りんご

先日、コペンハーゲン解釈のことをおさらいしようといろいろリサーチしていたのですが、量子力学の哲学的考察のなかで話題となった「ニュートンの予言」という気になるワードにひっかかり、脱線してそっちにハマってしまいました。


「ニュートンの予言」というと、聞いたことのあるかたも多いかもしれませんが、一般には「2060年に人類滅亡」だとか大げさなものとして知られています。

人類史に残るパラダイムシフトをお膳立てした天才物理学者であるニュートンの予言なんだから、科学的な検証のもとに導き出されているだろうと予想できるはずなのですが、この予言、どうやらバイブルコード(聖書の暗号)の解析から導きだされたもののようなのです。

実はニュートンは錬金術やオカルト的な神秘学の研究者としても知られていて、かの「プリンキピア」も片手間で書いたとも言われているほどのマニア。この予言もニュートンが50年かけて4500ページにも及ぶ文書にまとめ「秘密文書」として保管していたということです。

神学はもちろんのこと、錬金術というとニュートンの時代(1643 - 1727年)においては、まっとうな学問としてとらえられていて、いわば化学と物理の集大成的な位置づけでもあったのでしょう。

しかし同時期にニュートンが著した 『2つの聖句の著しい変造に関する歴史的記述(1754)』も死後に刊行されているように、その内容が当時のキリスト教社会にとって危険な思想(三位一体を否定するアリウス派ユニタリアン主義)だったという理由で、当該文書もポーツマツ伯爵の邸宅にて長らく秘匿されました。


あらたなフェイズが訪れるのが1936年。

この秘密文書がサザビーズのオークションに出品され、二人の人物によって落札されました。

落札者は20世紀経済学の巨人・ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)と、ユダヤ人で宗教学研究者のアブラハム・シャロム・ヤフーダ(Abraham Shalom Yahuda 1877?1951) )の2人。

錬金術関係はケインズに、神学関係はヤフーダにより分割保管されたのですが、2人の死後、2007年夏になって文書の一部がイスラエルの国立ヘブライ大学図書館で初公開されました。

主にヤフーダ文書のほうが公開されたようですが、ケインズ所蔵の文書も一部含まれるそうです。

以下が原典。

■Newton Manuscripts (イスラエル国立図書館)
http://web.nli.org.il/sites/NLI/English/collections/Humanities/Pages/newton.aspx

■The Newton Papers (イスラエル国立図書館)
http://dlib.nli.org.il/R/?func=collections&collection_id=7856



錬金術とかバイブルコードとかわけわかんないですし、英語だと読解不可能なので僕はあきらめましたが、秘密文書の一部を簡単に要約したものは以下のようになるそうです。

■2060年に人類滅亡ハルマゲドン!? 天才科学者ニュートンが発見した世紀の終末予言
http://happism.cyzowoman.com/2013/01/post_1824.html

「邪悪な国家が滅亡し、全ての苦難から解放される……そして、世界が新たな価値観に置き換えられ、神聖なる霊感に目覚め平和な世界に移行する……」



なんだか意味深なこと言っていますが、単なる偏執志向が生み出したものなのかもしれませんし、当時教授職を勤めていたケンブリッジ大の講義で受講生がゼロになってしまった、またライプニッツなどの論敵と訴訟三昧であったなどと、ニュートンにも天才にありがちなクズエピソードも多く残されていますので、天才の言うことが全て正しいとも限りません。


②ケインズ.jpg
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51301089.html

さて、ニュートンの秘密文書を購入したケインズ、彼も同じくケンブリッジ大学の教授であるという共通点が挙げられますが、それ以上におもしろい共通点も見出せます。


ケインズ経済学といえば、最近ではアベノミクスのリフレ論(実際には安倍ちゃんのトリクルダウン論とは似て非なるもの)によってさかんに取りざたされた論理として記憶されている方も多いかと思いますが、ケインズは20世紀の国際的な金融システムの基盤(プレトン・ウツズ体制)を作った人物としても知られています。


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ブレトンウッズ会議が開かれたのは、第二次大戦中の1944年7月。44カ国の代表がアメリカ・ニューハンプシャー州のブレトンウッズに集まって、戦後の通貨・金融体制について話し合いました。主役はアメリカとイギリスで、アメリカ代表のハリー・デクスター・ホワイトと、イギリス代表のジョン・メイナード・ケインズが国際通貨体制のあり方をめぐって、激しいバトルを繰り広げた話は有名です。(交戦中だったドイツと日本は、当然ながらこの会議に参加していません。)

バトルといっても、実質的な主導者はアメリカでした。第二次大戦でイギリスはアメリカに膨大な借金を負っており、アメリカの援助なしには戦争の継続もままならない状態にあったからです。イギリス代表団は、アメリカに援助をお願いしつつ、来る通貨体制においてイギリスの指導的地位を守る(=アメリカ・ドルの支配を挫く)という絶望的な闘いを強いられました。第二次大戦は、米英の金融覇権を巡る水面下の闘いでもあったのです。

滋賀大学准教授・柴山桂太

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/09/04/shibayama-36/

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一九四四年のプレトン・ウツズ会議で、国際通貨基金(IMF)と世界銀行が作られた際に全世界的な世界銀行(中央銀行)という考え方が作り出された。これらもCFRが考え出したものである。
表面上、IMFは国際為替相場を管理して「通貨を安定させる」ため設立されたが、実際は通貨を発行する中央銀行の体制をとっている。プレトン・ウッズ会議において連邦準備制度理事会理事マリナー・エックルズが、「国際通貨は、国際政権と同意語である」とのべたことは注意すべきである。

