・ディズニーが所属していたこちらの「DeMolay団」のほうに関しても陰謀論( http://densetsunavi.com/archives/1496 )をかましていましたが、現在のデモレー団はフリーメイソンリーの外郭団体でボーイスカウトなんかと並列的な位置づけにあり、主に若年層に向けた組織のようです。

■参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%A2%E3%83%AC%E3%83%BC
デモレー・インターナショナルとは、1919年にアメリカで設立された、フリーメイソンの関連団体である。
団体名は第23代目テンプル騎士団総長だったジャック・ド・モレー(Jacques de Molay)に由来