危機に瀕するミュージック・インダストリー :一足お先にTPP状態④


★ 危機に瀕するミュージック・インダストリー :一足お先にTPP状態 ~ストリーミングというABCD包囲網  : 目次

1) 序文:音楽がタダ同然になっちゃった(定額ストリーミング) >本記事
http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12045451085.html

2) いわずもがなの違法ダウンロード(デジタル化の光と影)
http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12046931592.html

3) グローバル化とIT化の荒波(暇つぶし業界に黒船来襲)
http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12052421305.html

4) 文化的オワコン化  →本記事

5) 対処療法による焼け野原化と強者総取りシステムの拡充

6) 音楽関係者=コスモポリタンが陥る新自由主義

7) われわれ"河原乞食"の進むその先



みなさん、どうも。

この記事は「危機に瀕するミュージック・インダストリー」シリーズの第四回目になります。

このシリーズもマイペースで書いてるうちに世間では”ナントカMusic”が次々とローチし、刻一刻とミュージシャンに対する四面楚歌の感が高まることとなり、セロトニンの分泌系もおかしくなりそうな状況ですが、とにかく続けてみたいと思います。



4) 文化的オワコン化 


本日はまず、最近定額制ストリーミングを推すべく増えてきた以下のような記事について考察してみたいと思います。


■PandoraとSpotifyから見えてくる 日本のレコード産業のヤバさ  musicman-net
http://www.musicman-net.com/SPPJ01/21.html
www.musicman-net.com/SPPJ01/22.html

Spotifyの普及率が最も高いスウェーデンは、レコード産業の売上が30%アップ

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すごいですよねー。 「定額制ストリーミング」は音楽業界を救うホワイトナイトだったんだ!(^0^)/


.... そう信じている業界関係者はいったいどれほどいるのでしょうか。


この手の業界扇動型のプロパガンダ記事は、売り上げについては語っても、どれほど利益があったのかは触れません。ましてや、その利益がどれほどアーティストに還元されたかに触れることは、絶対にありません。

実態は、本シリーズの■その1でお伝えしたように、その還元率たるや...、ドラゴボ風に言うと”ナメクジの糞”程度です。
つまり、音楽家にとって、この手のデータはとくに見る価値のないものになります。

配信会社やレコード会社が緊縮財政と損切りによってどれだけ利確してようが、我々いち労働者たるミュージシャンにはあんまり関係ないからです。

要するにこの手の記事は、「日本は欧米に比べ自由化が遅れているぞー、早くしないとバスに乗り遅れるやでー!」といった主旨のものであり...、そう、どこかで聞いたフレーズを修飾して見てくれを取り繕って言い直しているだけにすぎないということになります。


実態は以下のような感じです。

【参考】 ■想像以上に収入低かった…アヴィーチーのヒット曲『Wake Me Up』作詞家アロー・ブラックがロイヤリティを巡りPandoraを非難
http://jaykogami.com/2014/11/9838.html
【要約】
史上最高、1億7000万回再生されたスマッシュヒットの作詞家/シンガーの収益は、たった47万円だった(ニッコリ)



さて、本題。
残念なことだけど、またまたヘコむデータを。


【参考】■ゲーム産業は「映画+音楽」よりも大きくなった―調査会社IHS Technology | インサイド?
http://s.inside-games.jp/article/2015/06/14/88437.html

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音楽業界の現状を語るどのようなニュース記事を見ても、真実を知ることができないことは既知の事実であるかのように思えますが、音楽業界がこのような惨状に陥った原因として、記者や業界関係者が決して語らない一言があります。

それは違法DLなどが根本原因などではなく、単純に「音楽文化自体がオワコンとなった」ということであります。


ネットやスマホの発達により、人々の趣向は「よりリニア(直接的/直感的)に感動を得ることができるコンテンツ」にしか価値を見出せなくなりました。
簡単に言いますと「ビジュアルコンテンツ」ということになるでしょうか。

絵や写真は、2秒で感動できますが、音楽は最低数十秒聴かないとそのコンテンツの良さを享受できない。

販売促進のための試聴行為であっても数十秒もの時間浪費をカスタマーに強いることは、コンテンツとして致命的な欠陥になります。
ましてやそれにお金を払うことなんかもっとめんどくさいし、無駄だと感じられていることでしょう。

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では同じヴィジィアル系コンテンツの映像やゲームはどうか?

そのコンテンツの良さを知るために使う時間的労力は、音楽と同じ、もしくはさらに長い時間的労力を要するように思えます。

しかし、映像やゲームはVR面における臨場感拡張度が格段に高い。
人間の脳の処理分野は7割が視覚に依存しているらしいのですが、ユーザーにとっては映画やゲームに対しビット的情報量の少ない音楽に、そんな無駄な時間使うことなんて、容量が悪すぎるということになるのかもしれません。


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友達の20代の服飾デザイナーいわく「若い子はどんどんアホになってる」らしいです。

今の若者たちのアイコンはファッションモデルやファッションインフルエンサーです。
もはや数年前からミュージシャンじゃありません。

ビジュアルの良さのみに特化したモデルたちがインスタグラムなんかで情報を発信し、「写真一発」のみでコミュニケーションする分野に、いまのメインストリーム・カルチャーは移ってきているようです。


10年前はみんなブログやMixiで長い日記を書き、書き手も読み手もそれを楽しんでいました。
ところが5年くらい前からツイッターが流行りだし文章量も140文字に。その後FaceBookの台頭により「写真+一言」スタイルに。
とうとうインスタで写真のみで「無言」になったわけです(笑)

スマホ時代になり、圧倒的情報量を要領よく処理するためには、パラレルに流れ着く情報の処理をマルチタスク化させなければなりません。
マルチタスク化された情報処理分野に対しては、、複数ある各ソースが単純化されることが必須となるのだろうと思います。

だから若者の好む情報のスタイルは、「より単純でビジュアルに特化したもの」になっていっているのだろうと思います。


生産者としての視点で見ても「わたしってオシャレでしょー」と一瞬で撮った写真をSNS上で提示して、他人の興味をそそる活動のほうが、何十時間もかけて作る音楽と比べて段違いに生産効率が高い。

勝敗の行方は火を見るよりあきらかということですよね。

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我々のような聴覚による快感に強く依存する個体は、その報酬系脳内物質の反応する対象が異なるので、いまいちビジュアル文化の良さを理解できませんが、まあそういうことなんだろうと。

おそらく、逆に本を読んだり、じっくり考えることに快感を見出せるタイプの人間のほうが、我々側に近いのかもしれません。
最近ぼくは、リア充系カルチャーよりオタク系のみなさんの感覚の方がシンパシーを感じます。


暇つぶし産業なんか、自分が快楽を感じれるものであれば、その源泉はなんでもいいわけですので、音楽という聴覚一器官のみに頼るコンテンツ文化にとっては、よりいっそうの臨場感を高めることが、この文化が悩まされている閉塞感の打破に繋がるのだろうと思います。

たぶんそこで出てくる答えは、ライブとかフェスという五感をフルに使ったコンテンツってことになるのでしょうが、個人的にはその結論はいささか拙速かと思っていますので、話を次の項に続けてみようと思います。




一旦、音楽産業がダメになった理由を以下にまとめます。

①② ほぼ無料で、いつでもどこでも聴けるので価値がなくなった
③  グローバリズムとアルゴリズムの影響で大資本しか勝てなくなった
④  音楽以外のVR度の高いコンテンツも気軽に享受できるようになり、VR度の低い音楽がオワコン化した


良いことひとつもねーじゃん、ってことですが、、わずかばかりの光源を目指して進んでいきたいと思います。