 プレトン・ウツズ会議における指導的英国人ジョン・メイナード・ケインズは自らバンコアと呼ぶ世界通貨を提案した。しかし、この案はアメリカの都合で、ドルを世界通貨とする案で結着した。
 しかし、「世界通貨」の目標は決して放棄されない。一九七五年に元IMF総裁のヨハネス・ライッラヴエーン博士がIMFは「公式の国際準備資産の独占的発行者」となるべきだといった。
 EUのユーロ通貨の発足(一九九九年一月一日)など、世界通貨の準備段階にあると考えてよい。                  、
 今日、世界的に地域的な経済共同体ができつつある。これは未来の世界政権の柱づくりである。ヨーロッパのEUを代表とし、その壮大な実験が始められているといってよい。

http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/5614/kokurenmason.html

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ちなみにアメリカ代表のホワイトは、ハル・ノートの作成者でもあり、またソ連コミンテルンのスパイとしても知られている興味深い人物です。


ケインズに対しニュートンのほうも、物理学者やオカルティストとしての顔だけでなく、晩年にはイギリスの造幣局長官を勤めており「金本位制」を作り上げることに貢献したそうです。


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18世紀初頭、爆発的な経済発展を遂げつつある英国においては、「通貨の安定」が緊急課題だったようです。そこで1717年に英国の造幣局では、当時の貿易決済手段であった「金(金貨)」と「銀(銀貨)」の交換比率を1対15.21に設定しました。これによって金価格は安定し、英国の経済発展の基礎が固まったと言われています。以来ほぼ200年に亘って、この金銀比価が用いられるところとなりました。

この注目すべき金銀比価を決めたのが、当時英国の造幣局長の職にあったニュートンだったのです。このニュートンの金銀比価は、金の優位体制をつくる契機となったことから、「金本位制確立の布石」になったとも言われています。

http://gold.mmc.co.jp/primer/museum/18.html
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ニュートンによって定められたヨーロッパでの金銀交換比率が「金:銀=1:15」の時に、イギリスの植民地であるインドでの金銀交換比率が「金:銀=1:10」と銀高であったことである。この場合、銀10をインドで金1に交換し、その金をヨーロッパで銀に交換すれば15の銀を受け取ることが出来るので、銀5の儲けが出る(金銀の輸送は可能で、輸送コストや手数料は無視する)。これに銀5を加えて銀10を再びインドで金1に替え、当該金1をヨーロッパで銀に交換すると、更に銀5の儲けが出て、トータル銀10の利益を得ることが出来る。これを繰り返せば、金銀を移動するだけで儲かるのだ。現在のように交通・通信・情報網が発達していない時代には、このような裁定は簡単に行うことが出来たのである。この結果、銀の流出、金の流入が続いた。
http://coinkun.cocolog-nifty.com/coin/2006/07/post_8c93.html

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ちなみに1800年代後半の日本でも、不平等条約とされる日米修好通商條約と駐日総領事ハリスの金銀交換率詐欺により多額の金が流出したことによるハイパーインフレで、国力の低下を招いています。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001263/files/50371_40672.html



近現代における国際的な通貨体勢、金本位制やブレトンウッズ体制という、詐欺とも表現できうる体制(資力を持つものだけがアクセス可能なバックドアが用意されたシステム)の確立に貢献した2人は、ある意味では「錬金術師」だったのかもしれません。



ケインズは、ニュートンの秘密文書について次のように語っています。

 ニュートンは後世の人々が考えたような「近代に属する最初の科学者」ではなく、「最後のシュメール人、バビロ二ア人であり、最後の魔術師」であった。
なぜ、私は彼を魔術師と呼ぶか ――それは彼が全宇宙をその中にあるものを秘密と考えていたからである。
(中略)ニュートンは宇宙を全能の神によって課せられた暗号と見なしてた。        
――ケインズ

      :中見利男著/日本文芸社 『ニュートンの預言/2060年、世界は滅亡する』


シンギュラリティ0.jpg
http://lesson-school.com/future-prediction/388/

ニュートンはバイブルコード(聖書の暗号)から独自の計算式によって2060年に何かが起こると予測しました。

おもしろいことに現代の未来科学者達のあいだでは、2030~2060までのあいだにシンギュラリティが起こると予測(カーツワイルは2029年、ヴァーナー・ヴィンジは2045年と予想)されています。

シンギュラリティとはAI(いわゆる強いAI)が、人間の知能を凌駕し、独自の発展をし始める技術的特異点のことですが、ニュートンはこういうことまで予測していたのでしょうか。


シンギュラリティが起きるには量子コンピュータの発展が不可欠とされていますが、同じケンブリッジの物理学者ホーキングは「AIって危険だよね」と警鐘も鳴らしていたりします。


世界のパワーエリート・グループの中枢で活躍していたニュートンとケインズ。

我々には知りえない秘密を知っていたのかもしれません。



神秘と科学の間のナニカはおもしろいです。




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余談ですがニュートンとケインズのこと調べていて、面白い本見つけました。

「近世ヨーロッパの思想と社会: 哲学とメイソンリーの時代 著者: 純丘曜彰」
近世ヨーロッパの思想と社会: 哲学とメイソンリーの時代

大阪芸大の純丘曜彰教授といば「佐野五輪エンブレム盗作事件」において、鋭い考察を重ねていたお方。
■東京オリンピック・エンブレムはもう無理筋
http://www.insightnow.jp/article/8591

やはりこっち側の人だったんだなと、なんか安心しまた。